2019年11月20日水曜日

今年初の奥穂高岳登山・・・その⑥~紅葉の涸沢と言えば渋滞!そして高齢登山者の多さに危険を感じる~


9:32

このMAPの点線の通り、穂高岳山荘から涸沢小屋まで下ってきた僕は、ここでおにぎり休憩を取る。

朝ご飯・・・お代わりとか遠慮して早く席を立ってしまったからなぁ~。

もうエネルギーが枯渇してお腹ペッコペコ!

用意していたペットボトルのポカリスエットも飲み切ってしまった。

ここで穂高岳山荘で仲良くなったご夫婦に声を掛けられる。

「あら?またお会いしましたね!その節は色々と教えて下さってありがとうございました。」

「あ~っ!お疲れ様です!こちらこそお世話になりました。結局こっちに下るルートしかまともに歩けそうもなかったので、僕も上高地を目指して歩きます。」

「その判断で正解だと思うよ。すごい風だったもんねぇ~。」

昨夜お二人が山荘での生活に戸惑っておられた際に声掛けして知っていたのですが、昨夜と違ってフル装備してヘルメットまで被っている僕に、よく気が付いて声を掛けてくれたなぁ~って感動しました。


そしてお二人は「我々は歩くのが遅いので、先に失礼致します!」って下山していきました。


僕は昨年の思い出に浸りつつ、バスの乗り換えについて調べたり・・・35分くらいここに滞在しました。


標高2700m以上はガスで全く見えません!


涸沢小屋の向こうに見えるザイテングラード取り付き付近までがギリギリ視認できる状況です。


こっちは北穂高岳方面・・・左が南稜で、右が東稜です。


何度も振り向いて目に焼き付ける。

ここまで来ると山への未練で、下山するのがもったいない気持ちになるのだ。


涸沢ヒュッテと前穂高岳の北尾根方面。

この日はパノラマコースで帰るっていう手段もあるのだけど・・・迷い中。


とりあえず涸沢カールへお辞儀をして下山。


今度はまた北穂高岳にも行きたい。

東稜をフリーで登るか・・・大キレットか・・・

またあの美味しいコーヒーとカレーライスが食べたいなぁ~。


ここまで下ってくるともう常念岳は見えなくなる。

遠くに見える稜線は東天井岳と横通岳・・・1ヶ月前にM籏君が歩いた稜線ですね。


そう・・・右手に見える屏風の頭と屏風の耳。

例えそこまで寄り道しなくても、手前の屏風のコルを右へ通過して山を下れば、新村橋まで抜ける事ができる『パノラマコース』には、最後まで行くか行かないかで悩みました。

しかし初めてのルートって時間も読めないし、一応パノラマコースは点線ルートなので、バリエーションとまでは言わないけど上級者向きルートに指定されている。

とりあえず今回は無難に横尾へ下山するルートで歩く。

標準コースタイムは2時間ジャストだ。

ところで・・・ちょっとここらの標準コースタイムは速過ぎに感じるのだけど?

ザイテンの下りも穂高岳山荘から涸沢小屋まで1時間半って、まんま標準コースタイムですから。

ザイテンでは仮に他の登山者がいなくてスピーディーに歩いていたとしても、僕の場合はあと15~20分くらいしかタイムを短縮できなかったんじゃないかなぁ?

だからここの標準コースタイムを目安にして登山計画を立てるっていうのは・・・一般の登山者にはかなり無謀なスケジュールになると思うんですよ。

横尾から涸沢小屋まで標準コースタイム3時間ですけど、昨年僕はまさにそのタイムで登っています。

それもかなりハードでした。

一般の人がそれをやったら脚がもたないか、心臓が破裂するかしますよ?

