2021年9月20日月曜日

後立山連峰縦走の旅7月27日(火) ~その3~ 恐怖の白馬大雪渓

 

葱平(ネギダイラではなくネブカビラと読む)後半の下りはルートファインディングが定まらないので、意外に難易度は高め。


もっと〇×のペイントがあってもいいようなものだが・・・


逆にどこを歩いても大丈夫!って解釈でいいのかな?(汗)


向かうべき大雪渓は正面に見えているので大丈夫でしょ?って話だと不親切にも感じる。


大雪渓へのアプローチは雪渓の規模によって侵入ポイントが変わるので、春と夏、秋では全く異なる。


冷静に観察しないと安全なルートを見つけられない。



これは小雪渓の先端から湧いて来る雪解け水。


ここからはしばらく沢歩きになるので滑りやすい蛇紋岩には要注意!



振り向いたらようやく〇のペイントが施された岩を1つ発見!


今通って来たルートは正しかったという裏付けになる。



写真向こうに1段棚になった箇所に池が見える。


その左上にもう一つ池が太陽光に反射しているのが確認できるが、それが栂池自然園の展望湿原なので、前日に観光組が大雪渓を撮影した場所がそこである。


まさか自分があんな急斜面(後日観光組が撮影した写真を見て)を今歩いているなんて・・・全く自覚なし。


僕は緩やかなダラダラした道よりも、岩ゴツゴツの険しい道の方が水を得た魚になれる。



途中ぬかるんだ灌木帯も歩くのだが・・・



靴が汚れてかなわない!


僕には子供の頃から変な習性があって、どんな険しい道を歩いたとしても靴や服を必要以上に汚さない事に美学を感じているところがある。


これは・・・自分的にはアウトだ。


自分の登山靴に申し訳ない気持ちで歩く。



よく見たら大雪渓に他人の歩いた踏み跡や赤いペイントが見えている。


それに単独の登山者や数名のパーティーが歩いているのもここから確認できる。



この角度で写真を撮ったら今自分がどのくらいの急斜面を下っているのかが判断できる。



この辺は相変わらずペイントが少ない。


薄くなった矢印が2方向に向けられているが、あれはその先の灌木帯をどちらから巻いてもいいよ!って意味である。



高山植物も大半が終わりを迎える時期ですね。


8月はニッコウキスゲがあるから鮮やかだけど、9月にはマツムシソウくらいで、言っているうちにナナカマドの実が赤みを帯びて少し早い秋が訪れる。


旅行会社でバスツアーを作っていた頃、霧ヶ峰のコースを紹介するにあたってパンフレットの色彩を気にする余り、よく(鮮やかな)花の種類が少ないと愚痴っていたのが懐かしい。



いよいよ葱平も大詰め。


このほぼ垂直の九十九折りを下って左の沢にかかった板橋を渡り、あの左の斜面から大雪渓にアプローチと判断できる。


それにしても大雪渓への落石の多さが気になる。


もちろん僕は既にヘルメットを装備しています。



大雪渓のアプローチは元々この正面からなのが赤いペイントの跡でも確認できる。


しかし上部が見ての通り雪渓が溶けてスノーブリッジ化してしまっているので、下手に歩いたら踏み抜いてさようならになる可能性が高い。


なので写真左中央付近のガレ場から新たなペイントが設けられているのが見える。


ようするにあそこへ行けという訳だ。



落石危険!と言いながらその沢を渡らせるとか・・・(笑)



渡った後はこんな落石しそうな場所を歩きます。



このまま岸へ降りて行く感じかな?って思わせといて・・・



そうきたか!


なぜわざわざ左へ巻くんだろう?



そしてわざわざこんな所を下らせる意味って何?(笑)



うわっ!オヤジさんが追い付いてきた!


