この日は走行会組と登山部組とで分かれてスタートしました。
例の如く灘丸山公園まで車で移動して、そこからのスタート!
沢沿いのルートで進みます。
今回は僕とアキラ君の2人で登山部。
アキラ君はハイキングも数える程度しか経験がないそうで、今日はついて来れるか本人もドキドキの参加です。
長年サッカーで鍛えたアキラ君・・・体力的には問題なさそうですが、登山のセンスというのは体力的な問題以外にも色々ございまして・・・
彼の適性を知る上でも、ここのルートは最高のテストコースです。
一部こういった階段が整備されている箇所があるのだけど、登山用に設けられた階段ではないと思われます。
大半は階段すらない、落ち葉まみれの滑りやすい急斜面を歩きます。
堰堤の横を越えて進みます。
この上へ登って行者小屋の横を抜けるまでは、前回も間違ってはいませんでした。
既に秘境感たっぷりの場所ではあります。
行者小屋は万が一天候が悪くなった場合の避難小屋としても使えそうですが、正直こんな寂しい場所に留まっていたくはないですよね?
行者小屋を抜けると岩場です。
ここからは下界の景色が望めます。
恐らくこの先で道が分岐しているものと、僕は分析しています。
今回は落ち着いて周りを見渡します。
これってどこに繋がっているんだろう?
しかしスリットダムとゴルジュ帯が存在する場所は、僕の予想では不動滝の流れに沿った場所だと確信しているので左側を見てみる。
すると間もなくこんな堰堤にぶち当たります。
この堰堤を右に巻いて登ります。
後ろを歩くアキラ君は今のところ余裕の笑顔です。
堰堤の上からは廃墟の女王と呼ばれる摩耶観光ホテルが見えました。
堰堤を越えて裏側へ下ります。
これまたどこを向いて歩けばいいんだろう?って場所ですが、ここでは沢沿いに歩くっていうのが原則です。
沢の色から判断できるのは、ここの水源は鉄分を多く含んでいるって事。
六甲山系は有馬温泉の金泉など、鉄分が豊富な地質なんです。
丁度この辺りで僕の耳に「うふふふ・・・。」って、若い女性の笑い声が聞こえて、慌てて周りを見渡す。
明らかに半径5m以内の声。
でも何もいないし、他に歩いている登山者も見当たらない。
気のせいかなぁ?と自分に言い聞かせて歩き出したら。
「店長?今なんか女の人の笑い声が聞こえませんでした?」とアキラ君。
渓谷を歩くと時々吹き込む風の音が、人の声や笑い声に聞こえなくもない事が稀にある。
でも今回のはあまりにリアルな女性の笑い声だった。
ちなみに僕とアキラ君では少し距離も離れているし、渓谷の地形に対して向いている方向も違っていた。
その場合、風の音だったら多少違って聞こえているはずなのに、彼も若い女性の「うふふふ・・・。」って笑い声だったという。
炭が谷道での過去の経験も考えると、決して気のせいではない事もある訳で・・・。
さすがにちょっと薄気味悪い気持ちになる。
ここの段差は左手にロープが設置されていました。
まあロープを使うか使わないかは人それぞれ・・・
アキラ君は僕に習って使わずに登ろうとしたのですが、途中で「やっぱりロープ使います!」って・・・(笑)
左手にも支流らしき分岐があるので、どっちに進むのが正しいのやら・・・
とりあえず本流を少し進んでみよう!
