2020年10月15日木曜日

結局自分の居場所は山にしかない・・・槍・穂高縦走チャレンジ・・・その③「僕の登山の原点・・・僕が僕である事とは何か?」

 


槍沢ロッヂの悲劇・・・


またしても自販機の調整中だった。

今度は頑張って待った・・・しかし待っていたのにペットボトルはミネラルウォーター以外は軒並み売り切れ!


やむを得ずまた缶のポカリスエットを買って飲む。


外のテラス席はほとんど先客が座っていて、それにやたらとジロジロ見て来る人が多くて落ち着かない。


ここで軽食を食べるという選択肢はそれで消えてしまう。


僕の補給ライフがまた一つ消える。


今持っているのは2個のおむすびとクエン酸タブレットと固形酸素タブレット。

ハイドレーションの水はまだほとんど飲んでいない。



手作り感満載なヘリポート。

こんな場所に着陸するのはかなりの操縦技術が無いと難しそう。



直射日光は浴びていないが暑い。

フリースは肘まで袖を巻くって歩いている。

そろそろ塩分を補給しないといけないのだけど、こういう時に限って岩塩を持って来るのを忘れてしまった。



11:07 槍沢ロッヂを出発!


横尾尾根は通常登山ルートが存在しない尾根ですが、歩けば天狗原や南岳方面へ尾根が続いています。


その気になればフリー(命綱無し)で登れそうな岩壁も点在しており興味をそそられる。

しかし山渓のMAPでは横尾尾根を積雪期の雪山ルートとはしているものの、通常は踏み跡があっても侵入するなとなっており、ここへの入山は基本的に自己責任。



槍沢ロッヂを出て間も無く槍の穂先が見える所があったのですが、歩きながらカメラを用意していたらもう見えなくなってしまいました。


ここからはグリーンバンドのカーブを曲がるまで、槍ヶ岳は一切見える事はありません。


長い道程なだけに途中で目的や目標が「あれ?そういえば今どこに向かってるんだっけ?」って事にもなり兼ねない。



とにかくひたすら前進あるのみ!


初めて歩くルートなので、できるだけ目印になるところは写真を撮って記録します。

槍沢ロッヂからここまでは17分で通過できます。



前方にヤバそうな岩稜帯が見えてきました!

あれは槍ヶ岳への稜線ルートの一つ『東鎌尾根』ですね!

大天井岳から繋がっている道で、燕岳から槍ヶ岳までを結ぶこのルートは通称、北アルプスの『表銀座』と呼ばれています。


表銀座と言えば聞こえは良いけど、東鎌尾根は高度感もあって難易度は結構高めです。


槍ヶ岳から双六岳や三俣蓮華岳へ向かう西鎌尾根も難所の一つ。


更に槍ヶ岳の北鎌尾根は上級者向けのバリエーションルートで、正確なルートマップが存在しません。

特に厳冬期の北鎌尾根と言えば加藤文太郎や松濤明という、国宝級とまで云われた登山家を死に至らしめた魔のルートでもあります。


神戸生まれ神戸育ちの僕ですら、幼稚園児の頃からテレビで遭難ニュースが流れると、「冬の槍ヶ岳登山は死にに行くようなものだから、絶対に行こうなんて思っちゃダメだよ!」と祖父から言い聞かせられて知っていたくらい、本当に有名な話です。


因みに当時の僕はそんな話を聞かされるとむしろ心がときめいて、「そんなに危険な山なの?登ってみたいなぁ~。」と思っていて、小学生の頃は「冬の槍ヶ岳に単独で登って・・・次はアイガー北壁をフリーで登り・・・最後はエベレストの単独登頂だなぁ~。」などと登山の夢を膨らませていたのである。


今思えばなんてクソガキだ!と叱りたい心境ではあるが、当時の僕は加藤文太郎の話もそうですが、植村直己という兵庫県生まれの偉大な登山家にして冒険家が、まさに偉業を達成している最中でしたので・・・それに影響されまくっていた事は間違いありません。


僕が幼稚園~小学生の頃は前人未踏の地とか、秘境という言葉にときめく時代でした。

川口探検隊の番組が『やらせ』だと知る由もなく、探検とか冒険とか・・・結果的に宝物があろうがなかろうが、冒険そのものが男のロマンでした。


危険とか命懸けとか、そんなの上等!

歴史に名前を刻む為だったら死んだって構わない!