見える距離に来ないうちに大雪渓に侵入したかったのに参ったなぁ~。



アプローチポイントはもう目と鼻の先。



緩やかに見えるここでさえこの斜度なので、アイゼン無しで歩くのはかなり無謀である。



何より恐怖なのは落石。



常時杓子岳の尾根からガラガラゴロゴロと無数の落石が落ちて来るのが現在進行形で見える。


なかなか洒落になってない怖さである。


これを観た瞬間、先ほど天狗菱を見て軽々しく登ってみたいと思った事を反省。


僕がよく行く穂高連峰でも涸沢カールでは4月下旬の開山後から7月にかけては、こういった大雪渓を登って行くのだが、アイゼンを装着していても刺さりが浅い事が原因で滑落し、そのまま下まで雪崩れ落ちて行く事故が度々起こるらしい。


新雪やシャーベット状の場合は歩きやすい代わりに雪崩の心配が必要だが、一旦表面が溶けてから夜間の間に凍った夏の雪渓はとにかく滑る。


大抵の場合はピッケルを使ったり、背中から落ちてもザックがブレーキの役割をしてくれて大事に至らないケースが多いのだけど、時に止まらずに滑り落ちて、最悪の場合他の登山者を巻き沿いにして両者死亡なんて事例もある。


重力加速度がついて加速したまま大岩に激突したり、或いは落石が直撃なんて事になったら人の頭は簡単に割れて姿形も無くなってしまうのだ。


槍穂高の山々に関わるようになってからそんな話を聞くようになった僕としたら、今一番緊張の瞬間だったりする。



何とかここまでは転ぶ事なく下ってきたが、追手の姿も見えてきたので気持ち焦る。(笑)


薄っすらと赤い色が付いているのがガイドのペイントである。


概ねこれに沿ったコースを歩く事が安全とされている。



ずっとガラガラと落石が転がり落ちて来る。


大きな落石でも来ようものなら、アイゼンも無く敏捷性を欠いた僕に逃げ場はない。


その場合は一か八かの決死のダイブを試みて大雪渓の急斜面を滑り落ちるしかないか・・・


とてもリスキーな状況で落ち着きません。



ゴールが見えません!


ただ徐々に傾斜がきつくなるって事くらいしか判断できません。


葱平から見ていた時はスキー板を持って来ればよかったなぁ~なんて思っていたけど、こんなガリガリのアイスバーン・・・しかも落石まみれの斜面なんて滑ったら板がボロボロになってしまいます。


白馬大雪渓の全長は約3km。


まだ500mも歩いていないから気が遠くなってしまいそう。



これが大雪渓の表面の写真。


半透明になっているところは完全な氷です。


白い所の面積が広い場所を選んで、爪先やかかとでほぐしながら踏んでいきます。


でもこの時点で既に一度大きく滑って尻もちをついています。


危うく手を突いて転倒を免れた回数も7回。


滑って180度身体の向きを変えて止まった回数も2回。


アイゼン無しで大雪渓を歩くのは想像以上に難しいです。


後悔先に立たずとはいえ、正直無謀なチャレンジをした自分に対する後悔しかありません。



土や枯れた植物の残骸、落石は滑り止めに有効なので、極力滑り止めに有効な場所を探りながら歩いていますが、それでも何回かに1回は当てが外れて滑ったりするので、気を緩める隙が全くありません。



もう歩きたくない!がこの時の本音。


無事にここを歩き切る自信がないというか、ペースも上がらないしすべてにおいてスマートじゃない。


辛酸を嘗めるとはまさにこの事を言うのだろう。


失策中の失策!


これだったら不帰ノ嶮に強行した方がマシだったんじゃないか?


こんなにカッコ悪くて情けない山行はない!


観光組には早ければ10時過ぎには猿倉荘に着くので、白馬まで歩いて下山したとしても11時~11時半くらいには到着予定かなぁ~って言ったものの、この時点でもう9時を回ってしまった。


果たして怪我無く無事に下山できるのでしょうか?


次回へ続く。

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