お腹が満たされて全員の気力は回復したものの、M井様と留美さんはそろそろ体力的にレッドゾーンへ突入しかけている感じでした。
大島へは予定通り16:00に上陸できたものの、『ペイザン』まで時計逆周りに外周を回るルートで行くのは、距離も遠いし道を知らないだけにリスクが大きい。
知っているルートで言えば、前日通った道を逆に進み、『民宿さだめ』を過ぎた辺りの交差点で国道317号線より右へ逸れたら、吉海町の港で県道49号線(外周道路)に合流できる。
国道317号線に関しては、宮窪町のフェリー乗り場前の交差点から続く上り坂がだらだらと長く、女性陣の体力を削る事は間違いないが、外周道路にも峠と名のつく箇所があるので、一度走った事のある道の方が精神的にも楽・・・
そこに賭けてみる事にしました。
ところで大島に上陸して間も無く、左手に見えるこの島・・・
能島(のしま)という島がありまして、これも島に城跡があるのがお判り頂けますでしょうか?
ここは能島村上水軍の本拠地だった場所です。
それにしても海面の様子がおかしいって気付いて頂けました?
大島の周辺は潮の流れが速くて複雑な箇所が多いんです。
まるで大型船が通ったかのようなうねりが見えます。
なるほど、海賊(水軍)にとっては絶好の立地だったんでしょうね!
あとここで釣りをしたらきっと美味い魚がたくさん釣れるでしょうね~(笑)
この辺りの海は船釣りのメッカでもあり、アコウダイがよく釣れるらしく、その他稀に80cmオーバーの怪物みたいな天然鯛も釣れる(僕の祖父がこの辺の海域で93cmの鯛を釣った事があり、大き過ぎて気持ち悪かった覚えが・・・)最高の漁場なんですよ!
それにしても宮窪町からの大島の上りは距離が長いので、予想通り女性陣はかなり体力を消耗していました。
それだけにスピードが乗らず、国道317号線から吉海町に入るあたりで、時間は既に16:36!!
万が一間に合いそうもないと判断すれば、僕とK様とで全力ダッシュで『ペイザン』に向う打ち合わせはしていました。
この日の為に石窯で焼いたパンの詰め合わせを2セット予約していたので・・・
絶対に閉店までに辿り着かなければならない!
絶品のパンを無駄にしない為にも、この先道を間違える事すら許されない。
僕はプレッシャーでした。
ギリギリまでは全員で辿り着いて感動を分かち合いたい!その願望が強かったので、16:50までにお店の所在が判らなかったら、僕とK様が動く・・・
そういう作戦でお店の場所を探索。
外周道路まではスムーズに見つけて合流できたが・・・
『ペイザン』は外周道路よりも海側の脇道を、奥まったところまで行くのだが、景色はどこを見渡しても造船所や原野ばかりで、あとは遠くに小高い丘程度の森が見えるくらい・・・
「ん?待てよ!確か『ペイザン』の場所を示す目印に、赤い鳥居の横に道があるとあったな~。ローカルな神社や祠は、ちょっと小高い森にあるっていう法則がベタな話やとしたら、きっと『ペイザン』はあそこにある!」
そう直感した僕は立ち止まり・・・
「全員スト~ップ!今通り過ぎた脇道へ戻ります!」
「えっ?店長、お店の方向は大丈夫なんですか?」
「もし間違っていたら僕とKさんとで、何とかパンの購入だけは間に合わせます!」
僕は自分の勘を信じて先行する・・・
そして小さな赤い鳥居を見た瞬間確信する!
「あった~!ここや~!みんな着いたよ~!」
鳥居の横の道に、小さく『Paisan』の看板が・・・
16:49全員が歓喜の声を上げました!
「やった~!着いたぞ~っ!」
お店の中では女将さんが予約したパンを袋に詰めて待っていてくれました。
「すみません!ギリギリまでお待たせ致しました!」
本当に滑り込みセーフって感じでした。
僕に至っては体力的ではなく、精神的に疲れがドッとでてきたような・・・(苦笑)
素晴らしいお店でしょ?ジブリチックな雰囲気ですよね。
僕はパンは持ち帰る形で、一刻も早く亀老山展望台を上りたい・・・
そう考えていましたが、女将さんの「お店で召し上がられますか?」の一言に迷いが生じてしまいました。
「もう閉店時間ですが、それでもよろしいんですか?」
「全然結構ですよ!」と女将さん。
僕は悩みました。
今から亀老山の上り口まで行ったら17:20くらい。
僕とK様は17:40前後の到着を目指して、亀老山展望台へ到着できるだろう。
しかし伯方島の『カフェ玉屋』の方々や、『ペイザン』の女将との会話での反応から察するところ、亀老山の上りは鷲ヶ頭山に匹敵するくらいの急勾配と思われる。
そう考えた時、全員の登頂は18:00を確実に回るような気がし・・・
仮に日没の時間までに間に合ったとしても、真っ暗な登山道の下山は時間もかかり、非常に危険であること。
更に来島海峡を真っ暗な状態で走るのもかなり危険だと判断。
何より楽しみにしていたパンをリュックサックに入れて、もしもペチャンコに潰れてしまったら・・・
そう考えたら・・・「そんな食べ物に対する冒涜を、みんなにさせる訳にはいかない!」と思えてしまい、イートインする事を決心しました。
亀老山展望台の夕景を断念する事はかなり辛かったですが、今回においてはベストの選択だったと今もそう感じています。
女将さんに珈琲を6人分お願いし、我々はパンを切って配る作業へ・・・
僕の大好きなライ麦パンの他、みかんを練り込んだパンや、イチジクのパン、胡桃のパン・・・
6種類のパンを2セット!そのうちの1セットを切り分けて、美味しい珈琲とともに頂きました!
