2020年10月23日金曜日

結局自分の居場所は山にしかない・・・槍・穂高縦走チャレンジ・・・その⑩「想定外とうっかりで再びピンチ!」

9:39 槍ヶ岳の周りの雲が晴れた。



嬉しい気持ちと悔しい気持ちで複雑な想いである。

これは槍ヶ岳山荘に戻るパターンが正解だった事を意味する。


しかし今から登り返して山頂に登る元気はもう残っていない。

とりあえず最後に槍ヶ岳とお別れができただけでも良しとしよう。



 そして道はガレ場~ハイマツ帯から樹林帯に切り替わっていく。

今回も雷鳥には会えなかった。



西鎌尾根と並走しながら間のハイマツ帯に雷鳥を探している。

一度雷鳥らしき鳴き声を聞いたものの姿は見えない・・・

それ以外で鳴き声?って思える音は何度か聞こえたが、よくよく聞いていたら僕自身の呼吸音だった。(汗)

昨日は水分補給がちゃんとできなくて喉をやられていたのである。



またお一人様で速い人が抜いて行った・・・。

お世辞にも歩くのが上手とは言えず、何度もバランスを崩したり滑ったりしていた。
歩く道によったら落石を発生させる迷惑な登山者かも知れない。

それでも僕のスピードに対して120%くらいの速度で歩き去って行った。
一体何があの人をそんな速度で歩かせているのだろう?
怪我や事故の無いように下山して下さいと、心の中で祈るしかなかった。


霧の向こうに尾根道が続いている。

西鎌尾根から分岐した奥丸山山頂まで続く尾根道です。

即ちここは槍平小屋のある飛騨沢の谷へと下る斜面に差し掛かっている事になります。


10時を回ったところでとうとう河原が遠くに確認できました。

この道を初めて歩く僕は・・・あそこまで下ったら、あとは新穂高登山口までなだらかな林道が続くものだと信じていました。

何ならこのルートは槍ヶ岳まで行くルートの中で、最も優しいルートだとさえ信じていました。

その思い込みが後に自身の心と身体を追い詰める事になるとは、この時は微塵も判っていませんでした。


とりあえず足を捻らないように気を付けながら歩く。

心なしか「緩やかな林道まであと少しか~!」って思うだけでモチベーションが回復してきた。

登山に行って何が一番嫌かと聞かれたら、そんなの下山に決まってるじゃないですか?
下山程辛くて寂しくて虚しくなることはない!
できる事なら下山するって決まった時点で下界に瞬間移動したいくらいなのである。

そりゃ時には今回の登山の思い出を色々、心と脳裏に焼き付けながら下山したいと思う事もある。

ただしそれは本当に良いタイミングで予定通り登山できた場合に限る。


そしてわざわざ汲み取りやすくしてくれている水場(沢)がありました。

後になって思えば、ここでハイドレーションに水を汲んでおけばよかったのですが、もう槍平小屋まで下山したら、あとは楽ちんな林道歩きだ!

そんな安易な思い込みだけでハイドレーションに水なんて汲まなくたって大丈夫!という根拠のない自信と安心感に浸っていたのである。

なのでここでは手のひらに2度水を掬って飲んだだけ。

とてもおいしい水でしたが、もう下山したも同然の歓喜で頭はいっぱいでした。


我ながら愚かなり。


なぜ高度計を見なかったのだろう?


後で等高線マップで調べたらここの標高はまだ2180mだった。

槍平小屋も標高で言えば1980m強。


新穂高は標高1000m強なので、標高差で言うならまだ半分も下って来ていない事になる訳で、思い込みで判断して冷静な現状分析をしなかった自分のうっかり加減に、今思い出してもこの時の状況は笑えてしまう。



そう・・・ここから木々の間に見える河原は、まだまだ標高2000mくらいあるんだよ!

それなのに僕の意識の中では標高1600mくらいに認識していた訳。


もう脚の痛みから一刻も早く解放されたかったんでしょうね・・・当時の僕は。


実はこの時点で既に脚のパフォーマンスは15%以下に低下していて、時々踏ん張りが利かなくて既に4度も登山道から滑落(墜落)しかけている。(すべて寸前のところでしゃがんで岩にしがみついたり、木の枝に掴まったりしてピンチを回避している。


お腹も空いてきて一刻も早く下山して美味しいものが食べたいと思っているので、それも集中力を下げてしまっていたかも知れない。



この辺りは大喰沢だと思われますが、どこも水の飲めそうな沢に度々遭遇するのですが、もう補給の事とか完全に冷静な判断は出来なくなっていたと思う。



写真に撮るって事は「美味しそうな水だなぁ~!」とは思っている証拠ですが・・・。



大きな沢が見えてきました。
恐らく中ノ沢と呼ばれる沢だと思われます。


今歩いてきた樹林帯を振り返る。

景色の楽しめない樹林帯はただただ退屈なのだ。



中ノ沢で一人の登山者とすれ違ったが、もう姿が見えない。

しかし時間は10:28である。

今から登るとなると早くても槍ヶ岳山荘には13:30以降の到着になるだろう。
天候が荒れない事を祈りたい。


そしてこれは飛騨沢の対岸の奥丸山(山頂の標高は2440m)の尾根。


あの尾根の標高って2350m前後なんですよ。


それが把握できていれば現在地の標高も・・・目視で概ねの標高が判断できたはず。



そしてここに来てまだ樹林帯・・・


こんな登り返しも待っていた。


路面が悪くて足の裏の痛みに苦しめられる。



しかしそこから15分ほど歩いて、ようやく飛騨沢の河原と並走する標高まで下りてきた。

槍平小屋は近いはずだ!


きた~っ!槍平小屋のテント場!

女性が一人でテントを設営していた。


奥丸山へはここからでも登れる。

ある意味槍ヶ岳に登るなら僕はここから奥丸山経由で千丈乗越を目指す方が楽な気がする。


槍平小屋に到着~っ!


ここで水を汲まなかった僕は、いよいよもって大馬鹿野郎だ~!


今年はコロナの影響で宿泊利用ができない槍平小屋ですが、今年の登山道の状況をネットで配信してくれたり、テント泊は受け付けております。


そして食事やコーヒーは提供してくれたのに、僕は下山を急ぐあまり食事もコーヒーも注文しなかった。


ただ小屋の敷地内で5分少々の休憩を取って、ストックの準備をしただけ。


この先は緩やかな林道だと信じて止まなかったので、ストックで歩きやすくなるという予感に酔っていた。



槍平小屋を出発して間も無くの南沢のガレ場。



沢の真ん中まで出てこれから進む先を眺めて唖然!

まだまだ深い渓谷である事がこの景色で理解できた。

「えっ?もしかしてあの辺が滝谷の出合?じゃあ白出沢ってもっと向こうで、標高差はまだまだ残ってる?」

そしてこれから向かうルートは緩やかどころかかなり急な勾配である。

更に地震や大雨による落石や倒木、崩落で迂回ルートや危険ルートがいっぱい!

想定外!想定外!このルートを完全に甘く見ていた自分の考えの甘さも想定外!

そしてうっかりしていた!

「そうやで!上高地なら標高差1580mやけど、新穂高は2000m以上下らないとあかんねんで?どう考えてもこっちの方が道は険しいに決まっているやん?」

なぜその事に気付かなかった・・・?

朝5:30に朝食を食べて以来、一切の補給も無く下山・・・果たして無事に新穂高まで踏破できるのだろうか?

次回最終回・・・お楽しみに!

0 件のコメント:

コメントを投稿