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2016年6月14日火曜日
最強に手強い自転車の修理・・・
正直どうなるか判らない自転車だったので、施術前の写真を撮影しなかったのは失敗だった。
写真は既にどうにもできないトラブルを力技で修理し、最後の仕上げでタケやんが折れたスポークを入れ替えて振れ取りをしている段階に進んでいるところのものです。
なぜ、どうなるかが判断できない自転車だったのか・・・
ヘッドマークにあるとおり、国産の実用車ではなく、オランダ製の舶来物なんですね。
ロードバイクやMTBのように、JISかイタリアンの規格で世界的に統一されているものと違って、その国の文化で発展した乗り物って考えると、自転車を構成しているパーツの大半が規格外であるとご理解頂きたい!
一見、日本のママチャリよりもシンプルな作りには見えるが・・・
その規格に合った部品が無ければ、例え消耗品であっても・・・容易く交換する事ができないというネックがある。
そして海外製の自転車に良く見られる、内装3段変速のシステム。
シマノ製の内装3段のようなロッド式じゃないので、タイヤ交換などで後輪を外すのも気を使いますね!
そもそもこのチェーンが切れちゃったら変速が使えなくなります。
錆びないように管理しないといけません。
調べたらスターメーアーチャーという、イギリス製の変速なんですね。
昔の中国製電動アシスト自転車でも見た事のある部品なので、イギリス製って知って驚きました。
っていうか、以前スターメーアーチャーのハブでピストのホイール組んだ事がありました。(笑)
それにしても一般車とは思えないくらいの凝ったフレームです。
博物館にでも展示して欲しいくらいの、実に味わいある自転車だと思いませんか?
当店に入院して来た時の状態・・・
①・・・変速が2速にするとギアが抜けて空回りする。
②・・・ブレーキが利かない!(左が辛うじて利くが、右はスカスカである。)
③・・・後輪がうねって進まない!(スポークが5本折れて、他のスポークも緩んでいた。)
④・・・後輪タイヤは交換済み。(サイクルベースあさひさんのオリジナルタイヤ装着。)
接客応対したタケやんが言うには、「正直直すのは無理かもしれませんが、例えば部品をごっそり換えてでも乗れるようにして欲しい。」という感じでお預かりしたとの話。
大抵のものなら何とでもできる!って考えている僕でさえ、この自転車の症状と、部品の規格を見た瞬間・・・
「なかなか無茶言うねぇ~。」
国産の実用車でさえ、ロッドブレーキ採用の車種に関しては、補修パーツも希少となっており、必ず万全な状態に戻せるかって聞かれると、それは大変難しい話だというのに・・・
そもそも部品の換えようが無い規格で、交換するにも専用のワイヤーと、対応品のブレーキレバーが手に入らない事には、どうにもできないレベルの自転車で・・・
④で判断できる事は、後輪タイヤは交換してもらいながらも、それ以外はあさひさんでもどうにもできなくて、藁にもすがる思いで当店へ持って来たという事。
①の問題については変速チェーンを引っ張るワイヤーのテンションを調整するだけで直せるので、一瞬で解決したのですが・・・
②の問題についてはかなり深刻な事情があって・・・
恐らくこれが他店で修理ができないと断られた原因なんだろう。
タケやんもどう直していいのか判断できなくて随分と悩んでいました。
僕は逆に「他の店がサジを投げた自転車」っていうところに、「だったら、うちが何とかしてみせようじゃないか!」って、メラメラと闘志が湧いてきました。
むしろこれは、タケやんに『形に囚われない発想力と工夫で何とかして見せろ!』という、僕の理念を教える良いチャンスでもありました。
自転車や車を修理する職人に限らず、営業や企画、製造・・・どんな仕事にだって言える話なので、このくらいのピンチを何とかできないようだと、人より抜きん出る事はできない!
こういう頭をフル回転させて作業をするっていうのは、実に面白いものです。
通常ブレーキレバーは、上記写真で言うところの写真左側先端にある、ケーブルアジャスターにアウターケーブルを引っ掛けて、ブレーキレバーを握るとインナーケーブルだけが動く仕組みになっているのだが・・・
そのケーブルアジャスターの役割(アジャスター機能は無いが、アウター受けとしての役割)をしている部品が樹脂製であるが故、経年劣化や変形によって強度が低下するっていうのが、今回のそもそもの原因。
樹脂製のアウター受けが、アウターケーブルごとレバーに引っ張られて、レバー台座の内部に貫通してしまった為、どこにも引っかかって踏ん張ることができずにスカスカな訳ですよ。
だったら新しいブレーキレバーに交換すればいいじゃないか?
