これは9月20日(火)の夜、急遽当日予約で宿泊する事になった純和風旅館での、世にも奇妙な体験談です。
僕は雨の唐松岳を単独で登って下山してきた際、低体温症になったにも関わらず、とっても浮かれていました。
日帰りの登山にて累計で7羽の雷鳥に出会い、更には行きも帰りも雷鳥に道案内をされるという、例え偶然が重なっただけだとしても奇跡的な体験をした上に、下山する際に話しかけられた方にその話をすると・・・「すごいねぇ。雷鳥と出会うだけでもいい事があるって言われてるんだよ!それはよかったねぇ。」と、3人に声を掛けられて3人共に同じような事を言われ・・・
「それってすごくラッキーな出来事だったんだ~!」と、意気揚々としていた訳なんですよ。
そしてスタッフXにお願いして宿泊できる温泉旅館を探してもらい・・・
1万円未満で泊まれて、しかも風呂付の広いお部屋に会席料理。
「何から何までラッキーじゃないか!」
そんな流れで到着したお宿・・・
最初玄関を入った時に元気良く出迎えて下さった仲居さん・・・
すごく元気で対応も良かったので、第一印象は素晴らしかった訳ですよ。
その後ロビーで受付対応をして下さったのが、恐らくは若女将・・・
若女将はとても美人で物腰の柔らかい言葉遣い・・・
そこまでは全て良かったんです。
僕が『行き倒れ寸前の死にかけ登山客』に見えたのか、『拾われてきたびしょ濡れの捨て猫』に見えたのかどうかは定かではありませんが・・・(笑)
ものすごくお気遣いをして下さって、あれこれお声掛け下さった訳ですよ。
ところが物腰柔らかな口調というのは、日頃使い慣れていないと必ず長話でボロが出てしまうものなんです。
途中から「もう謙譲語とか丁寧語とか、無理して使わんで下さい!」と言いたくなるくらい。不自然な言葉に聞こえてくるものなので・・・
きっとしゃべっている本人も違和感を感じているだろうし、僕もだんだん聞き取って的確に答えるのが辛くなってくるんですね。
ただ・・・ご好意で元気付けようとして下さっているのは理解できたので、その時は余り気にしてなかったんですよ。
気になったのはお部屋を案内して下さったベテランの方(後に大女将だという事が判明)なんですが、この方も親切にしてはくれるのですが、とにかく笑い声がけたたましいので、違和感が半端無いというか・・・
それも自然に笑う所であればいいのですが、完全にキャラを作っている感があって・・・不自然。
「あっ、俺・・・この人ちょっと苦手かも・・・。」そう思えた辺りから、色々と気になり始める。
尚、僕の泊まるお部屋は入ってすぐ、トイレと洗面所とお風呂があって・・・
障子を開けると10畳の和室、板の間も2.5畳分はある。
更に奥には2畳強くらいのサンルームがあって、中庭を楽しめる。
まず気になったポイントは、チェックインしたばかりなのに、既に1人分の布団が敷いてあった事。
通常は夕食や温泉に行っている間に敷きに来て頂くというのが多いので、僕には不思議でならなかった。
その理由は?
スタッフの人数が不足しているから、夕食のタイミングにメイキング専属で客室へ派遣できる人がいないから、それならチェックインの前にあらかじめ準備をしている方が、スタッフの労働時間も遊びが発生しにくい・・・
そんな感じでしょうか。
ちなみに登山帰りの僕としては、先に布団が敷いてあるのはむしろありがたいくらいなんです。
しかしどうしても違和感。
なぜなら敷いている位置!
板の間を合わせると12.5畳もある和室の、よりによって壁際の一番隅っこに、枕を北向きに敷いているとか絶対に有り得ないと思うんですよ。
温泉で温もった後、既に夕食の時間が近付いてはいましたが、僕はその布団に入ろうとする。
すると右手サンルーム側に鏡台がございまして・・・
サンルームの反対側を映している訳ですよ。
そこには板の間の延長になる位置なんですが、ロッカーがあって服をかけたり、浴衣が置いてあったりする訳なんですけど・・・
ロッカーの扉・・・ちゃんと閉まらないんです。(汗)
つまり布団に入ると、鏡越しにロッカーが見えて、ロッカーの扉の隙間から奥も見えたりする訳で・・・
「これって何気無しに鏡を見たら、あの隙間から何かがこちらを窺っている・・・そんなシチュエーションを狙ったフォーメーションやないか!」(汗)
とりあえず濡れたタオルを干す場所がなかったので、鏡にかけて何も映らないようにする。
次に布団の位置を直そうとするが、その前に部屋の真ん中にあるテーブルを移動する。
「げっ!何だこれ?」
テーブルを退けたらそこにはまだ新しい血溜まりの痕跡があった。(汗)
畳はまだ青々として新しい。
部屋に入ったら畳の匂いがするくらいのレベル。
それなのに、ここまでの血痕・・・痕が残らないようになぜ、さっさと拭き取らなかったのか?
