標高3100mの位置に建つ山小屋『北穂高小屋』。
ここは宿泊もできます。
そしてご飯が美味しい事でも知られています。
槍ヶ岳方面と涸沢・奥穂高岳方面を示す看板を見れば、ここの気温とか朝まで雪が降っていた事などが想像できるでしょ?
北穂高小屋のテラスに到着。
僕が到着した時は、ここの宿泊客が山頂に1名、テラスに1名、小屋内のレストスペースに1名しかいなかったのですが・・・
ちなみに彼らは槍ヶ岳を目指しているそうですが、行けなくて困っている人たちなんですね。
この雪何か判りますか?
北穂高小屋の北面の外壁に積った雪です。
風が冷たくて強いので、地面には積らず壁や看板に吹き付けられるようにして積っています。
見事に凍結しています。
手前を右に石段を下りて行けば槍ヶ岳方面へと向かえます。
という訳でこのステップに立って北を望むと、大キレットから槍ヶ岳までの迫力ある稜線が一望できるのですが・・・
完全に雲の中です。
足場が少し滑るので、ここで転んだら滝谷へ真っ逆さまです。
滝谷は蒲田川沿いの林道から北穂高岳山頂付近までで、凡そ1200mの標高差を誇ります。
アルパインクライミングをしている人なら滝谷か?谷川岳一ノ倉か?って言われるくらい有名な場所で、ここを最終目標にする人も多いと思います。
大キレット~北穂高岳~奥壁バンド~涸沢槍までの区間、岐阜県側の斜面は滝谷(絶壁)である事をご理解下さい。
落差だけで言えばジャンダルムも比較にならないくらい切れ落ちています。
とりあえずホットコーヒーを注文して待っていると・・・
先ほど僕が見たパーティが東稜を登ってきました!
東稜の向こうに見える川は、前日に僕が登ってきたルートの本谷橋がある付近です。
ザイルで繋がれているとはいえ、真ん中を登って来られたのはご婦人です。
「お疲れ様でした~!」
手を振って声を掛けると笑顔で返して下さいました。
この頃くらいから僕と同じ南稜から登ってきた人などで、テラスが賑やかになってきました。
槍ヶ岳は見えないが、とりあえずティータイム!
屏風の頭と蝶ヶ岳方面を眺めながら美味しいコーヒーを頂く。
じっとしていると寒い。
少し雲が薄くなってきたのでまた小屋の北側へ行く。
北穂高岳の北壁がうっすらと見えてきました。
雪で真っ白ですね。
大キレットもうっすらと見えてきました。
槍ヶ岳方面に行けない人たちの気持ちが解りました。
難所がことごとく凍結しています。
僕も『飛騨泣き』や『長谷川ピーク』といった難所を歩いてみたかったのですが、現状は控えた方が良さそうです。
飛騨泣きとか、ややオーバーハング気味の岩場を行くので、滑ったら後頭部から墜落です。
冷えたのでコーヒーをもう一杯!
癖になるほど美味しいです。
常念岳までは見えています。
早く雲が切れないものかと、槍ヶ岳方面に向かう予定のお兄さんたちも、「槍沢ルートで登っている仲間と槍ヶ岳山荘で合流する約束なんですよねぇ~。」と表情が曇る。
こんなコンディションなんて、何度も穂高に登っている人でも怖くて迂闊に歩けないと思います。
どうです・・・この氷壁?
怖い!寒い!怖い!
浮かぶ言葉はそれしかない。
石段の向こうに大キレットが見えてきました。
「大キレット見えるようになったよ~!」とテラスに溜まった連中に声を掛けると、みんな嬉しそうに小屋の北側に集まってきた。
「長谷川ピークはさっきまで白かったけどもう大丈夫そうですね。でもA沢より手前はまだまだですね。飛騨泣きは危険なままかも。」
そんな会話で、槍ヶ岳方面に向かう面々も「お昼までギリギリ粘って待ちます!」ってスタンスでした。
何時になったら顔を出してくれるんだ?
そう思っていたら・・・
大キレットに向かってブロッケン現象が!
確かに太陽は真後ろに上がっています。
雲の厚みで見え方も変わるので、見えるうちに教えてあげようと、テラスの人々を呼びに行く。
「ブロッケン現象が見えるよ~!」
これでまた槍ヶ岳方面へ行く小屋の出入口付近が賑わう。
ステップのところは狭いので順番に皆さん楽しんで頂く。
そして消えてしまった。
また条件が揃ったら見えるでしょう。
ブロッケン現象は見た事が無い人も結構多いので、とっても盛り上がりました。
ようやく燕岳までは時々見えるようになる。
常念岳も加えました!
写真だと判りにくいですが、常念小屋も燕山荘も肉眼でハッキリ見えます。
もう僕が北穂高小屋に来てから1時間も経過したんですけど・・・
一向に槍ヶ岳の雲は晴れません。
そしてまたブロッケン現象!
ここってブロッケンスポットかも!
