とうとう杓子岳まで雲に覆われてしまいました。
これで先ほど見送った2組のパーティーは寒さに震えながら歩かないといけなくなった。
目の前の雲は積乱雲ではないけれど、台風が接近してきた時の雲の中は小さな嵐のように荒れ狂う場合がある。
僕は後ろ髪を引かれる思いで、名残惜しみながら大雪渓への下山ルートをゆっくり下り始めた。
こうやって見たら白馬岳のルートは本当に高山植物の宝庫なのが良く解る。
しばらくは緩やかな下りだが足元には油断禁物です。
雨に濡れた蛇紋岩で滑って転ばないように注意が必要な箇所が点々としています。
上に見えるのはさっきまで北アルプスの山々の様子を観察していた丸山です。
さっきまで雲に覆われていたのが再び晴れた模様。
道は整備されているものの、ガレていて足首にはダメージが大きい。
ヤバいヤバい!本当に雲の高度が下って来た。
冷たい冷気が風に運ばれてきて凍えそうになる。(下界は真夏なのに!)
ここからは葱平(ネブカビラ)と右手に小雪渓。
30分程歩いてようやく頂上宿舎から標高を200m下りました。
写真を撮ったり、途中で蛇紋岩で滑って転倒した方がいたので救助などしていたのでややのんびりペースです。
ゴールの猿倉荘までは残り1300mの標高差を下らないといけません。
まだまだ気が遠くなるような道程です。
それにしても・・・僕の雷鳥を小脇に抱えて持ち帰りたい願望を見透かしたような看板である。(笑)
まだ紫色の花をつけたウルップソウを発見!
良かった~っ!時期的には終わっているので諦めかけていました。
この辺りから斜度が急激に険しくなるので、転倒しないように足元に気を付けましょう。
念の為にライチョウやオコジョとの遭遇を期待しながら下っています。
これって背が低いけどダケカンバと思われる灌木帯の中を抜けて行きます。
さっきまでオープンな道を歩いていたのに、突然こんな灌木帯のトンネルを抜けるような道が現れるとか、なかなか変化に富んでいます。
トンネルを抜けると避難所であった!?
まるで杓子岳の前衛峰のようにそびえている、あの尖ったピークは天狗菱(テングビシ)という名だそうです。
あの岩壁を登るのは想像しただけで面白そう・・・なんて一瞬でも思ってしまいましたが・・・あとでその考えを改める出来事に遭遇する。
避難小屋は雷の被害から避けるように大岩の下に隠れるように建っています。
もちろんマナーさえ守れば誰でも自由に使えます。
小屋の右に湧水がありますが・・・とても美味しいです!
のんびりしていたら追いついて来る下山者が・・・
ザックの総重量は15kg以上あるそうで、中身はほぼ撮影機器。
日本山岳写真協会の会員だそうですが、70代とは思えない程のフットワーク。
所々で花々の撮影をして、その度にザックから機材を出して撮影。
そんな手間な事をしているのに僕と変わらないくらいのスピードで歩いて来るなんて忍者ですか?って聞きたくなる。
でも実は先ほど、彼が灌木林の中で蛇紋岩で滑ってバランスを崩しそうになったところを、ちょうど追いついた僕がザックごと支えてお助けしたところです。
とはいえこの方、後に僕の恩人になる人なんです。(以降、親しみを込めてオヤジさんと呼ぶ)
山での出会いには時に素晴らしい出会いがあるものです。
ただ・・・この時点での僕は誰にも追いつかれたくない心境でした。
なぜなら大雪渓を歩くのにアイゼンを用意していないという、恐るべきタブーを犯そうとしているからであります。
誰にも追いつかれず、誰にも出会わないうちにとっとと大雪渓をとぼけた顔して通過したいというのがこの時の僕の心情です。
雪渓に近付けば近付くほど不安になります。
「頂上宿舎で軽アイゼンを売っていないか聞くんだった!」とはもはや後の祭り。
内心そんなギリギリに追い詰められている自分を楽しんでいる自分も正直いる訳で・・・
「ホンマにアホやなぁ~俺。ホンマにアホ!アホ過ぎる!」って口に出して言いながら、期待と不安の両方に心躍らせながら歩を進めているのである。
大雪渓が見えたところでいよいよ最初の難所である。
オヤジさんとの距離も少し開いた。
僕がアイゼンを装着したかどうかなんて気付かないだろう。
『アイゼン必着』の看板が目に刺さる!痛い!
「今更後に引けない!」
ここでまた軽々しく命懸けの賭けに出る!
ガリガリに凍った小雪渓のトラバースを滑りながら横断中。
振り返ったらもうオヤジさんがテラスに着いてアイゼンの準備を始めている。
写真では判り辛いけどスキー場で言うなら傾斜角30度以上は確実にあるチャンピオンゲレンデ並みの急斜面です。
誤って滑り落ちて重力加速度が加わったら・・・命はありませんね。
せめてピッケルでもあれば安心だったのですが。
この通り岩山仕様のシューズでアイゼン無しです。
やはり写真では判り辛いですが、道幅は40cm程度で凍っているので滑ります。
しかも道はフラットではなく少し下り傾斜です。
なので、山側の雪渓の凹みや落石などを利用してブレーキをかけながら、小走りで対岸に向かっております。
意外と長い!
最後は向こう岸の岩にジャンプして飛び乗る。
渡り切ったら再び葱平の急峻な岩場の下りが続く。
さあ誰にも追いつかれずに大雪渓まで逃げ切れるだろうか?(何か趣旨が変わってしまったが)
エスケープルートのはずが結局・・・命懸けの山行になってしまった下山ですが、果たして無事に大雪渓を生きて踏破できるのでしょうか?
次回乞うご期待!
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