2023年3月31日金曜日

令和5年4月1日よりヘルメットの着用が努力義務化!

 どこの自転車メーカーや業者も「ヘルメットを装着して安全に自転車に乗りましょう!」なんて言っていますが・・・


正直僕は物申したい気持ちでいっぱいです。


まず物理的な理由として、政府がそれを義務化に向けて動き出したタイミングです。


ヘルメットメーカーも突然問い合わせや受注が増えて、供給が間に合わない状況に陥っているのであります。


当然お買い物メインの主婦層がロードバイク用のヘルメットなんて被りたい訳もなく・・・


一応女性用の帽子のようなお洒落なデザインのヘルメットや、カジュアルなファッションに溶け込みそうなヘルメットも出ているのですが、とにかく供給が追い付いていません。


もう少し段階を踏んで義務化に向けて働きかけて頂きたかったというのが一つ!




次に根本的な話なのですが・・・


「今更何言ってんねん?」って気持ちが一番物申したい要素です。


そもそもロードバイクやMTBを競技レベルやレジャーでされている方々はヘルメット着用が2001年頃から当たり前になっています。(それまでは大会のみ義務とされ、日常においてはしなくても怒られなかったのです。)


つまり今回の着用努力義務に至った理由はそこの層の話ではないのです。


道路交通法で自転車の走行ルールも徐々に厳しくなっています。


にもかかわらず宅配サービスの事故を筆頭に、ながら運転や信号無視、車道の逆走、歩道で歩行者を優先しない乱暴な運転、轢き逃げ案件・・・などなど、自転車運転のモラルを問われるような事件や事故が度々ニュースなどで報道されるようになった事がこういった流れになったと見ています。


いやいや、だからってヘルメットをかぶったら事故は減るの?


マナーの悪い自転車が減るの?


何か根本を履き違えていないだろうか?


当店の地元でも赤信号なのに原付や自転車が信号無視して斜め横断とか、そういう身勝手な行為が常習的に横行しているので、特に原付と自転車に関してはもっと明確なルールを提示してもらいたい。


しかし最近のニュースを見ていると「本来自転車は車道を走るもの!」と紹介されているものが増えていて、いつの間にかメディアによる誘導で常識を勝手に情報操作されているように感じる事もある。


別に歩道も絶対に走ってはいけない訳ではないので、月末の金曜日とか交通量の多い日はむしろ車道が危険なので、歩道でも良いと感じる事がある。


歩行者も複数人で並んで歩いたり、スマホ画面を見ながら歩いている人が多く、あと歩行者優先って最強神話に頼り過ぎかなぁ~とも思う訳です。


歩行者の安全は当然・・・それについては自転車や自動車に乗っている人は絶対に最優先すべき事なのですが、歩行者側も周りの通行車両の状況とかに気をかけてあげて欲しいなぁ~と思う事も多いです。

歩行者の多い交差点など右左折車両がいつまで経っても曲がれなくて渋滞になる事も多いですから。


結局のところ自転車も自動車も歩行者さえも周りへの気遣いとか譲り合いの精神があれば全体的なイライラも解消されて、事故って少なくなると思うんですよね。


それに加えて交通マナーの徹底した取り締まりを実施する事で更に事故やトラブルって少なくなるんじゃないかなぁ~って。


間違ってもヘルメットをかぶったくらいで世の中そんなに変わらないと思うのが、全国的に見ても交通マナーの悪い神戸市の一市民として感じる僕の独断と偏見です。



尚、ヘルメットはスポーツバイク用の本格的なものは2万円前後が平均相場なので高価ですが、その代わり軽くて風通しも良い。

肩こりの人には300gのヘルメットでも重くて余計に肩が凝ります。


ちなみにこのモデルは235gと超軽量でデザインも悪くない!

しかもバイザーも取り外し自由なのに4400円(税込み)と破格の逸品です。

しかし現在人気で供給が遅れております。

当店も在庫が無くなり次第次の入荷は未定です。


本格的なヘルメットはどうも・・・って方向けのヘルメットも増えてきていますが、軒並み入荷未定が多いです。


まるで乗馬用のヘルメットみたいな帽子タイプもあります。


これならご婦人も恥ずかしくなく使えそう?

