2019年2月28日木曜日

イチかバチか!こんなはずではなかった!命懸けの山行になった雪彦山。

2月12日(火)

この日は雪彦山への登山を予定していたので姫路へ


久々に葡萄屋でモーニングを頂きました。

この後市内で用事を済ませてから雪彦山を目指す。


ヤマトヤシキの建物がそのまんま残っています。

昨年3月に閉店して間もなく1年ですが、今後の復活とかあるのでしょうか?


夢前川沿いの道に合流する前に見かけた作業員さんです。

ミニオンみたいな恰好だったので写真を撮ってみました。

ちなみに運転交代要員&撮影スタッフとしてスタッフXにも同行してもらっています。


雪彦山の駐車場には11:00に到着。


しかし前日に降ったとされる雪がまだこの通り残っています。


足跡を見る限りではこの時点で1人の足跡しか見当たりません。

寒いから登る人が少ないのか?上が危険だからなのか?

真相はまだ判らないまま先に進む。


ルートはこの通り組み合わせやパターンが選べるのだけど、今回はAルートをメインで楽しむ予定。

一応Aルートは写真にもあるように危険個所が多いとされていますが、一応は一般登山ルートですし、最も危険な箇所は迂回ルートもあるそうなので、スタッフXも問題なく歩けるだろう!という判断でした。

そもそもの話の発端は、M籏君の持ってきたブルーレイに録画されていた番組です。

2012年にNHKで放送された『日帰り!グレートサミット 姫路の名峰』という番組で紹介されていた雪彦山が、あまりにも楽しそうだったからなのですが・・・。

季節が夏と冬とで違うとはいえ・・・まさかあんな展開になるとは。

この時点では想像すらしていませんでした。


とりあえず山の上にはトイレが無かったと思うので、一度駐車場まで戻ってトイレ休憩。

木の枝に積った雪がパラパラと舞って、陽の光に反射してとても綺麗だったのですが・・・

携帯電話の写真じゃ全然判断できませんね。


再び登山窓口に戻って登山届を記入し投函。


11:23登山開始!


スタート早々見上げるような急登です。


とりあえず序盤の急登でスタミナを消耗する事を考え、スタッフXの荷物は僕が背負う事にしました。

そもそも手ぶらで来ている僕は問題児なので、くれぐれも皆さんは装備を万全にお願いします。


さっそくゴツイ岩がゴロゴロと・・・

ここの山のすごいところは岩稜帯のはずなのに、あちこちに木の根が張り巡らされており、自然の生命力の強さをまざまざと感じさせられるところです。


すごい根でしょ?

所々木の根をハシゴのように使って登る箇所もあり、穂高は白出沢の重太郎橋~荷継小屋跡区間を歩くような感じです。


ここら辺はまだまだ序の口です。


今回は可能な限り両手を使わないで登ろう・・・等と、とても悪い事を目論んでいます。


この日はまだ誰も歩いていないようで足跡などの痕跡は一切なし。

登山口に残っていた足跡はどこに向かったんだろう?