残り1セットはリュックサックに僅かに隙間が残ったメンバーで分担し、無事に形を崩す事無く持ち帰りました。
お店の奥でワンちゃんが気持ちよさそうに・・・
17:35に『ペイザン』を出発!
実はこの時点ではまだ全員に亀老山を断念した事を明言してなくて・・・
「さあ!それでは上りますか?」
「え~っ!店長本気で言ってるの~?」
「え~っと・・・嘘です。今回は諦めます・・・」
「うわ~っ!良かったぁ!上れる自信なかったから嬉し~っ!」
「ははは・・・そんなに露骨に喜ばなくても。」(苦笑)
道中、亀老山の上り口を通り過ぎる際、上るふりをしてみせたり、そんな冗談を笑ってくれるくらい皆さんに笑顔が戻ってました。
そんなに坂道に上るのって嫌なのか?(笑)
亀老山展望台へ上る事を楽しみに余力を残していた僕とK様は、不完全燃焼を解消する為、大島の最後の上りを全力で上る!
僕は余った力の限りアウターギアのままトルクをかけて・・・
実はメロスに与えられた仕事(約束)はまだ残っているのです。
『ペイザン』のミッションはクリアした!
残るは最高の夕景を全員で望む事。
大島最後のピークから下ると、来島海峡大橋の向こうへ沈む夕日が・・・
時間は17:59!
「皆さん急ぎますよ!あの夕日が沈むまでに来島海峡大橋へ上りましょう!」
そして大橋まで上るスロープで、久々にアドレナリンが全身に湧き上がってきた僕は猛スピードで上って行く!
もちろん他のサイクリストや地元の方には迷惑にならないよう、細心の注意を払ってではございますが、ここ1年で最高の走りだったと思えるくらいのスピードで上る。
夕日の直線が海面に伸びている最高のアングルがあったのですが、そこは人が多かったので、更に上った所からこの写真を撮影。
さすが来島海峡。複雑な海流と夕日のコントラストがダイナミック!
瀬戸内海の夕暮れ・・・
癒される風景ですね!
徐々に後続のメンバーがスロープを上ってきます。
「早く早く~!夕日が沈んでしまう~!」
いやはや・・・何とか全員間に合いました!
最後のミッションは亀老山展望台ではなく、来島海峡大橋で達成する事になりましたが、この達成感はヒルクライムのゴールに近いくらい素晴らしいものでした。
それも一人ではなく、仲間と共に味わえる達成感ほど幸せなものはございません!
「あ~あ。夕日が沈んでしまった・・・」
「もうしまなみ海道が終わるかと思うと寂しいですね。」
誰もが楽しかったこの2日間の余韻に浸ってました。
「あかんて!暗くならないうちに渡り切らな!」
そうです。
まだ明るいうちに今治まで渡ってしまわないと、夜間の橋は危険です。
これは馬島の料金所からの眺望。
相変わらず複雑で速い潮流が黙認できます。
ちなみに来島海峡大橋に乗ってからここまではH江様が先頭を引いてくれました。
「いつも店長にばかり引いてもらってますから、少しくらいはお手伝いさせて下さい!」
20インチのMASIミニベロで風の巻く中、時速36kmで引いてくれて・・・
「いや~!H江さんすごいです!ミニベロでこの引きは見事ですよ!お陰さまですごく楽をさせて頂きました。」
すると今度はK様が馬島から今治まで、負けじと更に猛スピードで先頭を引き・・・
ここに来て前を引いてもらえると楽な上に楽しいです。
やはりたまには引いてもらいたいものですね!
引いてばかりいると面白くない時もあります。
先頭は体力の消耗も著しいですしね。
さて・・・日の光が残ったうちに、全員無事に来島海峡を渡る事ができました!
そして今治から来島海峡大橋をバックに素晴らしい一枚が撮れました!
桜です。
四国はいち早く桜前線が訪れていたので、最高の夜桜が撮影できました。
しまなみ海道よありがとう!
これほど充実した時間を過ごせたのは何年ぶりだろう?
いやいや!
神戸に帰ってくるまでは旅の途中ですから・・・
さああと一頑張り!
東予港まで走破しましょう!!
次回感動のエピローグです。
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