ハンチング帽タイプも気になります。


ダンディなおじいちゃんにはこんなヘルメットも悪くないです。


まあヘルメット業界が儲かってくれるなら僕らも頑張って販売はしますが、とにかく今は供給待ち状態ですので、連日お問い合わせを頂いている中で、納得のいく回答ができなくて本当に困っているのも事実です。


自転車通いOKの中学生や高校生がかぶるようなヘルメットなら今の所入荷可能ですので、また気になる方がおられましたら是非ご来店下さいませ!



2023年3月2日木曜日


K様の依頼でブレーキレバーを600アルテグラのエアロブレーキレバーに交換。


僕の記憶では当時(1993~1996年頃)のブレーキレバーだとデュラエースの次に軽かったのが105のレバーで、次にRX100(現ティアグラ)で、アルテグラはその次だったような・・・


あくまでカタログ値のデータですけど。


僕もアマチュア時代はカタログ値を参考に安くて軽くてコストパフォーマンスに優れた部品を探して、低予算で自分の自転車を軽量化する事にハマっていた時期がありました。


実際の所そこまで重量に大差がないと思うので今回はアルテグラのレバーで。


このダークグレーのカラーリングがハンドル周りを引き締めてくれるので、雰囲気は良くなりました。



旧車の改良点としてBBの交換は必須事項!


スチールフレームの場合パイプ内側の結露でできた錆びた鉄粉などもBB付近に溜まっていたりするので、BBを外してフレーム内の汚れも出してBBも新品に交換!


シャフトは本来113mmの物を110mmに短縮。


重量が軽くなるだけじゃなくてBBハンガーの捻じれ応力を軽減し、ダイレクトなペダリングを可能にする。


ただしやり過ぎるとチェーンステーとインナーギアが干渉するので、極端な短縮は厳禁。


当然ですがフロントディレーラーの可動域も変わるので要調整。



 クランクボルトもついでに変更して、少し雰囲気が精悍になりました。


スプロケは12Tー28Tなんてワイドギアレシオの物を使ってらっしゃるので、是非8速化して12Tー21Tを使って頂きたいものです。


ペダルは中古でPP396を探しているみたいです。


旧型のLOOKのペダルは初心者にオススメなんです。KEOよりもトルクを掛けやすくて楽なペダリングができます。


難点は旧型のデルタクリートが入手困難な事。


でも僕個人としてはLOOKに旧型のペダルを復活させて欲しいと願っています。


もしも中古で旧型のLOOKペダルを買うならPP396かPP296、或いは一番古いPP65がオススメかな?