ちょっと見直しの必要性を『山渓』さんにも考えて頂きたいですよね。


ナナカマドの赤が鮮やかで美しい。


せっかくなので紅葉の写真を撮影しながら下山する。


致し方なくこっち方面へ下山したのですが、紅葉を観れたことで「来てよかった!」って気分になれました。

でなかったら、新穂高に帰る立場上、無駄に遠回りで、バス代も無駄、時間も無駄・・・無駄無駄尽くしで救いようのない状況でした。


「こういう遠回りも悪くないものだ!」と思えたことが、今回一番の戦利品かな。

今までの自分の生き方っていうのが、基本的に立ち止まることが大嫌いで、1分、1秒でも早く!そうやって急いだ結果、急いで頑張ったのに他の要因で失敗してふりだしに戻ったり、足止めを食らったりして、思うように事が進まなくてイライラする・・・そんな事の繰り返しみたいな生き方だったので、こういう瞬間に今までの自分の生き方って何だったんだろう?って悩んでみたりする。

急がば回れ・・・とは言うけれど、それって本当に正しいのか?って。

自分のこの性格は、幼少期のどんなエピソードが影響をもたらしたのか・・・なかなか思い当たる要素が見当たらないけど、そもそも幼稚園児の頃には既にもうせっかちで、理想通りの流れにならなかったらストレスを感じる性格になっていた。

例えば電車やバスに乗る時に、みんなが並んでいるのに割り込んで入ろうとする大人にストレスを感じて「みんながちゃんと並んでいるのに割り込むなんてズルいやろ!後ろに並べよ!」って堂々と注意をしていました。

稀にそれで逆切れした大人に殴られたり蹴られたり、ホームの下に蹴り落された事もあったけど、その際僕は普通の子供みたいに泣きじゃくった事が無い。自分の信念が正しいという絶対の確信があったので、むしろその大人が自分の非を認めて謝罪するまでは断固として許すことなく食ってかかっていた・・・何度殴り飛ばされても。

いい加減僕に関わるのを面倒に感じた大人は謝罪もせずに逃げるのだけど、「何逃げとんねん!俺みたいな子供に注意されて、大人として恥ずかしくないんか?素直に謝らんかいボケ~!」と、どこまでも追いかけて行き、祖母に「もういいから!よしなさい!」と制止されるまで止まらない子供だった。

これまでの人生で自分以外にそんな激しい幼稚園児を見た事が一度も無い。

単純に正義感が強すぎたのだけど、今思えば仮に相手が悪だったとしても、5~6歳の頃の僕は本当に『とんでも幼稚園児』だったと思う。

当時の新開地駅でたむろしていたホームレスたちには、「あのガキ見た目は女の子みたいやのに、怒らせたらしつこいから絶対に関わるなよ!」って狂犬扱いされて。

実際に5歳の頃、新開地駅の改札前でゴミを放置して立ち去ろうとしたのを注意して、それに逆切れしたホームレス3人に袋叩きにされた時などは、周辺にいた大人は駅員も含めて誰も助けてくれず。

この時はたまたま父親が仕事帰りに新開地駅で乗り換えるタイミングで(いつもは深夜に帰ってくる父親が珍しく早い帰りだったので奇跡的だった)、殴り飛ばされて3人に踏みつけられている僕を見つけ、助けに入ってくれたので九死に一生を得た。

「俺は正しい事を言っただけなのに、このまま見殺しにされるのか?」って、人生で初めて死を覚悟した体験です。

その時は悔しくて泣きそうだったけど、事情を聞いた父親に「お前子供のくせに根性あるんやなぁ。」って言われたのは嬉しかった。

4歳になる春から3年間、毎日1人で・・・

北区の花山から新開地まで神鉄を利用し、歩く時間も含めたら片道1時間半以上かけて幼稚園に通っていたので、その道中で随分と沢山の大人の動きや感情を観察して育ったと思います。

山を歩くとそういった昔の色々な思い出を振り返りながら、自分の生き方が今のままで本当に正しいのか、反省点があるとすればそれは何か?等と、冷静にあれこれ考える時間が作れるのです。

登山とは個人の力ではどうにもできない自然の力と向き合うので、結果的に自分自身とも素直に向き合う事が出来て・・・本当に面白いものですよ。


涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐点です。


分岐から涸沢ヒュッテ方面へ少し登ったら、左にパノラマコースが伸びている。

写真でも左方向に水平に伸びる道が確認できる。


屏風のコルまではほとんど大きなアップダウンも無さそうで・・・

今更ながら「いいな・・・あっちの道。」って思ってみたり。(笑)