畳の中に染み込んで全て綺麗に拭き取れておらず、血溜まりの輪郭がくっきり残っている。
手で触って付くことは無かったけれど・・・
一体ここで何があったのかメチャクチャ気になるじゃないか!
この時点で仲居さんを呼んでクレームをつけなかった事を、今思えばなぜ当たり前の権利を行使しなかったのか?と後悔。
一応『訳あり物件』とは聞いていたけど・・・
当時の自分の心理状態は『ただただ混乱』って感じでした。(笑)
血痕の上に寝るのはちょっとどうかと思いましたが、目につくよりはいいですし・・・できれば枕は南向きにしてテレビ(北側に設置)を観ながら寝れるようにしたかったので・・・
そうなると部屋の真ん中に布団を敷くのが自然かと。
そして布団を移動・・・
「はぁ~っ?どういう事?」
今度は元々布団を敷いていた場所に返り血のような、無数の血痕が飛び散っていた。(汗)
「一体何なんだ?ここで何があったの?殺人か?自殺か?それとも・・・いけないプレイか?」(笑)
テレビの前とかにも、小さな血痕が点々と・・・
それでもロビーに内線をかけなかったのは何故だったのか?
あの大女将に部屋の中に入って欲しくなかったから・・・なのか?
今となっては、もはやどうでもいい事なんですが・・・
写真撮影?怖くてできるか!
もしも写ってはいけない何かが写ったら?
少なくとも現在・・・
部屋の中で重たい空気や気配は感じられなかったので、正直そこまで嫌な感じはしなかった。
だからと言ってそんな理由じゃ、普通の神経だったら部屋を変えてもらうか、宿を移るだろう?と思えるこの状況で、一切のクレームも出さずに泊まろうとしている、僕の神経の図太さを説明できないのですが。
とりあえず夕食を食べに食堂へ移動する。
やはり最初に挨拶してくれた仲居さんと、大女将の2人しかいない。(台風だからかも知れないがスタッフさんが少ない)
夕食のセッティングでどうやら揉めている様子。
部屋番号と座席の場所と、人数の組み合わせが違うとか・・・
それぞれが聞いている情報と、その解釈の仕方に相違がある模様。
それって情報元の落とし込みに問題があるんじゃないの?
だったら再度確認の為、速やかにロビーへ内線すべきじゃないだろうか?
少なくとも仲居さんは先程から一人でテキパキと頑張っておられます。
遅れて来た大女将には、もう少し思いやりのある指摘をして頂きたかった。
既に僕の頭の中でここの人間関係図が出来上がりつつある。
そしてその言い合いになっていた座席に座る予定のお客様方が、間も無く入室してくるのである。
部屋番号は別だが、仲居さんのおっしゃっていた通り、2人と1人は同じ仲間の模様。
大女将の指示で離した座席を再びくっつける。
頼む・・・穏やかに食事を楽しませてくれ・・・(涙)
食事は美味しかったです。
ただ隣の席の3人のお客様たちが騒がしかったのは・・・若干気になったけど。
僕はすき焼き鍋と和会席だったんですけど、隣の3人のうち2人は連泊で、2泊目の人はメニューが違うって話だったそうです。
ところがセッティングされていたのはすき焼き鍋が2名分と別メニュー1名分だったらしく、1人のお客様が「お姉さん!俺・・・昨日と食事の内容が一緒なんだけど・・・。」と言ったら、大女将が来たのですが・・・
「あら?そうだったかしら?あはははははは!これはごめんなさいねぇ!いや、参った!まあ文句言わずに食べてよね!あはははははは!」
思わず耳を疑ってしまった。
食事は美味しかったから、例えば僕だったら、もし間違って同じメニューを出されても、然るべき謝罪の言葉があれば全然許します。
しかしあのけたたましい笑いで開き直られてしまうと、さすがに「オイオイ!」って気持ちになってしまう。
大丈夫か?ここの旅館・・・ってね。
ますます仲居さんの心労を察します。
そんな事もあってその3人のお客様はやれ「米が固ぇな。水が少ないんじゃないか?」だの、「せっかくいい米を使っているのに、こんな炊き方じゃもったいねぇ。」だの言い始め・・・
僕は元々硬めが好きなので十分満足なんですが、こんな会話を聞きながら食べるのは辛いです。
何よりも大女将は向こうのお客様を応対する時と、僕の応対をする態度が違い過ぎて・・・
「今日は雨の中寒かったでしょ?お茶の熱いの用意するから、ちゃんと身体を温めてね。」とか、「ご飯のお代わり、足りなかったら追加を持ってくるでね。ちゃんと声をかけてね!」などと、ものすごく親切なのである。
嬉しいけどとても複雑だ・・・。
それだけに部屋の畳に血痕があった事とか下手に話せない。
一番返ってきて欲しくない返答は「あら?あなた、あれが見えちゃったんですか?」とか、「見てしまったんですね?」って言葉。