アルミボディなので破損しにくいんです。


僕が駆け出しの頃使っていたPP256はグラスファイバーボディなので2年半ほどで根元から割れて、走行中にスピンドル(シャフト)が抜けてしまいました。


それよりはアルミボディの方がしっかりしているので、一応オールドパーツである事を加味してお探し下さい。


近年色々なロードバイクに乗ってみて面白くない自転車が増えたなぁ~と思う事が多かったのですが、最近になってようやく「あれ?」って感じる事に気が付きました。


「最近のロード乗りってダンシングが下手な人が増えてない?」って。


シマノのSPDーRに始まり、最近のペダルは薄くなって限りなくシャフトに近いところを踏んでいる。


ダイレクトなペダリングは解るが、重たいギアが踏めなくなった要因の一つになっているなぁと感じました。


加えてカーボンフレームが増えて軽量化を追求した結果、BBの規格も増えたが・・・何よりもBBハンガーのボリュームが大きくなった。


つまりフレーム剛性が硬いのである。


ことごとくダイレクトな自転車が増えてしまった感じ。


僕はロードバイクは全身で走る乗り物だと思っている。


知らない人は「脚が太くなったりしないの?」とかよく聞いてくるけれど、脚力だけで走るスポーツではない。


上半身のパワーも、肘の屈伸もフルに活用する。


どんなに自転車を左右に振っても、身体の軸さえ地面に対して垂直ならタイヤのトラクションは逃げたりしない。


しかし最近のライダーを見ていたら自転車をリズムよく綺麗に振っている人が少ないです。


それだけ自転車が硬くなって踏みやすくなった証拠でもありますが・・・。


僕は若い頃、全身のパワーを最大限に活かす為のダンシングを身に着けました。


直線が200mあれば0発進でも時速70kmまで引っ張れる瞬発力をずっと鍛えていました。


何なら100mで時速70kmに達するくらいの瞬発力を磨こうって気持ちで走っていました。


最初はただがむしゃらに・・・ではありましたが、ダンシングで全身の筋力としなりを駆使して、自転車を左右に振ったりペダリングのコツを掴んでテコの原理を最大限に生かしてロケットのような加速を実現するべくトレーニングしていました。


『弱虫ペダル』の巻島先輩のダンシングは人間業ではありませんが、イメージとしては最初はあんな感じで良いと思います。


車体を左右に振るのと、ペダリングのタイミングがシンクロすれば綺麗なダンシングはできます。


K様もアキラ君もぎこちないダンシングだったので、昨日の午後はほぼライディング教室になってしまいましたが、お陰で2人の走りも加速が鋭くなって良い走りに変わりました。


ビンテージバイクに乗る事でこれまで忘れていた大切な事を、ようやく僕も思い出せたような気がします。

2023年2月26日日曜日

長く乗っている自転車を維持する難しさ。


 今は大半の自転車がシマノの変速ユニットを使用している世の中ですが、一昔前の自転車には写真のように中野鉄工所の内装変速ユニットハブを使用している自転車もある。


もう20年以上乗り続けているブリヂストンの小径車だ。


そろそろハブのベアリングがガタついて、走れなくなる日も遠くない。


変速ワイヤーの取り回しがシマノとは逆。


しかもフレームもこの変速システムに合わせた構造。


現行のシマノの変速ユニットに交換する事は不可能ではない。


しかしそれはそれでやり方は邪道。


この自転車はVブレーキなので、通常の内装3段ハブを取付するには工夫が必要。


Vブレーキを殺してローラーブレーキ化するにしてもフレームのエンド幅が微妙に違っていたり、アルミフレームだとエンド幅を閉じたり開いたりすれば、溶接箇所から割れる可能性もある為そうそう気軽に請け負える仕事ではない。


中野鉄工所は今もエアハブなど、特殊な自転車用部品を製造販売している会社ですが、さすがにこの内装3段ユニットハブは製造もしていなければ在庫も残っていないそうだ。


同じくレアな変速と言えば、シマノの中でも左側にプッシュロッドを差し込む旧型の内装変速もあるし、プッシュロッド方式以外にもワイヤーを引っかけるタイプもある。


更にはこれもレアなパターンではあるけれど、イギリスのスターメーアーチャー社製の内装変速を装備した自転車が修理で来る場合もある。


自転車屋で働くスタッフといえば、ロードバイクやフルサスペンションのマウンテンバイクの組み立てができる事が花形の仕事で、それを「メカニックとして優れている。」と考えている人が、スタッフ側にもお客様側にも少なくないと思います。


ところが昔の実用車でロッドブレーキの修理をして欲しい!とか、30年以上乗っている自分にとっては身体の一部のような自転車なんだ!っていう人の愛車も触らないといけないのがこの商売なので・・・


部品の仕入れができるか否か?修理で対応できる状態なのか?ワンオフで代用できる部品を即席で製造できるのか?など、実際にはそういう悩ましい相談や修理も少なくないので、消費者の方々にはスポーツ車ばかり扱っているお店がプロショップなのではなく、臨機応変に対応できる事がプロショップたる所以である事をご理解頂きたい。


そして愛着ある愛車を長く乗る事、ビンテージバイクを所有する事は、補修部品一つ用意するだけでも苦労をする事があるという覚悟を持って欲しいのです。



オーバーホールのシーズンですが、皆さんのヘッドパーツは大丈夫ですか?