ここの急登はなかなかでした。

所々路面が凍結していたので、もしも引き返すとなるとかなり注意して歩かないと危険です。

そして後方から人の声が聞こえてきました。

他にも登山客がいるみたいでホッとしました。


ほとんど崖みたいな急登です。

とりあえずここで後から登ってきたグループを先に行かせます。

スタッフXは一気に上って来たので、さすがに暑くなってきたらしい。

僕は相変わらずフリースの下に半袖Tシャツを一枚しか着ていないのですが、体温が上がってきた為に全身が痒い痒い病になっていて・・・

余りにも痒過ぎて集中力が散漫になるので、グループに道を譲ったというのが本音。

寒い日に体温が上がると全身の皮膚が痒くなるっていうのは、本当に拷問のような辛さで、冬場に走行会が億劫になった一番の理由がこれ。

いくら集中力を高めようとしても、痒過ぎて思考回路が混乱してしまうんです。

こうなってしまうと一度体温を上げ切って、レッドゾーンを超さないと落ち着かない。


しかし徐々に残雪が多くなってきて、体温を上げる要素が無い。

僕はスタッフXの体力に合わせたペースで歩いているので、実のところ呼吸も乱れていない。

だから痒くて悶絶しそうなのを必死に耐えています。


足場はかなり滑りやすさが増してきました。

痒くて自分の事で精一杯と言いたいところですが、スタッフXが安全に登れるルートを確保しながら歩いています。


とりあえず展望岩までは20分で登ってきました。


展望岩からはこれから登る大天井岳が一望できます。

険しい岩山だというのがこの写真からも判ります。

ちなみに雪彦山と言っているが、実際にはこの大天井岳に登るルートがこの山域のメインで、本来の雪彦山の山頂は一度下って北へ登った先にある。

ちなみにAコースはチェックポイントが18まであって、A-18を経てA-1のスタート地点まで戻る周回コース。

ここはまだA-3で、大天井岳の山頂がA-8となっています。


台風で倒れた木があります。


その影響でルートの左側はゴッソリと土を持っていかれています。


行者堂跡です。

ここも僧侶の修験場だったみたいです。


この辺りは比較的歩きやすかったです。


ここが概ね大天井岳までの登りの中間地点くらいなんでしょうね。

「ガンバレ」って木に書いています。


少し痒みが落ち着いてきた僕は・・・


ひょっこりはんができるくらいには余裕が戻ってきました。


しかしこの先はこんな感じで・・・

先日新しく買ったスカルパが雪道に弱かったので、こういう事も想定して穂高で使ったリーボックで今回歩いています。

昨年10月に凍結した北穂高~穂高岳山荘間の縦走ルートを踏破した靴って事もあり、今回は歩き慣れた靴を選択した次第です。


少なくとも大天井岳山頂までのルートは、このようにペイントによる道標が判りやすく施されているので迷う事は無かったです。


向こうに見える山も雪で真っ白です。

大天井岳の山頂付近は大丈夫だろうか?

少しずつ心配になってきました。


雪で少し滑りますが、こんな岩場も登って行きます。


僕のリーボックは防水が切れていたみたいで、徐々に雪が浸み込んで靴の中が冷たくなってきました。

霜焼けにならないようにできるだけ注意して歩きます。


そしてこの先からいよいよ道が危うくなってきました。


雰囲気的に大天井岳の取り付きに入った事が判ります。


今立っている所をロープ伝いに岩を下降して、向こうのロープを伝いながら雪に隠れた道らしからぬ道をトラバースしろって感じです。

ここでスタッフXが怖気付く。

山登りの経験は豊富ですが、岩稜帯や鎖場だらけの登山道は経験が浅いので、後ろ向きに岩場を下降するとかは慣れておらず、ただただ恐怖の模様。

引き返したいとも言われましたが、出雲岩にさえ辿り着いていない場所で引き返すなんて決断が早過ぎる。

確かに路面コンディションは良くないけど・・・

勇気ある撤退なのか?

どうなんだろう?

しばらく悩む。

僕は唐松岳~欅平~黒部ダムのルートに挑んだ際も台風の接近で撤退し、不帰の劔も3峰まで行って雨で撤退・・・

初めての穂高連峰では、新穂高~白出沢~奥穂高岳~ジャンダルム~西穂高岳~新穂高の日帰り縦走にチャレンジするも、白出沢の終盤で高山病になって穂高岳山荘に避難。

しかも翌日は高山病から完全に復活していないまま縦走できそうなら・・・と進んだものの、奥穂高岳山頂から馬の背を下って、ロバの耳を前にしたところで暴風雨に遭って撤退する。

2度目の穂高では北穂高で初冠雪による凍結で、大キレットの往復を断念。

奥穂高までの縦走は成功したけど、翌朝の寒さで頭痛が酷くなって西穂高までの縦走を断念して前穂高~岳沢ルートで下山。

天候や体調によるどうしようもない事情はあったけど、毎回撤退や断念してルート変更ばかりだと、さすがに自分の気持ちが納得できない。

それなのに今回は高低差で言えば摩耶山に登る程度の登山。

ちょっと残雪があるくらいで撤退なんてしたくない!

さすがに連敗のまま連敗を重ねるなんて、これ以上はプライドが許さないって思いました。

ただ、そんな意地が後にとんでもないピンチに陥る事になるなんて、本当に想像できなかったのです。


スタッフXも僕の性格を知っているだけに、半ばヤケクソでついてきました。

勿論一人で撤退するのもありだったのですが、スタッフXが撤退するのなら、一人で行かせるのは無理だとも感じていました。

そのくらいここまでの道も、雪と凍結により油断が出来ない路面コンディションだったのです。(崖のような場所の急登を下る訳ですからかなり危険です)

なのでM籏君から頂いたブルーレイで観た通り、山頂からの下山ルートで迂回路を通れば、きっとここよりは安全に下山できるだろう?という希望的観測に賭けている状態でした。

もし何度か雪彦山を歩いた経験のある人がここにいたら、きっと全力で制止したに違いありません!

