2015年3月20日金曜日

コーダーブルーム・レイル700について・・・

先日も話しましたが、レイル700のチェーンが短くてセッティングがシビアって件。

それでお客様の注文のあったレイル700を一旦返却して、新たに届いたものを組んでみたのですが・・・

今回はその話です。


とりあえずダンボール箱から出すと半組みになっているのですが、それに前輪をつけてハンドルを組み付け、ワイヤー関係を接続すれば完了なのか?

そうではないんですね。

ドッペルギャンガーでもよく90%完成とか書いていますけど・・・

そんなに簡単に安全な自転車が組み立てれるなら苦労はしないんです。

まずは前後輪のホイールの振れやセンターを点検し、問題があれば直します。

今回は後輪は問題なかったのですが、前輪はセンターが約3mm狂っていたのでスポークを締め直す。

回転に関しては、返却したレイル700の前輪が4分45秒+振り子運動2分50秒で静止まで7分35秒と優秀だったので、それより悪かったらベアリングのオーバーホールをするつもりだったのですが・・・

なんと5分22秒回転+振り子運動3分17秒と、静止まで8分39秒!

今回は大当たりでした。

そしてホイールのセンターを出したところで組み付け・・・


「ん?まだセンターが狂ってる?」

フロントフォークとタイヤとの隙間が左右で違うのが判りますか?

向かって左側に少し寄っています。


でもホイールのセンターはちゃんと出したんですよね~。


という訳で、ホイールの左右をひっくり返して装着!

フォークの精度の問題であれば、当然ひっくり返しても結果は同じになります。

やはり変わらず・・・向かって左側へ1mm以上寄っていますね。


そういう時はフロントフォークのシャフト受け部分を金ヤスリで軽く研磨してあげます。

ここは削り過ぎると大変な箇所なので慎重に・・・


それでホイールを装着し直して左右の隙間を測ります。

左右とも同じ間隔になりました。


センターが出たところで次に行きましょう!


次はリアディレーラーに移ります。

フロントディレーラーとチェーンリングはまだ未調整で、完全な状態ではありませんが、メーカーで変速機の組み付け済みの場合は、先にリアから調整した方が楽なので僕はそうしています。

フロントチェーンリングのアウター(一番大きいギアにシフトアップ)にした状態で、リアもトップギア(一番小さいギア)にセットします。

そこで一旦リアディレーラーのインナーワイヤーを解除してガイドプーリーとトップギアが一直線になる状態(Hのアジャスターボルトで調整)にします。

それでクランクを回してカリカリいうようなら、Hのアジャスターボルトを4分の1~2分の1回転緩めます。

つまりトップギアよりもガイドプーリーが外側に少しずれるようにすればノイズは治まります。

その状態を確認してインナーワイヤーを張り直します。

この時ワイヤーのテンションを調整するアジャスターボルトを、全て閉めこんでからワイヤーを張る作業を行って下さい!。

早速シフトダウンの動作をすると、既にいい具合にリアディレーラーが反応してくれるかも知れませんが、ここでダウンチューブ下かチェーンステー下で露出しているインナーワイヤーを、思い切って手で引っ張り、初期伸びを出してあげます。

そこで再びシフトダウンの動作をしたら、きっとさっきよりも反応が悪くなっているはずです。

ここで初めてワイヤーアジャスターボルトを緩める作業で、インナーワイヤーの引っ張り具合を調整します。

シフトダウンの反応を良くし過ぎたら、今度はシフトアップの反応が鈍くなるので、両方のバランスを整えて下さい。


そしてこの状態が今回僕がホダカ(コーダーブルーム)にクレームを言った状態であります。

アウター×ローギア設定(大きいギア同士の組み合わせ)の時のチェーンの張りがキンキン過ぎる状態です。

リアディレーラーがこれ以上無いってくらい引っ張られています(汗)

今回の車体はリアディレーラーのプーリーが暴れたりする症状が出なかったので、意識して乗る分にはこのままで問題ありませんでしたが、個体によっては・・・


ディレーラーテンション調整ボルトを締め込んで、リアディレーラーのスプリングテンションを緩めないといけない場合があります。

そうすると、シフトチェンジの反応速度が若干鈍くなるのですごく嫌なんですが、今回は特にいじらなくても大丈夫でした。


ただしアウター×ローは写真のように、チェーンが対角線を引くようなラインを描いているので、ただでさえシビアなんですが・・・

チェーンを張り過ぎている分だけ余計にシビアさが増しています。

なのでアウター×ローの状態でクランクを逆回転させると、半回転ほどでチェーンが脱落してしまう訳なんですね。

ちなみにスプロケットのローギア側も、忘れずにディレーラーの可動域を調整して下さい。

それはLのアジャスターボルトで調整します。

それでも1速(ローギア)まで引っ張り上げれない場合は、インナーワイヤーのテンションを疑って下さい。



それでは次にフロントディレーラーですが・・・

実はフロントディレーラーのセッティングこそが、もっともカオスなんですね。


インナーにセットした時に、フロントディレーラーのガイドブレード(外側の)とアウターギアとの間に1~3mmの隙間を空けて下さいとありますが、その僅か2mmの遊びを作ったが為に尚更カオスなんです。

尚、メーカーで組み付けてきた状態では1mmも隙間が空いてなかった(チェーンガードが付いているせいで、真横から見るのが困難ではあったが)ので、インナーワイヤーを解除後、フロントディレーラー装着位置を上げる。