特にロードバイクの場合に多いトラブルがヘッドパーツのオーバーホールやベアリング交換です。


どうしても前傾姿勢で乗る為、ヘッド周りには汗が滴り落ちるので錆びやすいのですね。


このお客様の場合は室内でローラー台に乗ってのトレーニングが多くて、尚更汗をかく量が通常よりも多くなるのです。


写真はヘッドのベアリングは錆びてゴリゴリどころか、シールドベアリングが分解して下の椀がフレームに固着した状態です。


最近はフレームの軽量化に伴う剛性確保でオーバーサイズ化しており、またフレーム素材もカーボンモノコックが増えた事もあって、ヘッドパーツの構造も独立した形状の物よりも、写真のようにフレームに直接埋め込むインテグラルヘッドと呼ばれる構造が主流になっています。


これも隙間から汗や雨水が侵入して錆びやすくなった、近年のロードバイクの特徴です。


とりあえずヘッド上部のベアリングは写真の通り、少しだけフレームよりもはみ出していた為、プライヤーで挟んで握り潰せば・・・



このように握力で十分破壊できます。


これでヘッド上部は新しいベアリングを装着できる状態に回復できました。



しかし問題はヘッド下部のベアリングの取り出し・・・。


こちらも錆でバラバラに壊れて椀の部分がフレームに固着。


それも上部のようにはみ出しておらず、完全にフレームの中に埋め込まれています。


そもそもカーボンとステンレスが固着?って思うかも知れませんが、金属は錆びたり酸化すると膨張するので、それで抜けなくなってしまうのです。


カーボンフレームを傷つけないように椀の内側2ヶ所をルーターで研磨しました。



地道な作業でしたが2時間ちょっと研磨し続けて、何とかフレームから引き剝がす事ができました。


ここまで見事に錆びて固着されてしまうと、最悪フレームを破損する可能性もあるので、できれば二度とやりたくない作業です 。(苦笑)


なので自転車屋に持ち込んで作業をお願いする時は、壊れて使い物にならなくなっても文句は言えないし、そうなっても作業にかかった時間分の工賃は請求されるものだと覚悟して頂きますようよろしくお願い致します。


今回は無事に大成功で終わったのですが、初めてのケースだった事もあり少し時間がかかってしまった為、工賃は実際にかかった作業時間に対してかなり安くはさせて頂きました。


次回はもう少し時間を短縮して作業できるとは思います。


ああ、でもできる事なら・・・こんなに集中力を消耗する作業はもうしたくないので、ヘッド周りのメンテナンスをサボっていると心当たりのある皆さんは、是非早めにベアリングの交換やオーバーホールをするように意識して頂けると幸いです。


あと室内でトレーニングされる方は汗を吸収する汗ガードか、またはタオルをハンドルからトップチューブにかけてから自転車に乗るようにして下さいね!

2023年2月25日土曜日

新たなトレンドの流れ?

 


最近自転車も旧車の良さをしみじみと味わう事が地味にトレンド化してきたように思う。


勿論当店のような業態だと基本は新車を売ってナンボの商売なのだが、古物取り扱いの免許も持っているので、今後はこういったビンテージバイクを売るようにシフトしてみるのも悪くない。

しかし当店がそもそも中古自転車を取扱いしてる事をネットでも紹介されているためか、「中古の自転車って扱っているんですか?安くて乗れたらなんでもええねんけど?」って問い合わせも実際のところ多く、対応するたびにストレスを感じる事があります。

店のポリシーには乗れたらなんでもいい!って言葉(価値観)が存在しません!

車と同じで今後何年経っても価値が落ちる事のない希少な名車か、元々のオーナーが大切に手入れしてきた新車並みに状態の良い中古車両しか僕は取り扱いしたくない。

特に名車と呼ばれる車両については、80年代と90年代の自転車をよく知っているという事が取り扱う際に真価を発揮する。

90年代後期に進化し尽くした『本物のロードバイク』が僕にとってのすべての基準になっている。

ここでいう『本物』とはどういう意味か?

