9:39 槍ヶ岳の周りの雲が晴れた。
嬉しい気持ちと悔しい気持ちで複雑な想いである。
これは槍ヶ岳山荘に戻るパターンが正解だった事を意味する。
しかし今から登り返して山頂に登る元気はもう残っていない。
とりあえず最後に槍ヶ岳とお別れができただけでも良しとしよう。
そして道はガレ場~ハイマツ帯から樹林帯に切り替わっていく。
今回も雷鳥には会えなかった。
西鎌尾根と並走しながら間のハイマツ帯に雷鳥を探している。
一度雷鳥らしき鳴き声を聞いたものの姿は見えない・・・
それ以外で鳴き声?って思える音は何度か聞こえたが、よくよく聞いていたら僕自身の呼吸音だった。(汗)
昨日は水分補給がちゃんとできなくて喉をやられていたのである。
そんな安易な思い込みだけでハイドレーションに水なんて汲まなくたって大丈夫!という根拠のない自信と安心感に浸っていたのである。
なのでここでは手のひらに2度水を掬って飲んだだけ。
とてもおいしい水でしたが、もう下山したも同然の歓喜で頭はいっぱいでした。
我ながら愚かなり。
なぜ高度計を見なかったのだろう?
後で等高線マップで調べたらここの標高はまだ2180mだった。
槍平小屋も標高で言えば1980m強。
新穂高は標高1000m強なので、標高差で言うならまだ半分も下って来ていない事になる訳で、思い込みで判断して冷静な現状分析をしなかった自分のうっかり加減に、今思い出してもこの時の状況は笑えてしまう。
そう・・・ここから木々の間に見える河原は、まだまだ標高2000mくらいあるんだよ!
それなのに僕の意識の中では標高1600mくらいに認識していた訳。
もう脚の痛みから一刻も早く解放されたかったんでしょうね・・・当時の僕は。
実はこの時点で既に脚のパフォーマンスは15%以下に低下していて、時々踏ん張りが利かなくて既に4度も登山道から滑落(墜落)しかけている。(すべて寸前のところでしゃがんで岩にしがみついたり、木の枝に掴まったりしてピンチを回避している。
お腹も空いてきて一刻も早く下山して美味しいものが食べたいと思っているので、それも集中力を下げてしまっていたかも知れない。
この辺りは大喰沢だと思われますが、どこも水の飲めそうな沢に度々遭遇するのですが、もう補給の事とか完全に冷静な判断は出来なくなっていたと思う。
写真に撮るって事は「美味しそうな水だなぁ~!」とは思っている証拠ですが・・・。
今歩いてきた樹林帯を振り返る。
景色の楽しめない樹林帯はただただ退屈なのだ。
そしてこれは飛騨沢の対岸の奥丸山(山頂の標高は2440m)の尾根。
あの尾根の標高って2350m前後なんですよ。
それが把握できていれば現在地の標高も・・・目視で概ねの標高が判断できたはず。
こんな登り返しも待っていた。
路面が悪くて足の裏の痛みに苦しめられる。
槍平小屋に到着~っ!
ここで水を汲まなかった僕は、いよいよもって大馬鹿野郎だ~!
今年はコロナの影響で宿泊利用ができない槍平小屋ですが、今年の登山道の状況をネットで配信してくれたり、テント泊は受け付けております。
そして食事やコーヒーは提供してくれたのに、僕は下山を急ぐあまり食事もコーヒーも注文しなかった。
ただ小屋の敷地内で5分少々の休憩を取って、ストックの準備をしただけ。
この先は緩やかな林道だと信じて止まなかったので、ストックで歩きやすくなるという予感に酔っていた。
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