今だから言える話ですが、撤退した方が100倍安全でした。


出雲岩が見えてきました!


右に進めば完全なロッククライミングルートなので今回は行けません。


オーバーハングした出雲岩の下は雪の積もっていない場所が多いので、スタッフXを落ち着かせる意味でもここで小休止を取る事に・・・。


「これどうやって登るの?」とスタッフX。

「さすがにハーネスもザイルもアブミも持って来ていないからここは登らないよ!この先に一般ルートが続いているんだよ。」


とか言いながらさりげなく・・・ロープ無しのフリーで登れやしないものかと、周りの岩に打ち込んでいるハーケンや、指や爪先を引っ掛けれそうな岩の裂け目や出っ張りを探してしまう僕・・・。


ここを登りに来たと思われる登山部や団体の落書きが無数に残っています。


何だか登れそうなルートも見つけたんだけど、指先でハーケンを掴みながらなので、途中で握力が死んだら終わりだなぁ~って、落下して死ぬ自分を想像してしまう。

「あ~怖っ!」


出雲岩って言うだけに、この祠は大国主神が祭られているのだろうか?

何となく今日はヤバそうだなぁ~って予感だけはしていたので、お賽銭を投げて手を合わせる。


この先に一般登山道の続きがある。

そろそろ行こうかと思ったら、先ほど道を譲ったグループ(外国人のカッコいいお兄さんと、日本人の美人なお姉さん)が戻って来た。

「この先は鎖場が続くんだけど、雪のせいで余計に冷えちゃって、鎖を握る手がかじかんで感覚が無くなちゃったの。だから今回は諦めて撤退しようかと・・・。」

それを聞いたスタッフXは撤退しないの?って顔で僕を見るのだけど・・・

「本当ですか?じゃあ行くだけ行って、僕も無理だと判断したら下山しま~す!」

そう言って僕は一度一人で偵察に行く事に・・・


ここから先でチムニー状に裂けた岩場を鎖伝いに登るらしい!

確かに鎖は冷たいが、僕もスタッフXもグローブは持参している。

鎖場の2~3ヵ所はどうってこともない!(知らぬという事は罪です。実際には10か所以上の鎖場やロープがありました。)


面白そう!って思ってしまった僕は、スタッフXを呼びに戻って続行を伝える。

今思えば僕の所業は鬼畜そのものです。


判りにくいですがチムニーの上部は狭く、しかも足場から足場までのリーチも長いので、スタッフXはひじやひざを駆使して全身で登ってきました。

僕でさえ「うそやろ?」って思うような登り方だったので、その怒りを越えた覚悟のようなものがヒシヒシと伝わってきました。

「こ、これは無事に下山しても、後でめちゃくちゃ怒られるだろうなぁ~。」

僕も後で怒られる覚悟を決める。

そしてさすがに僕も両手両足をフルに使わないと登れないくらい、この辺りから難易度が一気に増してきました。


更にここからは木の根のハシゴ区間。

凄まじい急斜面なので下を振り返るのは厳禁です。

転げ落ちたら出雲岩の上から落下します。


覗き岩の看板です。

出雲岩の真上を歩く感じなので、右側は切れ落ちた崖です。


注意のペイントがあります。

これは頭をぶつけないように注意!という意味もありますが、注意するのは足元です。

頭上の岩に気を取られていると・・・


道の右半分がございません。

ここが覗き岩ってやつで、崖の下を覗けるようになっています。

下が出雲岩って考えたら、落下したら命はありません。


間もなくセリ岩です。

この岩と岩の間を抜けて行くのがルートです。

しかしその前に見晴らし岩からの眺望を堪能します。


岩の先端に立てば素晴らしい景色です!

スタッフXはビビッてここまでは近づけない模様。

高所恐怖症なのに先端に立ってしまう僕。


左下の集落の辺りから登って来たのですが、ものすごく高低差を感じます。


これはスタッフXがセリ岩の前で撮った写真。

右側は切れ落ちた崖です。

怖いですねぇ~。


それではセリ岩の隙間を歩きましょう!

先にスタッフXが難なくクリア!