メーカーによって使うパイプも違えば、ラグ(パイプ接続部の金具)も違う。

パイプを加工してみたり、装飾にこだわってみたり。

その使用するパイプの特性も含めて、ジオメトリーがフレームの性質や性格を決定付ける。

それを更にどう活かすかを味付けするのがフロントフォークである。

かつての自転車メーカーには選手目線でフレーム造りをする名工が何人もいた。

溶接や後付けの加工も必要ない非金属であるカーボンモノコックフレームでさえ、当時のメーカーはそのフレームを供給する選手の走りを研究して、ジオメトリーや剛性を考えて金型を作っていたはずだ。

ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリア、ワールドカップで活躍する選手たちと名工たちが二人三脚で自転車フレームを生み出していた時代は、僕の知る限りでは2005~2006年頃を境目に急激に減少したように思います。

そういう職人の想いが込められた作品を、僕は『本物』と呼んでいます。

それ以降は軽さが正義だったり、硬さが正義だったり、空気抵抗削減が正義の時代へと推移して、それらを自由に設計出来てすべての要素を実現できるカーボンフレームがすべてのロードバイクの頂点に立ってしまう。

だが僕の理論では・・・軽さは確かにあると嬉しい。特にヒルクライムで自転車の軽さがタイムに影響するというのは単なる都市伝説ではない。しかしそこまで軽さが必要か?と言われると、それよりは全体のバランスが重要だと強く訴えたい。なぜなら乗り手の体重や筋力によっては剛性不足だったり、筋力が無く体重の軽い人には硬過ぎる場合もあるからだ。

硬さは人によって、特に初心者で運動経験の少ない人や女性にとっては踏み出しが軽いという意味で正解だが、レースやロングライドにおいては膝や腰にダメージを蓄積させる諸刃の剣とも言えるので、長くロードバイクを楽しんでもらいたい当店のコンセプトでは基本的に勧めない要素である。

エアロロードについては、空気抵抗の事ばかり考えたフレームの落とし穴として、翼断面状のパイプ形状で元々縦剛性が高い上に、捻じれ剛性を意識し過ぎて更に硬いフレームになりがち。だからしなりが発生しにくいので巡行性能はかなり低く、最高速の伸びもいまいち。基礎体力やライディングフォームを徹底的に訓練した人じゃないと乗りこなせない。

わざわざエアロロードを選ぶ必要がないと思える根拠としては、自転車の空気抵抗の80%以上は乗っている人間が占めているからであります。つまりエアロロードの効力は40km以上の距離で競うタイムトライアルで、世界最高峰クラスの選手が僅か数秒のタイムを競い合う時に発揮するレベルだと知ってもらいたいのです。

ところで現在の自転車業界の面白くないところは、各メーカーが台湾や中国を中心にアジアでフレームの製造をしているところ。

かつてメーカーごとの良さがあった時代とは違い、現在は欧州の自動車産業と同じで自転車業界も完全にモジュール化されているのである。

例えばカーボンフレームの金型をパーツ分けして組み換えをすれば全く違う見た目や乗り味の異なるフレームにできてしまうので、実際のところ同じ工場で素材やパイプの形状など似通った製品が多く作られていて、それにメーカーごとのロゴを付けているというのが残念なポイントである。

2000年以降中国が自転車生産量と輸出量で世界一になった時から自転車は品質よりも低コストが当たり前になったのだが、それを台湾のGIANT社とMERIDA社が、ライバルの垣根を越えて手を取り合ったから、台湾製の自転車は価格競争に巻き込まれることなく高品質な自転車を生産できるようになったという点では、台湾製自転車の信頼性は間違いないのだが、単なる工業製品に成り下がった感が否めないというのはどうしても付きまとう。

つまり今の現行モデルの多くが、当時のロードバイクとは開発のコンセプトからして全くの別物であり、職人の魂も感じない無機質なものがほとんどであると言いたいのだ。

ところがそうは言っても、例えば無機質なフレームの代表みたいなカーボンモノコックフレームの中にも、レーサーの求める物が何かを解った人が設計し、作り出されたフレームであれば、間違いなく乗った瞬間に笑みがこぼれるものだって少なくはないので一方的に否定している訳ではない事をご理解頂きたい。