振り返ると幼稚園児の頃からそんな死に方(自分自身が納得して死ねる死に方)をずっと考えていた・・・今思えば本当に変な奴でしたね。(笑)


周りにそんな幼稚園児とかいます?(笑)

僕は子供が好きなので、近所のお客様の子供たちや、保育園の子供たちを見ていて可愛いなぁ~と思いますし、たまには遊び相手にもなります。

時々登山のDVD等を流していると、食いつくように観ているお子さんもいます。

でも明確にこんな事がしてみたい!って夢を語るような子にはなかなか出会えません。

その度に世界の山とその標高を丸暗記していて、そのうえ「どんな死に方が男らしくて美しい死に方?」なんて事を考えていた当時の自分が、ませていて本当に可愛くない子供だったなぁと感じてしまう訳です。


槍ヶ岳へ向かうというだけで、子供の頃の自分の想いがあれこれと蘇ってきました。



ババ平のテント場に着きました。

槍沢ロッヂからここまではコースタイム通りの30分で到着。



そして今になって考えると、この時既に僕は正確な判断ができない状態になっていました。

恐らくここが横尾~槍ヶ岳山荘間の中間地点だと思って油断したのだと思います。


ここで非常食のおむすびを食べる事にしてしまいました。


殺生ヒュッテが営業終了って事の重大さが判断できなかったなんて!


せめて天狗原分岐までは我慢すべきでした。

必要な補給ができなかった事の重大さをよく考えて、タイミングを見計るんでした。


確かにお腹が空いて辛いと感じるようになっていましたが、もっと冷静になるべきでした。



11:49 ババ平を出発。


天狗原分岐までは比較的なだらかな登りです。



まだ標高2000mにも達していません。



現在時間は11:58です。

途中でこまめに休憩を取ったとしても、16時までには登り切りたい。

神戸で今まさに働いている店のスタッフたちには17時までには着く予定だと伝えている。



ここは落石が多くて道が崩落しかけていました。


天候によっては注意が必要です。


道も狭くなっています。

因みに向こうを歩いている赤いヘルメットの紳士・・・

横尾山荘から何度も抜いたり抜かれたりと、デッドヒートを繰り広げています。(笑)


彼はきっと僕の事が気に入らないんだと思います。(笑)

何故なら彼はこのルートを、僕と同じで初めて歩いているっぽいのですが、先程も下山している登山者にルートの確認をしていました。

僕が見て確認した限りでは3回以上ルートの確認をしています。

なので僕が追い抜く度に「お疲れ様です!今日は槍ヶ岳山荘までですか?」とか「お疲れ様です!あと少しで槍沢ロッヂですね!」って声を掛けても、「あ、あ、うん・・・。」としか返してくれないのに、他の登山者には積極的にルートを確認しているので、きっと僕の事が気に入らないのでしょう。


それとも僕が余りに軽装なので、山を舐め切った初心者の一人に見られているのかな?


いずれにしても余り良い気持ちはしないので、この人よりは絶対に先に登ってやる!って思いながら、いつでも抜きにかかれるように常にロックオンして歩いています。(笑)



そして標高はようやく2000mを越えてきました。



水俣乗越分岐の手前の沢だったと思いますが、この水・・・冷たくて美味しかったです。


でもハイドレーションの水がまだ十分残っていたので汲み直しはせず・・・。


赤ヘルメットとの距離が開いてしまったので、すぐに後を追う。



間も無く乗越沢・・・すなわち・・・



水俣乗越分岐です。(12:12)


ババ平から23分で到着しました。(標準30分)


ここを右に登ると東鎌尾根に登れます。


更に通過して裏の斜面を下ると、そこは天上沢という高瀬川の源流の一つで、北鎌尾根への登山ルートに繋がっています。(高瀬渓谷もターコイズブルーの美しい渓谷が楽しめる秘境です。)

そうです北鎌尾根と言えば魔のルートです!

その北鎌尾根に行くには同じく表銀座ルートに、貧乏沢という沢から下るルートもあります。


そういえば元スタッフのM籏君も北鎌尾根に行きたがっていました。

その時は僕も誘ってもらおうかな?(笑)


さあ、ようやくここからが本格的な登りです!


残す標高差はようやく1000mを割りました。

しかしここからが本当の地獄でもあります。


僕の補給プランの狂いが、今後どう影響する事やら・・・


それでは次回お楽しみに!

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