向こうの岩場にいる黄色いウェアの人は山頂で記念撮影をしてくれた人です。
彼も槍ヶ岳に行く為に大キレットの雪と氷が解けるのを待っています。
ちょっと露出が狂った写真になってしまいましたが、もう南岳が見え隠れし始めたので、そろそろ槍ヶ岳も・・・
蒲田川沿いにある槍平小屋は確認できました。
だがしかし・・・あと少しがなかなか・・・
何だったら中岳やヒュッテ大槍も時々見え隠れします。
あとは本家の槍ヶ岳・・・ホンマ何してんねん?
あかん!もう腹が減って我慢できん!
レトルトではありません!ちゃんと作っています!
そして特に変なこだわりとかも無く、普通のオーソドックスな懐かしい味わいのカレー!
これが一番美味しいんです!
こんな標高の高い所で、こんなにもちゃんとしたカレーライスが食べれるなんて感激しました。
お水もこんな標高ではとっても貴重なんです。
コーヒーが300円っていうのも「マジか?」って驚きましたが、カレーライスも800円と普通の価格!
「お山料金にしないんですか?」って思うくらい安い!
感激してもう一杯食べたいくらいだったのですが、槍ヶ岳が気になってまた外に出る。
この入り組んだ谷が滝谷です。
またブロッケン現象が発生しそうな感じになってきたので・・・
「まだブロッケン現象を見ていない人います?そろそろ見えるよ~!」って教えつつ、またテラス席に戻る。
ここで初めてN村さんと出会う。
確かN村さんもここで僕がブロッケン現象が見れるよ!って話で、それをご覧になったと思うのですが・・・
その後からテラスで一緒にお話しするようになって・・・
僕の勧めるまま北穂高小屋のカレーを召し上がり・・・
「いや~。ここにもう1時間40分くらい滞在して待っているんですけど、槍ヶ岳が一向に顔を出してくれなくて!」
って僕が言ったら、N村さんだけじゃなくて後からここへ登ってきた登山者みんなが、僕を振り向いて「えっ?そんなに待っているの?」って。
なので「槍ヶ岳を観ながらコーヒーを飲むっていうのが僕のミッションなんです。」って言ったら、一番最初からテラスにいた一人が、「じゃあ槍が出たらまたコーヒーを注文するんだよね?」って聞いてきたので「もちろん!」と応えて、このテラスにいる15名ほどの登山者みんなと、今まさに姿を現しそうな槍ヶ岳方面を祈るように見つめる。
左に写っている黒いウェアの人と黄色のウェアの人はいずれもここの宿泊者なので、僕が到着した時からいたメンバーです。
「お~っ!今先端が見えたぞ!」
寛いでいた人たちも一斉に立ち上がる。
全員が「うお~っ!」と歓声をあげる。
待っていた甲斐があったかも!
「ああ、そうだ!急がないと!」って慌てて注文!
ズバリ隠れました!(笑)
「お~い!何でやね~ん!」
おいおい!おいおい!なんでそうなるかなぁ~。
あっ!出た!
ちょっと消化不良気味な出方やけど、コーヒーが冷めたら嫌なので・・・
「今回のところはこれで我慢しといたろ。」
何とかミッション達成!(笑)
そしてカレーライスを食べ終わったN村さんはホットミルクを注文。
そしてようやく槍ヶ岳組に動きが出始めました。
それ以外の人たちは、今登ってきた北穂高岳南稜を下って下山するそうです。
またしても祭りの終わった後の寂しさを感じる。
内心、涸沢岳方面へ歩く人がいない事への寂しさもありました。
あんな凍結した涸沢岳・・・誰も登りたくないよなぁ~。って思っていたら。
「私、これから縦走路行きますよ。」とN村さん。
涸沢のテント村にテントを張ったままらしいので、穂高岳山荘からザイテングラートを下って下山するらしいのですが、穂高岳山荘までは同じルートです。
地獄に仏!
涸沢小屋のスタッフもそうだったのですが、北穂高小屋のスタッフも普通に歩けるような事を言うんですよ。
あなた方はあの雪を被った涸沢岳を見たのですか?
見たうえで尚、「大丈夫!大丈夫!全然余裕で歩けますって!」とおっしゃるのですか?
そう抗議したい気持ちでいたくらいなので、一緒のルートを歩くって人がいただけでも心強く感じました。
さすがに今から行ったのでは時間が厳しくなるのと、脚のダメージを考えたら、今から素直に穂高岳山荘を目指した方が安全だろう。
そう思ったので、今回は大キレットの寄り道は無し!
また天気の良いタイミングで遊びに来ます。
そしてN村さんがホットミルクを飲み終わったところで出発!
どうやら僕は小屋の中にヘルメットを忘れていたのですが、スタッフさんが窓を開けて差し出して下さいました!
どうもありがとうございました。
長時間滞在していたのでボケていました。(笑)
しかし楽しかったのはここまで。
ここから先は命懸けの2時間半となるのでした。
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