対するビンテージバイク。

他人によっては所詮中古かも知れないが、名車には当時の情景が焼き付いている。

フレームビルダーの情熱や匠が今も根付いている。

それとは別でロードバイクを本気でやりたいのだったら、「まずは鉄に乗れ!」って言うのは時代に関係なく常識だったりします。

スチールフレームは合金の種類によっても変わりますが、判りやすい例で言うならレイノルズの得意なマンガンモリブデン鋼のフレームなんかは、しなってその反動で推進力を増す自転車フレームが作れるので、乗り心地もよく巡行性の高さも誰にでも体感できるレベルである。

本格的なレーサー程、硬いフレームを好む傾向が強いが、例えばクロモリ鋼なら、一般の人でも程よい硬さとしなりや伸びをバランスよく感じられる。

要するにスチールフレームのロードバイクこそ、楽しく長く走る為に必要な要素を兼ね備えているという事。

乗り手を大きな故障もなく安全に成長させてくれるのもスチールの良さ。

しかも合金の違いや加工一つでレーシーな乗り味のものまで作れてしまう。

ちなみに僕は個人的にコロンバスのニバクロム鋼で作ったフレームが一番好き。

硬くて軽量化の為に肉薄化したフレームの場合、応力による金属疲労で溶接箇所が割れるなど、耐久性にはやや難ありなのだが、しなった後の反発の速さや、推進力に変わるタイミングが鋭くて、キレのある走りが楽しめたからである。

僕は今でも97年スペックのデローザ・ネオプリマートの乗り味が忘れられない。

デローザのスチールフレームはチェーンステーが菱形に潰し加工されていて、それが反応の良さを生み出している。

また97年スペックはラグ溶接タイプではなく、ユニクラウンタイプの武骨なフロントフォークだったのだが、このフォークがまた下りのコーナーリング時に時速70kmオーバーのスピードで突っ込んで行っても恐怖を感じないくらい、コントロール性と剛性のバランスが高次元で成り立っていたんですよね。

あんなにレーシーな走りに耐えられて、安心して自分の命を預けられる自転車はそうないと思う。

勿論僕は2000年以降の自転車でも名車と思える自転車には何台も出会ってきましたが、90年代に比べたら所有しても乗ってみても感動できる名車は大幅に激減したなぁ~というのが素直な感想。

幸い、うちの店は他店と被らないようにラインナップを揃えた結果、初心者に優しいコーダーブルームがあり、初心者からプロまで唸らせるエヴァディオに加え、ビクシズという唯一無二のブランドも扱いさせて頂いています。

どれも価値のある自転車を提供してくれます。

ビクシズに至っては150万円かけて完成したロードバイクが、30~50年後には1000万円以上の価値になる可能性すらある作品です。

まあそんな姿勢で自転車と向き合っているのが当店のポリシーなんですが、嬉しい事に最近は真剣に自転車の良さを知りたくて当店に通ってくれるお客様も少なくありません。


僕が初めて乗ったロードバイクが三連勝カタナだと聞いて、それが欲しくなったと購入したK様のカタナです。

スチールフレームの良さと、昔ながらのダブルレバー方式の変速フィーリングを体感してみたいという要望を叶えるべくオールドパーツで仕上げた1台。

歴史的背景として1993年にシマノがSTIレバーという現在の変速システムを発表。

同時にイタリアのカンパニョーロ社もエルゴパワーシステムを導入。

ハンドルを握りながら変速ができるようになってレースシーンは大きく変わりました。

1995年の夏、当時まだ震災後で神戸は街の復興も完全には終わっておらず、あちこち傷跡だらけの風景でしたが、そんな中で生き甲斐とか生きている実感を味わう為に新しい事に打ち込もうという気持ちもあって、春から僕が始めたのがサイクリングチームの設立であり、夏頃にはロードバイクのメンバーも増え、MTBに乗っていた僕もロードを買わざるを得ない状況になっていました。

当時のロードバイクは完成車がなかなか無く、完全なるレース機材として売られていた為、フレームとパーツをすべて自分の好みでアッセンブルして組み立てた場合、どんなに安いものでも30万円は下らない高級品でした。

入門者向けに各ショップでは、ショップオリジナルのロードバイクを少しでも安く販売していたりしたものだが、その場合は20万円足らずで作れるものの、レースで走るにはスペックも低く、何か物足りないものが多かった・・・