さらにガイドブレード(外側)とアウターチェーンリングを真上から見た時に、ほぼ平行になるように角度を決めて固定するのだが、ディレーラーのキャパシティと使用するチェーンリングの組み合わせによってもシフトチェンジの精度が変わるから、ここばかりはマニュアル仕込みの知識だけでは上手く調整が出来ない場所なんです。

高さ(隙間)と角度をコンマ数mm単位で微調整しなければならない・・・

しかしあまり取り付け位置の変更ばかりをすると、今度はディレーラー固定バンドでフレームのシートチューブの塗装が傷んでしまいます。

数学で言うところの微分積分を解いているような気分で、限りなく100%に近づける気持ちで作業に取り組んではいますが、諸々の事情を考えて・・・可能な限り一発でベストな位置を決めるようにしています。

そして取り付け位置を決めて固定をしたら・・・


前後のギア設定をインナー×ローにします。

その時にガイドブレードの内側とチェーンが擦っていればLのアジャスターボルトを緩め・・・

隙間が空いている場合は逆に締め込んで、ブレードとチェーンが擦らないギリギリのポイントに合わせる。

インナーの限界値が決まったら、改めてインナーワイヤーを張り直す。


それからまずスプロケはローギアのまま、フロントギアをセンターにします。

内側のブレードとチェーンが擦っています。

そのまま更にアウターギアへ入れます・・・


アウター×ローの状態でも当然内側のブレードとチェーンが擦っています。

そこでスプロケをトップギアまでシフトアップしてみました!


それでも外側のブレードとチェーンの隙間は、まだ十分に開いていますよね?

というわけで・・・


Hのアジャスターボルトを締め込んで隙間をギリギリまで埋めます。



これでアウター×トップでチェーンが擦れず、外側にも脱落しない状態になる。

この状態から再びスプロケをローギアに入れてみましょう!


内側のブレードに擦らなくなりました。

以上でフロントディレーラーの可動域の調整は完了です!



次はブレーキの調整ですが・・・


リアブレーキの右側シューと後輪のリムの隙間が5mm程開いています。

今度は反対側を見てみましょう。


左側は完全にシューとリムが当たって擦っています。

これは左右の開き具合を整えないといけません!


写真のようにスプリングのテンションアジャスターを緩めて、5mmの隙間を2mmにします。

反対側のアジャスターを締め込む事でも同じ効果を得られますが、何でも締め込めばいいってものではありません。

古い自転車はスプリングが弱ってて、締め込んでもテンションが上がらないなんて時がありますが、新車であれば余計な負荷をかけずに調整するのが基本です。

前後ブレーキとも左右の隙間が2mm程度で落ち着いたら完了です。



しかしここでまた問題!

リアブレーキの戻りが鈍いのである。

ブレーキレバーを握って放したあと、ワイヤーが引っかかっているのか、シューの戻りが遅い!

グニャ~っとした感触も気に入らない!


原因はこれだ!

ワイヤーが真ん中でヘの字に曲がってる箇所・・・

つまりバナナの先端でフリクション(摩擦)が起きている訳ですね。

原因はバナナの反対側・・・

つまりアウターワイヤーが長過ぎて、重たい人がシーソーに乗ったような現象になっている訳ですよ。


ピントが狂って申し訳ございません。

ここのアウターワイヤー(黒いコード)を適正な長さにカットして、再びインナーワイヤーを張り直す。


するとこの通り、真っ直ぐインナーワイヤーが出てきていますね?

これでグニャっとした感触も無くなり、スムーズにブレーキが動くようになりました。




インナーワイヤーの先端は付属のインナーキャップだとダサイので、当店ではカラーキャップをサービスで取り付けしています。

最後に・・・


ハンドルの角度やブレーキレバー&シフトレバーの角度を、自然に握れて操作のしやすい位置に固定して仕上げと致します。

通販なんかで自転車を買う人は、この時にステムとフロントフォークのコラム(突き出し部分)を固定する作業の勝手が解っていなくて、ヘッドのガタツキを残したまま使用したり・・・

ボルトの締め付けトルクも考えずに組み付ける訳なので、事故や故障の原因にもなります。



今回はそこそこ価格も高くて、それ以上に性能が良い自転車であるはずの『レイル700』をモデルに、組み付け調整作業の大まかな部分をレポートしてみましたが・・・

それでも手直しが必要とされる箇所がたくさんあった訳で・・・

それだけにドッペルギャンガーをはじめとした通販自転車を、軽い気持ちで購入して自分で組み立てるって事が、実はそんなに簡単な事ではないのだという事を、知っていただけたなら幸いです。

そして自転車専門店でさえ、ただ組みつけているだけっていうお店もあったりするので、しっかりセンター出しや細かい加工をした上で組み立てているプロショップを選んで頂きたいという事と・・・

ホームセンター等で購入した自転車は精度がマチマチなので、一度専門店で点検をしてもらった方が安全上いいかも知れません・・・って事を併せて申しておきます。



とりあえずホダカ(コーダーブルーム)さんから回答がありまして、工場ラインへの落とし込みは完了しました。

2016年モデルからはチェーンの長さを見直して、2リンク増やす事が決定したそうです。

2015年モデルで既にラインから上がったものについては現状で、ショップの調整で対応して頂く事になりましたが、稀にリアディレーラーのプーリーが暴れるなど、チェーンの交換を余儀なくされる場合は、交換用のチェーンをホダカさんの方でご用意頂けるそうなので、是非安心してコーダーブルームの自転車をお選び下さいとの事でした!


どうぞみなさんご贔屓に!

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