しかし僕は道幅がギリギリでリュックサックを少し擦りながら通過。


かなり狭いです。

ちなみに見晴らし岩から迂回路があるので、通れない方は迂回しましょう!

そしてトンネルを抜けたら・・・雪だった。


写真の向こうがセリ岩の出口。

ここからは足跡すらない雪道を進みます。


今ここを歩いているのは確実に我々だけです。


スタッフXの口数が極端に少なくなりました。


今来た道を振り返って撮影。

もはや道らしい道が判りません。


またしても木の根のハシゴ区間です。

さりげなくスタッフXの登山靴はビブラムソールだったりします。

さすがに装備は完璧ですね!


そしてまたチムニー状の鎖場です。


僕は鎖なんて使いません!って言いたいところですが、今回はかなり鎖やロープに助けられました。


そして馬の背の看板。

ここが大天井岳に登る最後の難関です!


これは今登ったチムニーを振り返って撮影。

結構な急斜面が連続しています。

これを一般登山道と言って良いのでしょうか?


そして足の踏み場が木の根っこしかないって急斜面からの・・・

この岩の隙間を越えた向こうは崖です!

落ちたら大変です!

ペイントや看板で左に曲がるように指示が出ています。


しかし看板に気付いていないスタッフXは足がすくんで立ち往生。


左のこの岩の上をよじ登って向こうへ渡ります。


本当に良く登ってきたものです。

帰りに同じ道を逆走するなんて・・・死んでもやりたくありません!


最後のロープを登ったら大天井岳の山頂です!

やっと登ったぞ~!

時間は13:53で、丁度2時間半で登ってきました。

本来なら1時間半で登れる山ですが・・・

このコンディションでは致し方ありません。




大天井岳・・・標高811mらしいです。


登ったまでは良いけど・・・


ここからの下山ルートよ・・・

雪が積もっているせいでどこを歩いて良いか判らないし、掴まる場所も判らないので、斜面を転げ落ちるしか・・・

いやいや無理です!崖から転落します。

僕もスタッフXも一瞬救助を呼ぶ事を連想しました。


下山ルートの方は更に雪深く、ルートが全く判りません!さっきまでは頻繁に見受けられたルート指示のペイントや看板が極端に減りました。

雪を掘って足場になる場所を探りながらでないと進めない箇所が多いです。

しかも垂直に限りなく近い斜面ばかり。

元来た道を戻るのも地獄・・・

雪が解けるまでビバーク?

無理無理!テントもないし、僕はフリースの下が半袖Tシャツだ!

こんな場所では下手に動けないので、じっと待っていると想定した場合・・・

明日の朝には凍死している事間違いなし状態です。


何とか最初の斜面は足場を探し回って下りました。

ずっとこんな緩やかな道だとありがたいのですが・・・


携帯の写真では上手く撮影できなかったのですが、木の枝に積った雪が落下してできた穴凹とは違う動物の足跡がありました。

鹿かなぁ?

しかし当然の事ですが・・・我々以外の人の足跡は一切ございません。

このコンディションは冬山装備をするには雪が少なくアイゼンもピッケルも役に立ちません!

しかし一般装備では不安しかない、初冠雪の穂高縦走路と同じく、最も難易度が高い状態である事は間違いありません。

せめてザイルとハーネスを装備していれば、もう少し大胆に下降できる場所もあったかなぁ~?って感じるレベル。


左手に天狗岩を見ながら進みます。


雪彦山山頂及び鹿ヶ壺方面へ下山する分岐ルートも見えてきましたが、山奥へ行けば行くほど雪が多くてルートファインディング(探索)に苦労しそうです。

しかし後で地図を見直して判った事だけど、この分岐を左へ進んだ方がBルートで虹ヶ滝方面へ迂回できて、いくらか安全なルートだったかも知れないのだ。

そもそも初めて登る山で選ぶコンディションではなかったという・・・後悔しか浮かんでこない。


当然分岐を左へ行かなかった我々の目前には、切れ落ちた崖が現れる。

雪が積もっていなければ僕はここを下るつもりでいましたが、まずはとっかかりになる岩も鎖も雪の下・・・

写真の木と木の間を抜けた向こうは・・・


実際にはこんな感じで切れ落ちているので、雪で滑った瞬間・・・死あるのみ!