そんな中でロードバイクを新車で買う予算を持っていなかった当時の僕は、サイクルスポーツ誌の『売ります買いますコーナー』で中古の三連勝カタナを買いました。

オーダーフレームで533mmというイレギュラーなトップチューブ長で、身長174cmでこれからロードバイクを始める僕にはちょうど使いやすいサイズでした。

雑誌やロードバイクの教本みたいなものは根こそぎ購読していたので、自分にピッタリ合うサイズがどのくらいなのかは研究済みでした。

なお元のオーナーさんの計らいで使わなくなったパーツをおまけで追加してくれました。

震災被害の事も気にしてあれこれお気遣い頂いたんだと思います。

パーツは今は消滅したサンツアーというメーカーのSLというグレードで、2×7速のコンポーネントでしたが工夫すれば8速にも対応します。

ホイールは旧式のボスフリータイプでしたが、7速のスプロケ(12Tー21T)付きのアラヤ・エアロ4のチューブラーホイール前後をやはり中古で譲って頂きました。

当時はチューブラータイヤが全体の9割近いシェアを誇っていたのですが、実際にチューブラータイヤの方がレース向きの高品質なタイヤが多く、僕がチョイスしたクレメンのクリテリウムというタイヤは、しなやかさとコントロール性の高さが非常に素晴らしいタイヤでした。

当時車重9kgを割れば軽量と言われた時代です。

乗鞍に出場するようなヒルクライムマニアですら、まだ7kg台のロードバイクで超軽量を謳っていたのが懐かしい。

僕の三連勝は9.1kgとスチールバイクとしては十分軽量に仕上がっていましたが、ダブルレバーだったので、僕がレースにデビューした96年以降のレースシーンにおいては完全に負け組の装備でした。

STIレバー勢に対抗する為の僕の武器は?というと、フロントチェーンリングをシュパーブプロの54T×42Tにし、スプロケは12Tー21Tの組み合わせを駆使してスプリント力と最高速でカバーするしかないというものでした。

表彰台を狙う選手はみんなSTIレバーを使っており、そこに混ざってダブルレバーの僕が54T×12Tのギアを回し切って先頭を刺し返すために猛追。

いつも2位とか4位とかでなかなか優勝できませんでしたが、ダブルレバーでもまだまだレースで走れる事を証明したくて意地になっていたとは思います。

そんな当時の思い出も含めて、僕にとってはレーサーとして成長させてもらったロードバイクが三連勝だったもので、お客様が僕の思い出話を聞いて同じ三連勝カタナを購入してくれた時はとても嬉しい気持ちになりました。


これは以前にも掲載した96年のつがいけサイクルで初めてヒルクライムレースに出場した時のゴール後の写真です。

6月なのにまるで『雪の大谷』みたいな景色の中を走ったレースでした。

僕は元シドニーオリンピック代表の鈴木雷太さんと同じクラスで走り、彼のロケットスタートに付き合って序盤の5kmをかなりのオーバーペースで走った為、後半でペースが崩れて大幅に順位を落としてしまい、1時間13分36秒という平凡なタイムでゴールしたのですが、これが切っ掛けでヒルクライムにハマってしまうのでした。

翌年にはホイールを新調し8速化していました。(最初のホイールは下り坂を時速80km程で下っている際に轍にハマってグチャグチャに壊れる。)

アルテグラのハブにFIRのシリウスというリムで組んだのですが、この時にお世話になったのが、川西は鼓滝にあるサイクルショップカウボーイ。

そこの店長が僕にとってホイール作りの師匠にあたります。

結局98年の8月中頃まではこの三連勝カタナでダブルレバーのままレース活動をしていました。

そんな事を話していたら僕もまた、改めてスチールバイクに乗って初心に帰りたいなぁ~なんて気持ちになりまして・・・

実は博物館級のレアなスチールフレームを手に入れて、近いうちにそいつを復活させようと目論んでおります。

『エヴァディオ・ヴィーナスRS』や『ビクシズ・パトス』など、世界最高のロードバイクを所有していながら、今の僕にはそれをレースで乗りこなすだけの実力がありません。

もう一度『鉄』からやり直して、今後のロードバイクとの向き合い方を考えたいと思っています。