こちらのご夫婦は撮影しながらですけど歩くのがとても速くて、ちょっと僕と撮影のタイミングも被ってしまうので、早々に先に行かせて頂きました。


僕はここでもすれ違う登山者さんには涸沢までの残り時間を参考程度にお伝えしながら歩いています。

奥穂高岳まで登るっていう人もいたので、その場合は天候の事も伝えて「最悪今日は穂高岳山荘で様子を見て考えて下さいね!」ってアドバイスしながら・・・。


ナナカマドの実。

シアン化合物という毒素を含んでいるので、食べるのはお勧めしません。

しかしソルビン酸も多く含んでいるとかで、冬の寒い時期も腐らずに実を保つことができるらしい。

花言葉は「慎重」「賢明」「貴方を見守る」という意味を持っているらしく、登山者にとっても験の良い木である事が解ります。


涸沢カールから離れれば離れる程、寂しくなります。

次穂高に来るのはいつになるだろう?


いつの間にか横通岳も見えなくなっていました。

ここから本谷橋までは急斜面の石段が続きます。


ご年輩の方々も頑張って登っておられますが、向こうの方はリュックのベルトが切れてしまったみたいで、今必死に修復いるところです。

ちょっと荷物が重すぎたんじゃないでしょうか?


紅葉の美しい区間を抜けてしまいました。(涙)

この辺りで涸沢小屋で再会したご夫婦と再々会しました。

「あら?もう追いつかれちゃったの~?」って。

「ここから先は急な石段が続くので、落ち着いて歩いて下さいね!」って、お先に失礼させて頂きました。


もう朝一のバスで上高地にやってきた登山客が次々に登ってくる時間帯なので、徐々にすれ違う登山者も増えてくる。

急がないと渋滞にかち合ったら進めなくなるかも。(汗)


Sガレ・・・涸沢カールまでの最後の大休止ポイントですが、まだ誰も休憩していませんね。

っていうか昨年来た時はこんな看板無かったように思います。

Sガレから涸沢小屋までの登りは、僕の足で概ね35~40分くらいです。

標準コースタイムにするなら50~60分とした方が良いですね。


道も狭い箇所が多いので、団体さんとかが歩いていると譲ったりするだけで2~5分はタイムロスします。


道中でこんな大きな落石がありました。

これタイミング悪く直撃を食らっていたら、確実に死んでしまいますね。

こんな高齢者や初心者が歩くルートでさえ油断禁物なんです。


いよいよ涸沢カールの見える最後のポイントです。

登ってくる人にはここに来て「あと少しで涸沢に着くぞ!」って元気が回復する場所になりますが、下山する人にはただただ寂しくなる場所です。

左手のご婦人3人も落石の大きさに驚いていました。

一応ここはヘルメット着用区間なので、持っていない方は速やかに通過しましょう。


大キレット方面はガスって見えにくいですね。


ダケカンバと横尾尾根。


ここから本谷橋までが涸沢ルートの急な石段区間の中でも特に強烈な急斜面となります。

道は狭いし、景色に見とれて谷に落ちれば助からない高さです。


20名くらいのパーティーとすれ違った。

登山ツアーの方々だろうか?

若いインストラクターさんも何人かいるけど、大半がご年輩の方々。

女性は皆さん年齢を感じさせない若さがあって、「ここからあと1時間登れば涸沢カールに入りますよ!」って声を掛けたら、「あと1時間?じゃああと少しだね!」って元気に答えてくれてましたが、男性陣はかなりお疲れの方が多く・・・

ここで危うく大事故になるところでした。

写真のリュックを押してもらっている男性ですが、谷の景色を眺めているうちにフラッとバランスを崩して後ろにひっくり返ってしまったのです。

その時正面に僕がいて、男性の隣にインストラクターさんがいたので、2人で瞬時に男性の身体を掴まえ確保したので滑落は防ぐことができました。

あと大きなリュックサックのお陰で男性は岩に頭をぶつけることも無く無傷でした。

ホッとはしたけど、ここまで疲労が蓄積していたのでは危険なので、この先の広くなったところで休憩する事を勧めて見送りました。

インストラクターさんも責任の重い仕事を任されて大変です。

僕は登山ツアーというのはこういう怖さがあるので、旅行会社もむやみにプランを作って欲しくないと思ってしまう事があります。

10年前に北海道のトムラウシ山で起きた遭難事故の話を詳しく知って、一瞬の判断ミスが後に取り返しのつかない事態になるという恐ろしさを感じたので、登山はツアーでやるものではなく、身体づくりのトレーニングからセットで行なうものだと感じています。