看板には一般道の表示もあり、それがブルーレイで観た観た迂回路ってやつだと思うのですが・・・

どこをどう下っていいのか全く見当がつきません。

ペイントは全く見当たらないので、自力でルートを探すしかありません。

ここはミスしたら即死亡なので、スタッフXに安全な場所で待機してもらっている間にルート探し・・・

看板の左手から回り込んで・・・


ここを降りてきましたが、足場が狭く掴む所も少ないのでかなりドキドキしました。

片側は切れ落ちた斜面です。

木が生えているから写真では判りませんが、落ちたら救助が困難です。


道幅は30cm程度です。

目印になるペイントを探しています。


10m程斜面を下った所にペイントの記された木を発見!

この2本の木の間を抜けてから斜面を下ります。

とりあえずここまでは大丈夫なのでスタッフXを呼びに戻ります。


こうやって下から上を見上げたら歩けそうだなって思えるけど、上から下を覗いても雪で道の判別がつきません!

ひたすら恐怖です。

急斜面や切れ落ちた鎖場やロープの所は、基本的に僕が先に下って、安全に待機できる所を見つけてからスタッフXに下ってもらう。

スタッフXが滑落した場合、僕が受け止めるバリケードの役割です。

リアル『ファイト一発!』な状況。


ここで上級者ルートと合流しますが、上からだと足をかけるポイントが判別しないし、思いの外滑る岩だったので、スタッフXはズルズル滑りながら着地。

木の根っこには随分助けられました。


上級者ルートは写真左手から下ってくる感じです。

ロープも鎖も見えませんので正確なルートは判別できず。

むしろ一般ルートと上級者ルートの差って何?

大差ないんじゃないか?と思えるこのコンディション。


ここも道幅40~50cmほどですが・・・

向こうの倒れた木を乗り越えて斜面を下ります。


この通り下から見上げたら岩を階段みたいに降りれそうだと判断できますが、上からは雪しか見えません。


次はこの斜面を下りますが、スキー場の上級者ゲレンデよりも傾斜がきついのは、この写真でも判断できますよね?

この雪彦山(大天井岳)の下りルートは、鎖場の傾斜が概ね60~70度前後あります。

体感的にはほぼ垂直ですから、この雪で足場と掴む場所が判断できないと、絶対に下山できないと思えるくらい・・・とにかく恐怖です。


下から見上げたらこんな感じ。

ここは下から見てもルート選びに困ります。


ここの傾斜は更に急です。

倒木の間を抜けてロープを掴んで下ります。

さすがに僕のグローブもスタッフXのグローブも雪で濡れて冷えてきました。

足は霜焼け寸前です。(スタッフXの靴は防水がバッチリ効いていたらしい)


ここは倒木に沿って降りるべきか悩みましたが、掴まるところが見つからなかったので・・・


写真右側を下ってきました。

ここですら傾斜は45度以上あります。


どっちへどう下ったらいい?

また目印が無いので周りを見渡していたら・・・


不行岳が見えました。


間もなくこんな看板が現れました。

大天井岳まで25分?

ふざけんな!って叫びたい心境です。

下山を開始してからここまで1時間15分もかかったんですよ?