更には「心配じゃったら一緒に寝てあげようか?」等と言われたら・・・
何だか普通にそう返されるんじゃないかと思うと、怖くて余計に聞けない・・・。
「今日俺は何も見なかったし、何も聞かないし、何も知らない、知る由も無い!」
そう言い聞かせて部屋に戻るが、やはり落ち着かない。
大女将といい若女将といい、キャラを作り過ぎている感じが気になるのもあるが、部屋の血痕の原因とか完全に消えていない理由・・・
そしてもう一つ廊下のショーケースに飾ってある掛け軸。
3枚飾っている掛け軸の一番右の女性を書いた絵が、どうにも気になる。引っかかる。
間違いなく強い念が込められている。
目線は合わないが、ずっと見られているような感じだ。
そして右から3番目の絵からは特に何も感じなかったものの、ふと見たら子供が生首を持っている絵だった。
「なんでこんな絵を飾っているの?」
頭の中が「???????」
もはや恐怖しかない。
しばらく車で出かける。
コンビニで時間を潰したり、鹿島川沿いの遊歩道を散歩したり・・・
でも雨に濡れて寒くなってきたので、結局旅館に戻る。
若女将・・・相変わらずゼンマイ仕掛けのからくり人形のように、不自然な丁寧語と謙譲語を使って話すので、僕は非常に心苦しい。
「お願いだから普通にしゃべって下さい!バリバリの河内弁でも俺は受け入れますから!」
心の叫びである。
そして一番右の絵画に「ただいま戻りました。」と声をかけて部屋に戻り・・・
「これからもう一度温泉に浸かって参ります。」と声をかけてから、江戸っ子温泉に入って・・・
「いい湯でした。おやすみなさいませ。」と声をかけて、また部屋に戻る。
3枚目の絵・・・恐くて直視できない。(笑)
そしてテレビをつけると大町市内で川に流されて1名お亡くなりになったとか・・・
さっき河川敷・・・歩いていたんですけど。
そういえば夕方のラジオで『特急しなの』と『特急あずさ』が台風で止まったと聞いていたのですが、そんなに大そうな天候だったか?と聞かれたら、決してそんな事は無かった。
台風16号って何者ですか?
そして今、自分の置かれている状況・・・これって何かピンチなんですか?
落ち着かない。
油断して寝ていたら、大女将がロッカーから出てきたりしないだろうか?
屋根から血が滴ってこないだろうか?
色々な不安が脳裏を過ぎる。
恐過ぎて結局、朝までテレビと電気をつけっ放しで寝てしまった。(笑)
朝も恐くて部屋のお風呂を使う事さえできなかった。(笑)
こんなにビビッたのは久しぶり。
それなのに・・・
部屋から出て廊下が明るくなったので、じっくりと3枚目の絵を見てみたら、岩の陰から顔を覗かせている子供の頭を、まるで掴んでいるかのように見える子供の絵だった・・・そんなオチが待っていたのである。
チャンチャン!
朝御飯も美味しゅうございました。
若女将節は最後まで変わらずでしたが・・・
結局何だったんだろう?
でも妙に味わいがあって、嫌いじゃなかったな・・・今回のお宿。
そして外はまだシトシト雨が降っていましたが、明るさから想像すると台風って・・・
するとニュースで・・・「台風16号は温帯低気圧に変わり・・・。」
「はあ?何それ?ふざけんなよ~!」
僕は急いでチェックアウトし、扇沢へ向かいました。
チケット売り場に水平歩道は歩けるかを尋ねたところ・・・
「こちらでは判らないので、黒部ダムで確認して下さい!」
「マジか~!」
トロリーバスの往復運賃・・・「高いのになぁ。」・・・と思いつつも、行かないで後悔するくらいなら行こう!
そして黒部ダムの駅員さんに聞いてみたら・・・
「台風の影響で水量が増えているし、ダムの放水もしているから、くれぐれも足元だけは気を付けてね!」
そう言って僕の服装をチェックする。
今日の荷物はカメラだけ。
そしてシューズはランニングシューズ(底はツルツル)!
「とりあえず他のお客さんがみんな行ってから、向こうに行ってね。」
水平歩道への道は一般の方が行くには危険が一杯なので、そこは徹底しておられる模様!
バス乗り場の奥にこんな隠された通路があるのだ。
そして携帯電話のカメラ機能が復活した!
まだ浸水した水が抜け切っていないが、一度電源を落として立ち上げたらエラーが消えた。
こいつも一体何だったんだろう?
この従業員さん用のトイレの前を通り抜けると・・・
山の上はこの通り青空!
「てめぇ!台風、このバカ野郎~っ!」
思わず全開で叫んでしまった。
こんなに天候が回復されたら・・・
昨日の苦労と計画変更は何だったんだろう?って話になりますよね?
まあそうはいっても次回・・・気を取り直して水平歩道・・・お楽しみに!
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