その発想は正しい。
しかし自転車の規格が違うというだけで、どうにもできない壁が現れて、途方に暮れるしかなくなるのだ。
理由は下写真の・・・
シマノの内装3段変速に使うケーブルセットのように、両端にタイコが付いていて、インナーケーブルトアウターケーブルがセット(一体化)になった作りである事。
日本の規格のブレーキレバーでは使えないのである。
なぜなら日本のブレーキレバーは写真で言う右側のタイコを引っ掛ける規格だが、オランダ製のそれは写真の左側のタイコが限りなく近い形状で、逆に車輪側ブレーキ本体に右側のタイコが引っかかる形状になっている。
つまりオランダ製レバーをそのまま使うのであれば、このケーブルセットは工夫すれば使えそうなのだが、肝心なレバーのアウター受けが樹脂製で、しかも破損していると考えたらレバーは交換するしかない!
しかし日本の規格のブレーキレバーを使う場合、インナーケーブルのタイコの形状は・・・
両端ともこの形状でないと駄目って事になるので・・・
インナーケーブルをワンオフで作らないとどうにもできない・・・
そうなるとワンオフで作る為の材料探しから始まって、どうしようもなく時間と手間がかかってしまうので・・・
実際に左側のブレーキインナーには、あさひさんなのか違う自転車屋なのかは判らないけど、インナーケーブルを切断しようとしかけたような痕跡があって・・・
「よく大事に至る前に思い止まってくれた!」と思えるくらい、実際に専用のインナーケーブルを作るのは容易とは思えない。
そこで発想を考え、破損したブレーキレバーを使えるように再生するのは可能か否か?
その場合・・・
このように割りの入ったアジャスターをブレーキレバーに取り付けできれば解決なのですが・・・
レバー台座に空いているワイヤー通しの穴は小さくて肉薄!
こんなアジャスターを捻じ込んで固定できるものではない。
だからといってインナーケーブルの両端にタイコが付いている以上はワッシャーも通せない・・・
ん・・・ワッシャー?
割りの入ったワッシャーだったら台座とアウター受けの間に噛ませられる!
でも割りが入っているとすぐに落ちて紛失する・・・
「じゃあ割りの入ったまま間に噛ませて、それから割りを閉じて落下しないようにすればいいんじゃない?」
そう思った瞬間、ワッシャーの代わりになる部品が閃いて、ワンオフで部品を作成。
ブレーキレバー台座と樹脂製のアウター受けとの間にストッパーを取り付けました!
これでレバーを握ったら、しっかりとブレーキが効きます!
折れたスポークは後輪を外して、ブレーキなども外さないと差し替えができないのですが、幸いオランダのホイール作りが適当だったお陰で、L字フックタイプのスポークを半ば強引に差し込んで直すことができました。
スポークの太さが12番と太めで、そんな太いスポークを持っている訳もなく、ニップルごと入れ替えました。
まさかの1日で、修理が終わるなんて思ってみなかったみたいで、お客様も驚いていました。
後で聞くと、あさひさんで無理だと言われてからも、中央区の自転車屋さんをあれこれ散々当たってみたものの、見事にどこも修理を断ったみたいで、今回も断られるのを覚悟だったそうです。
まあ今後も長く乗るっていうのは・・・ちょっと・・・
そういうお話は伝えたものの、オランダに住んでいる頃に購入した思い出の自転車だと聞けば、それは大切にしてもらいたいとも思える訳で・・・
もしもまた修理で来られたら、ワンオフでインナーケーブルを作る事も念頭において、頑張るしかないのかな・・・(笑)
当店もこういう重症患者を断らずに修理しているからか・・・
これまた別のお客様からですが、差し入れでツマガリのクッキーを頂きました!
お気遣いは結構ですよ!といいつつも、お客様のこういったお気持ちは大変うれしいものでございまして・・・
また頑張ろう!っていう活力にはなっています!
いつも皆様ありがとうございます!!
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