下りって事を考えたら1時間は余分に時間がかかった事になります。

ここから先が緩やかな下山道だと良いのですが・・・


で正面には地蔵岳。

ここの山頂に登ってお昼ご飯を食べたかったのですが、今の下山スピードを考えると寄り道している時間はありません。

僕でさえグロッキーな状況なので、スタッフXをまだ明るい時間帯に下山させる為には道草を食っている訳にはいかないのです。

それに気温も少し冷えてきたので、例え僕一人が登ったとしても、その間待機しているスタッフXは身体が冷えて、きっとこの後の下山に影響が出るだろう。


もうないだろうと思っていたのに、また強烈なロープ&鎖場が連続する。

雪が無くてドライなコンディションであればどうって事は無いけど・・・

さすがに僕も滅入ってきました。


そしてこれは今登るのを諦めた地蔵岳。

岩壁が雪で・・・これは登ったら登ったで下山が難しそうだ。


まあこんな感じで・・・地蔵岳は250mくらいの落差のある壁なので、落ちたらひとたまりもありません。


しかし岩の上は凍結して滑るので、しっかりとしたグリップの道は皆無です。

鎖に掴まりながら雪を掘って足場の確保をしています。


ここが最後の難関でした。

写真の左上からほぼ垂直な壁を下って山の斜面に沿ってトラバースする区間です。

滑り落ちると大けがは必至です。


晴れていたらこんな感じの道ですが、雪で隠れたロープや鎖を手探りで探して、足場のシッカリした所を探りながら歩くのは疲れました。


雪のせいで写真ではそれほど怖そうに見えないのが悔しいですが、実際に歩くのはかなりの地獄でした。

そして僕の携帯電話の電池がここで切れてしまう。

寒さでバッテリーの消耗が激しかった模様。

これで遭難なんてやらかしたら一巻の終わりです。

いつものような単独行じゃなくて本当に良かった。


スタッフXは無事に下山する事に精一杯で写真どころではなく、逆にバッテリーは十分残っていました。


しばらくロープ伝いのトラバースが続いた後、ここ虹ヶ滝に到着しました!

時間は16:00

しかしここで滝を横断するルートが雪で滑りやすくなっており、無事に迂回できそうなルートを探して向こう岸に渡るのに随分苦労しました。

滝を通過した所でルートは一旦また登りに差し掛かります。

ここでストックを突きながら歩いた人の痕跡を発見!

随分前についた痕跡だったので、恐らくこれが我々よりも早い時間に入山していた足跡の正体じゃないかと感じました。

恐らく虹ヶ滝より先の積雪を見て撤退したものだと思われます。

ここでA-14ポイントなので、A-18まであと少しです。

もしくはA-16の大曲というポイントから展望台経由で賀野神社へ向かう車道へ抜ける離脱ルートがある。

そこから車道に出れば距離は増すけど安全に下山が出来る。

この先のルートが相変わらず酷いようなら離脱も考えよう!

そう思いながら歩きました。


面白い山でしたが、いつものような単独ではなかったので尚更の事、今までにない程強烈な緊張感を強いられました。

ここまでの下山ルートで少なくとも3度は「どっちかが・・・或いは2人とも死ぬかも知れない。」って予感を意識しながら、必死に自分自身と闘っていました。

気軽な気持ちで「撮影よろしく!」なんて言って、スタッフXに声を掛けてしまった事を本当に後悔しながら歩いた懺悔の山行です。

大曲まではなだらかな林道だったので、スタッフXも随分とゆとりが戻ってきました。

離脱コースもあるけど・・・って選択権を与えたのですが、Aコースの踏破を選択したので最後まで気を抜かずに歩く事を改めて決意。

しかし大曲から下って間もなくから、沢歩きか?と思えるようなルートになってきたので選択ミスだとまたしても後悔!

結局ここの川を4度も渡った事になる。

滑りやすい岩をスピーディーに飛んで渡れる僕とは違って、スタッフXは確実に渡れるルートじゃないと歩けないので、安全な岩を探しながらルートを指示して・・・

結局A-18を通過して登山口に帰って来たのは17:25でした。

まさかの6時間!

お昼ご飯も食べずに踏破しました。

通常の倍以上は時間がかかったと思いますが・・・

あの絶体絶命の状態からよく下山が出来たなぁ~という気持ちでいっぱい。

初冠雪の穂高縦走を経験した僕でさえ、神経が衰弱してギリギリの気力と根性で下山してきた訳で・・・

それにしても明るいうちに下山できて良かったです。

この後30分もしないうちに辺りは真っ暗になってしまいましたから。

スタッフX・・・よくぞここまで頑張りました。

「こんなにも自分の能力以上の事をしたのは生まれて初めてだ!」と言って、やはり僕は怒られました。

ちなみに僕は限界以上に神経を擦り減らしはしたものの、体力的にはペースを抑えていた分余力があったので、帰りは車を運転する事にしたのですが・・・

6時間歩いたうちの少なくとも4時間くらいは緊張しっぱなしだった事もあり・・・

その緊張感が緩んだ瞬間「あかん!両足が攣ってしまった!」

吉川インターを降りた付近から、両足が攣ったまま必死に耐えて・・・

なんとか北町のコープデイズまで走り切りました。

そこで運転を交代してリタイア!

濡れた靴で両足を冷やし、霜焼けになってしまったのも原因なのかも知れません。


今回も活躍してくれたリーボックですが、中までびしょ濡れです。

雪の下に水たまりという罠に2度ハマって、両足の靴の中に水が入ったのが原因。

霜焼けになった僕の足はお風呂に入って回復しました。

しかし全身アザだらけになったスタッフXは、向こう3日間全身筋肉痛に苦しんだそうです。

本当に・・・本当にお疲れ様でした・・・(汗)

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