すると間もなく目的のスリットダムが姿を現しました。
ここは段差(滝)の右岸から登って左岸へ飛び移ります。
僕がやったのを見てアキラ君も同じように真似しようと構えます。
上手く成功したので嬉しそうなアキラ君。
ようやく自力でこのスリットダムの場所を突き止めました。
石造りの重厚な堰堤に建造物としての歴史やロマンを感じてしまう。
真ん中がスリットになっている堰堤なんて僕は初めて見たのですが、流量をコントロールする為の役割があるんでしょうね。
ここの本流は都賀川(大石川)といって、大雨の時は鉄砲水の被害も出る事で、地元ではよく知られている川です。
このルートを歩いていると、無数の堰堤を越えるのですが、それでいて鉄砲水が発生するシステムっていうのが気になってしまいますが・・・。
ワクワクする瞬間です。
靴が濡れないように岩やハシゴが用意されています。
といってもバランスを取りながら慎重に岩を渡らないといけません。
アキラ君はポケットに両手を突っ込んで僕の歩き方を見ています。
余裕の構えですね。(笑)
そして僕の靴は購入したばかりのスカルパ。
ローカットだけど安定感があって、今のところは歩きやすい。
靴紐を結ぶ手間の要らない靴なので履きやすいが、馴染んでくるまで若干時間がかかるのがやや難点。
それにしても想像以上に奥深い。
随分と厚みのある堰堤です。
高さもそこそこあります。
本当に不思議な風景です。
ちなみにこの堰堤の上に登ろうと思えば、一応可能にはなっています。
ただ僕とアキラ君は、先ほどの不可解な女性の笑い声の事を、多少ながらも気にはしているので、今回は寄り道なしで先へ進みます。
沢はほぼ枯れていますが、ガレているのでだんだん歩き難くなります。
しかし周りは更に鬱蒼として不気味になってきました。
ゴルジュです。
ゴルジュ帯というのは両側を岩壁に囲まれた渓谷の事を指す名称で、規模の大小に関わらずそう呼ぶそうです。
ここは沢の流れが確認できます。
足元に注意しながら歩きましょう。
ゴルジュと呼ばれるだけの事はあります。
振り返って撮影をすれば特に岩壁の渓谷感が判りやすいです。
こうやって見たら神秘的且つ綺麗な渓谷でしょ?
直後に突然寒そうにするアキラ君。
「何や、寒かったんかい!」
スポーツマンなのにへなちょこです。(笑)
真っ直ぐ行くか・・・左に行くか・・・
それで運命が多少変わります。
過去にここへ来た人のブログによると、左は危険でタフなルートになるらしい。
真っ直ぐ進むのがセオリーだそうです。
既に真っ直ぐ向かった所のゴルジュ帯の脱出口が見えています。
そしてここを左に向かうと、いくつも堰堤を越えて、最後に大きな岩場を登ってロープウェイの支柱に出て、そこから山寺尾根に合流するらしい。
アキラ君は「どうせここまで来たなら険しいルートにしましょうよ!」って言うんだけれど、まずは基本のルートを知っておきたいので、僕は真っ直ぐ進む方を選択。
一応これは左のルート。
で、こっちは真っ直ぐのルート。
こうやって見比べたら左のルートの方が簡単そうに思えるのだけど・・・。
ロープが何箇所かにあって、どこを登ってもいいのだろうけど、これがまたどこも楽に登れそうもないって言うのが難所である所以。
夏だったらここも悪くないけど、寒い時には登りたくないルートです。
で、こちらが正規のルートで間違いないはずなのですが・・・
この写真で見たら簡単に登れそうでしょ?
実はロープが無かったらまず登れないっていうくらい、とっかかりのきっかけすら見つからない斜面です。
余程の難所じゃなければロープなんて使わない!っていうのが僕のポリシーなんですけど、さすがにここはじっくり登れそうなルートを探している時間も無かったので、今回は素直にロープを使って登攀。
とりあえずゴルジュ帯の写真を見納めにもう一枚撮影!
これはアキラ君が撮影した動画ですが、再生できなかったらごめんなさい。
僕がアキラ君に対してへっぴり腰にならないように登れ!と、偉そうに解説しながら登っているところです。
この通り難所の斜面は見た目以上で、上から見下ろしたらほぼ垂直です。
アキラ君・・・必死の形相で登ってきます。
僕は補助の為にアキラ君が登り切るまで待機。
沢は右斜め方向に延びていますが、掴む所も少なく滑り易そうな急斜面です。
正面はもっと強烈な急斜面なので、できれば右へと進みたい。
写真では判りにくいですが、この写真の手前の陽が当たっている付近・・・
土が柔らかくて、崩れて滑ります。
向こうの木まで一気に登れば、あとは樹木伝いに進めそうですが、僕が行けてもアキラ君が行けるかどうか・・・。
なので諦めて・・・正面の超急斜面をひたすらよじ登るルートを選択。
勢いをつけて駆け上がり、木の根元に飛びついて登らないといけない箇所もあり・・・
ここはかなりデンジャラスなルートです。
こんな感じで安全な場所に着く度に後ろを振り返るアキラ君。
登ってきた斜面のきつさを改めて確かめ、「うわっ!怖すぎる~!よくこんな所を登って来れたなぁ~。」と言ってブルブル震えています。
そして余りにも急斜面が続くので、体力的にも精神的にも疲れてきたアキラ君・・・
いやいや、頑張れよ十代!(笑)
実はここに至るまでに3度も落石を発生させたアキラ君。
1度は滑ってうつ伏せた状態で滑落しました。
後ろを歩いている人がいなくて本当に良かったと思います。
アキラ君も無傷でしたのでホッとしました。
一応落石の度に「落(らく)~っ!」と叫んで、万が一の対処はしていましたが・・・
やはり登山初心者のアキラ君は足の動きがまだ粗削りなんですよね。
踏み切った足を真っ直ぐ持ち上げずに、そのまま後ろに蹴ってしまうんです。
例えば致し方なく浮石を踏んだ場合、次の一歩に進んだらそろりと浮石を踏んだ足を持ち上げるじゃないですか?
