僕の頭の中は完全に切り替えができていて、ここまで戻ったからには縦走は断念。
そして二度と歩きたくないと思った白出沢を下るしか帰り道が無いので、それも覚悟して穂高岳山荘まで戻る。
山荘近くのトラバースは何度通っても怖くて下を見たくなくなる。
しかし帰りは軽やかだった。
鉄のハシゴも2時間前より冷たく感じなかったので、変な緊張も無く・・・
多くの方とすれ違い、その度に待ったり待って頂いたりしたくらいで・・・
山頂付近から山荘まで20分足らずで帰ってきました。
すれ違う人の多くは、とりあえず奥穂高岳山頂まで行って次を考えるって人と、前穂経由で岳沢を目指している人、せめて奥穂高岳山頂だけ登って山荘に戻る予定の人などで、さすがにもう西穂を目指すなんて人とはすれ違わなかった。
前穂でさえ、そこまでの吊り尾根のルートが決して安全ではないので、この雨の中だと相当の覚悟がないと行くべきではないと判断できる。
「山頂まであと10分くらいですよ!」
「ここを登ったらあとはしばらくの間、緩やかなので頑張って下さいね!」
「その鎖場の後のトラバースだけ気を付けて下さいね。」
すれ違う人、すれ違う人に声を掛け、励まして差し上げる。
良い反応が返ってくると僕も元気になるのでそうしていました。
ただ・・・
ハシゴのところですれ違った、ザイルで繋がれた3人組は違っていました。
いや、正確には真ん中の女性と最後の男性は情報をあれこれ聞いてくれたので、初めてここに登った登山者なんでしょう。
しかし先頭はどうやらインストラクターっぽくて・・・
「これからどちらまでですか?」
「奥穂までです。」
「山頂でUターンですか?」
「そうです。」
「それなら良かったです。僕は西穂を目指していたのですが馬の背で暴風雨になったので断念して戻って来たところなんですよ。」
「そんなの当然です。」
バサッ!と切り捨てられました。(笑)
インストラクター怖ぇ~!
確かにどこの山でもそうですが、『お一人様』に対する態度がきつい人、多いですよね?
何か「山をなめてんじゃねぇぞ!」って言いたげな態度の人・・・
そう言えば岳沢小屋のブログだったかなぁ~、かなり上から強烈な辛口意見を書いていました。
http://www.yarigatake.co.jp/dakesawa/blog/2018/05/post-1190.html
確かに読んでみたら、「なるほど・・・そりゃ酷いな。」って思える内容でしたが。
根本的に山の情報を何も勉強せずに登る人が増えているってのは、解る気がします。
ネットで情報がすぐに調べられるし、ネットで誰かの記事を読んだり、誰かのアドバイスを受けて、それでもう登れる気になる人だっている訳だ。
基本的な知識と経験といった下積みなんて一切必要としない。
今の時代登山に限らず何だってそうでしょ?
僕ら過程を大切にする世代は、そこに苛立ちを覚える訳なんですが。
ネット社会の在り方・・・どう向き合うべきか、それこそ国家レベルで考え直した方がいいかも知れませんね。
僕も日帰り縦走を達成した人のブログに影響されて、今回のチャレンジに至った事は認めますが、穂高連峰のルートや危険個所など、本やDVDで散々研究してから臨んでいます。
身体づくりだけが間に合わなかっただけで、あとは歩けば確信に変わると思ってある程度のイメージトレーニングもしていました。
万が一の場合も含めて、遭難してすぐに連絡が取れなかったり、見つけてもらえなかったりした場合も含めて、保険加入期間も余分な日数分もカバーして加入しました。
それに遺書は書いても死にに来ている訳じゃありません。
遭難したら大勢の人に迷惑を掛けます。
落石など発生させて他の人を巻き込んだら、もっととんでもないことになります。
『自分さえ登れて景色を堪能できればそれでいい!やばくなったらヘリが助けに来てくれるし大丈夫!』
テレビゲームじゃないんだから、そんな身勝手は一切通用しない事をご理解頂きたい。
さっきのインストラクターの態度からは、日頃のそういった案件に対する怒りと、登山客の安全と感動をサポートしないといけない使命感とのジレンマみたいなものを感じました。
7:52穂高岳山荘から今一度、白出沢ルートを見下ろす。
「すんげぇガスってんなぁ。あぁ・・・もうこの道、歩きたくないんだけどなぁ。」
そう思いつつ、親戚と知人に連絡。
この日は本来なら小中学校時代の友人が鹿児島から神戸へ帰ってきているので、10時からハーバーランドで会う約束になっていたのですが・・・(一応前夜に予定変更のメールは送っていたが)
僕が帰る頃には彼も鹿児島に帰らなきゃならない。
ところで・・・僕は雨なのでハイドレーションの水を飲み干さない自信はあったけど、逆に昨日からの塩分不足を気にして、また山荘で『塩と夏みかん』のペットボトルを購入してから下山に入る。
帰りは印を見失わないように注意して下る。
後ろから外国人(アジア系)の2人組がついてきたが、2人ともガレ場は得意じゃない模様。
2人共ストックを持っているのに何でそんな歩き方?って突っ込みを入れたくなるレベルで、印通りに歩かないし、何度も浮石を踏んでは滑り落ちそうになっているし・・・
ガラガラ・・・と音が鳴る度に僕も後ろを振り向いて・・・
何だかちょっとストレスだなぁ~と思いつつ、落石に巻き込まれないように速度を速めていった。
ではまた次回へ・・・
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