2018年8月19日日曜日

穂高連峰日帰り縦走にチャレンジ!(第七話)死線


6:25・・・ようやく奥穂高岳山頂(標高3190m)で写真を撮って頂きました。

同じように山荘から登ってきた人や、前穂高岳から吊り尾根を経て登ってきた人など、今ここに30名以上の登山者が集まってきています。

中には「あいつら何言っているか解らないし、記念撮影したくても退かねぇし邪魔で仕方がない!」って文句を言っている人もいたけど、中国人の団体さんも登ってきていました。

まあお国柄が違うので、何かと心配になる事はございますが、彼らもこの北アルプス最高峰まで諦めずに登った勇者の一員ですから、僕はその健闘を称えたいと思います。


そして再び稜線沿いに岐阜県側の雲が切れました。

山頂に集まった登山者の心はここで一つになります。


誰もがジャンダルムの姿に感動している。

なんであんなに武骨で荒々しい姿をしているのに、どうしてこんなにも美しいのだろう?


本当にちょっとした雲の流れや光の加減で違った写真に映る。


それにしてもどこまでも僕の写真に絡んでくるこのカップル・・・

この時もものすごいスピードでピンクのお姉さんがあそこまで一気に走って行ったのだ。

なんか腹立たしい・・・(笑)

病み上がりの僕には到底したいとも思えない芸当だ!

そしてここで動きが発生する。



「雨だと聞いていたのに、こんなにも雲に切れ間が出来るなんて、もしかして西穂まで行けるんじゃないか?」

誰かがこんな事を言ったんですね。

その瞬間1人の男性が西穂高方面へ歩き出したので、僕もそれを追うように歩き始めた。


奥穂高山頂付近にある方位を示す地図。

ガスがかかって道に迷った時はこれを見て判断・・・って、出来るのか?(笑)


奥穂高岳の南西の稜線を一気に下っていく。

いつの間にか雲に覆われていて、もう来た道すらも見えない。

こんな稜線の上を綱渡りみたいに歩いていく

この先には更に切り立ったナイフエッジ状の稜線(登山用語ではナイフリッジと言って痩せ尾根の事をそう呼びます)の上を歩き続ける超危険地帯が待っている。


長野県側・・・落ちたら戻って来れません。

この辺の道幅は40cm無いところもあります。


先に行った人が忍者のように早くて見失いました。

ここは手前の岩を真っすぐ行ったらその向こうは道がありません。

ここを左に回り込んで岩の向こうへトラバース。

向こうに見えている岩はナイフエッジの始まりです。


写真中央のちょっと上に薄っすらと〇印が見えていますが、要するにあそこから岩の上に登ってナイフエッジの先端を綱渡りする訳です。

そしてよく見たら先行する登山者が印に気付かずに岐阜県側へトラバースしようとしているのが見えます。

あそこはあのままトラバースすると、ほぼ垂直になって足場がなくなったら進めなくなる場所。

このまま放っておいたらあの方・・・滑落しちゃいます。

丁度道に迷った事に気付いてこっちを向いたので、僕も手を振って「そっちじゃないですよ~!」って大声で呼び掛けることができました。

「いやぁ~、確かこの辺で大きくトラバースするところがあったでしょ?」

「いや、それは恐らくロバの耳での話じゃないですか?少なくとも僕は馬の背でトラバースなんて話は聞いた事が無いですよ。」

「そうでしたっけ?なんかトラバースできそうな感じだったもので・・・。」

いやぁ~本当に危なかったです。

ある程度熟練の方にもなると、つい新しいルートを開拓したくなる人もいたりするのかな?


〇とか✕の印が混在しています。

✕は『浮石なので触るな』って意味と、『ここから先は危険』の意味があります。

〇を辿って歩くようにします。


まあそんな訳で足の踏み場はありそうでそんなに無いという状況です。



そしてこの後、突然暴風雨になってしまいました。

もっと危険な場所を撮影したかったのですが、カメラを構えるどころか自分の身体を支えるだけでも必死の状態に陥り・・・

馬の背では前を行く登山者が止まってしまい、怖気付いてしまったのですが・・・

「そんなところで止まられたら俺はどうすればいいんだよ~!」な状態で僕も固まってしまう。

両手でナイフエッジの岩をつかんで、ギリギリでバランスを取っています。

真下には落差何mかも判らないような絶壁が左右に広がる。

高さ100mのコンクリート塀の上に立っている(或いは跨っている)状態を想像して下さったら、きっとイメージが近いと思います。

さすがに僕も怖くて震えています。

元々高所恐怖症&落下恐怖症なので、こういう状況は苦手なんです。

風はもう30m/秒クラスにまで吹き荒れています。

まるで台風みたいです。

ガスは深くなって5m先の視界が判らない状態。

しかも眼鏡もびしょ濡れで尚更視認性が低下しています。

ここで向きを変えろって?いやいや、絶対無理!

そんなことやろうものなら間違いなく滑落!

「やばいなぁ~。俺本当にここで死ぬかも知れないなぁ~。」

そう思っていたら前を行く登山者が少し進んで次の岩場に移ってくれた。

それで僕もそこまで進む。

次は最後の下りを降りていよいよロバの耳らしいのですが、もう僕の精神レベルはかなり凍り付いています。

正直このとんでもない緊張感の中で、ロバの耳~ジャンダルム~天狗の頭~間ノ岳~西穂高岳~ピラミッドピーク~西穂独標と歩き続けるなんてあまりにもえげつないと感じるようになる。

今も時々突風に吹き飛ばされそうになっているのだから。

これで雷雲でも発生した時には・・・

ここから先で三点支持無くして歩ける道はない。

もしも岩に掴まっている時に落雷にあったら?

靴はゴム底だけど手はグローブを付けていない・・・

それでもしも落雷による感電死、及び滑落死となった場合、グローブをしていない僕が迂闊だったなんて言われるんだよきっと。

そう思うとこれ以上先に進むべきじゃないって気持ちが強くなる。

すると先行する登山者も「本当はせめてジャンまで行って戻るつもりだったけど、やっぱり無理だ!ここまで荒れてきたんじゃ命の方が危険になる。」

そういって引き返す意思を示したのである。

「解りました。僕もそうした方が賢明だと思います。」

そうして帰りは僕が先導してルートを間違えないように案内。

(馬の背の参考映像)https://www.youtube.com/watch?v=XzEnPq2ijQY

(丁度この動画のスタート地点まで来ていたのですが、暴風で敢え無く撤退。動画では晴れていますが、僕が歩いた時は5m先が見えない視界でした。)

もう迷いが吹っ切れたからなのか、ここに来て僕の動きの切れ味が良くなる。

さっきは四つん這いで震えながら歩いたナイフエッジも両手を突かずにスタスタと歩いて行き、ルートを間違えやすそうな箇所で振り返って声を掛ける。

何とか奥穂高まであと少しのところまで戻ってきたら・・・

天気は少しマシになっていて、「あれ?さっきの馬の背の天気は一体何だったんだ?」くらいに思えてきました。

そこで西穂高岳を目指す『お一人様』登山者とすれ違う。

「これからどこまで向かわれるのですか?」

「西穂までですが・・・。」

「本気ですか?今馬の背より先は荒れていますけど。」

「えぇ?そうなんですか?」

「無理強いはしませんが今日は止めた方が賢明ですよ。絶対に無理しないで下さいね!」

「解りました。無理だと判断したら引き返します。」

その後もう一人同じ目的の『お一人様』とすれ違ったので、同じように警告をしてから僕は穂高岳山荘方面へ戻るのでした。

どうかお二人とも無事でありますように。

では続きはまた次回へ・・・


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