それを勢いつけて蹴り飛ばしてしまうんですね。
「まだまだ穂高や剣岳には連れて行けないなぁ~。」
等と言って、2人で笑いながら登り続ける。
このような岩場が増えてきます。
本来なら喜ぶところですが、斜面が急なのに対して浮石も多く、所々脆い箇所もあったので、むやみやたらと掴んだり足を掛けたりできません。
かなり緊張感を強いられます。
こういう所は安心してよじ登れます。
木や岩に感謝しながら登りましょう!
しかし見た目以上に急なので、確実に手足をホールドできるルートを冷静に見つけて登りましょう。
ここは左から回り込んで登った方が安全でした。
時々斜度が緩くなって油断するのですが・・・
まだまだ先が見えないし、そもそもここは道無き道なので、正規の登山道に出るまではひたすら登るしかない・・・まるで試練のような道中です。
しかし山頂に近くなってきたからなのか、チラホラと雪が目に付くようになりました。
ここの木にも吹き付けられた雪が付着しています。
ゴルジュ帯を抜けた後の道ってこんなに険しかったかな?
ネットで参考にしたブログとは全く違うルートを歩いています。
だんだん雪も多くなってきました。
木の上からもパラパラと積った雪が落ちてきます。
僕は首筋から背中に雪が入ってしまい、さすがに寒さを感じるようになってきました。
六甲山の方角です。
こうやって見たら・・・もう随分標高の上がった事が理解できます。
現在地で既に標高600m以上まで登ってきているはずです。
海や街も一望・・・って、松の木に邪魔をされています。
とりあえず尾根に出たっぽいので安心しました。
言っているうちに山寺尾根の登山道に合流できそうです。
最後の岩場です。
ここはロープウェイの支柱です。
つまりいつの間にか危険な方のルートと合流していた事になります。
むしろ今登ってきた傾斜を考えると更に危険なルートで登ってきた訳で・・・
アキラ君・・・よく頑張ったなぁ~!
ここで標高650mくらいあります。
せっかく登ってきたのに少し下ります。
ちなみに現在地は既に山寺尾根に合流しているのですが・・・
余りにも荒れた道だったので、僕にはここが山寺尾根だという確信が持てず、更に斜面を登り続けて行く事に・・・。
でも途中で気付きました。
気付いたけど「もういいや!このまま掬星台まで登っちまおう!」
で、本来なら山寺尾根を下ってすぐに下山するつもりが・・・掬星台に到着~っ!
ちゃんと登った証拠に「アキラ登頂!」の落書き。
もう9:40ですよ!
ここまで2時間以上もかかりました。
10:00まで待ってロープウェイとケーブルで下山しようかと思ったのですが・・・
「よし!猛スピードで山寺尾根を駆け下りるぞ!」
ということにしました。
実はアキラ君、既に脚が疲れて・・・生まれたての小鹿のようにプルプルだったそうです。(笑)
しばらくはこんな雪の残った尾根道を走りました。
アプローチ用の登山靴なので、そこそこの悪路も歩けるはず・・・なんですが、一部雪で滑る箇所がありました。
ビブラムソール無敵説は必ずしも100%じゃないって結論です。
ただし山寺尾根の下りでも足首を捻る事なく走れたので、靴の安定感は抜群だったと思います。
アキラ君は下りで両足が滑って尻もちをついていました。(笑)
相当疲れていたんでしょうね。
でもってお店には10:50に到着。
アキラ君は10:30からの出勤でしたが、今回の遅刻は致し方なしですね。
また次回の登山部も楽しく登りたいと思います!
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