96年にエベレストで起きた遭難事故は、ツアーとして登山を商業化したことによって発生した大事故の最たるもので、できる限り多くの参加者をピークに立たせたいという考えが無理を生じさせて、インストラクターまでもが帰らぬ人になった話。

登山ルートが渋滞で、スケジュールが大幅に狂う事も遭難の原因につながっていたり・・・。

涸沢カールの紅葉は日本の紅葉を語る上でも知っておくべき最高の紅葉だ。

それを見たさにツアーに参加するご年輩は少なくないだろう。

でもここは槍穂高界隈じゃ入門者向けルートかも知れないけど、上高地から歩き続ける時間を考えたらハイキングレベルで登れる場所じゃない。

ゆっくりでもいいから、せめて六甲山系全山縦走のハーフだけでも余裕で歩ける体力と脚が無かったら、とてもじゃないけど涸沢カールには辿り着けません。

しっかりと参加する人の基準を設けて、何だったらプレテストくらい実施した方が良い。

こんな安易な登山ツアーで滑落者リストの人数を増やしてしまったら、それはそれでこの山を好きな人にとっては悲しい事である。


本谷橋を過ぎてからの・・・この延々と続く石段が、どれほどダメージを倍増してくれるのか・・・それをわかって登りに来ているのか?


本谷橋では大休止中の登山者がたくさん寛いでいました。

まあここで休むよりも・・・もう少し登ってからの方が、気持ちの上では断然オススメですけどね。

僕はここまで登山者やグループに散々道を譲りながらゆっくり下ってきたので、涸沢小屋から1時間15分かかってしまいました。


ここを渡ったら、後は森の中をひたすら歩く退屈な区間である。


何だか小さな橋を設けてますね。

当然ですが水は綺麗です。(僕はここの水は飲みませんが・・・)


ここまで下ってきたら最早とっとと横尾に着かないかなぁ?という思いだけです。(笑)


道は非常に悪く足をこねくります。


間も無く屏風岩がどど~ん!と現れます。

これがまたいけない・・・

屏風岩が出てきたら横尾まであと少し?って気持ちになってしまうので、もう少し隠れていて欲しかった。(苦笑)


これは北穂高岳ですが、やはり山頂の方は雲で見えません。


ひたすら黙々とペースを上げて歩きました。

途中で十代~二十代の山ガールとも沢山すれ違いました。

「チィ~ッス!」と軽快な挨拶を返してくれたギャルもいたり、背が高くてスタイル抜群のモデルさんみたいな美女まで様々でしたが・・・

よく自転車に乗ったオッチャンが女性ライダーを見つけては、金魚の糞みたいに付きまとって声をかけては逃げられる・・・なんて話は国道2号線界隈では時々耳にする事もございますが、スピードの出ている自転車では実際に危険なので、むやみにナンパみたいな真似事はして欲しくないんです。

登山だったらお互いの顔もハッキリ見えるので、当然ナンパはダメですけど、挨拶して感じが良かったら仲良くなって・・・っていうのは有りじゃないかな?とも思う訳。

モテたいけどモテないサイクリストは自転車を辞めて登山でも始めりゃいいんじゃないか?って勝手に思えてしまったり・・・。(笑)

サイクリングもいいけど登山の爽やかさも本当に気持ちいいですよ!


ようやく横尾大橋に到着。

もうこの程度の階段を上るのさえ苦痛。

ザイテングラード以降のガレ場から蓄積した足の痛さが半端ないです。


結局横尾まで丁度2時間・・・標準コースタイムで下山してきました。

お腹は空いているけど・・・

横尾山荘のランチも美味しいけど・・・

せっかくこの時間帯に下山したからには徳澤園まで我慢だ!

では次回お楽しみに!

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