東尋坊を出発し、三国を抜けて再び九頭竜川を渡る。
『道の駅みくに』の辺りからは、三里浜緑地に始まる防風林地帯が続く。
遠くに行き先が見えるものの、いつまでもそこに辿り着く感じがしないという錯覚に陥りがちになる、悪魔的直線区間が多い丘陵地帯である。
しかも防風林があるからと言って、海の反対側が無風地帯という訳ではない。
むしろ逆だ。
突風のような大陸側から吹き込む海風は、威力こそ殺されるものの、防風林を越えて巻くように吹き荒れるのだ。
これはあれですよ・・・
余力があったら「越前の直線に鬼が出るってウワサ知ってるか~い!」ってなノリで、弱虫ペダルに登場する箱根学園の新開君のように、全開で走りたくなるってもんですよ。
N様2号が参加されていたら、日頃上りでいじめられているお返しをしたくなる・・・まさにそんなシチュエーションですね(笑)
鷹巣地区を過ぎるまでは、ダラダラとした直線が多い。
しかしそこを抜ければいよいよ越前海岸らしい、険しい海岸線の風景に変化する。
亀島~鉾島~弁慶の洗濯岩~軍艦島~と大陸からの風と日本海の荒波に侵食された複雑な地形が織り成す島々が見えてきます。
鉾島に到着しました。
鉾島には神社があるので参道がのびています。
遠くに見えるのが亀島で、東尋坊はもう遥か彼方です(笑)
風の巻く中、時速38km前後をキープしながら巡航。
往路の件も含めて巡航速度がおかしいって言う人がいるかも知れないので、一応おおよその説明をさせて頂きます。
まず僕とI藤様はトルク型の人間なので、気持ち重いギアを70~80回転くらいで回して走るのが気持ちいいのです。
よって信号のない長い田舎道では十分体力を温存して走ってそのスピードなんです。
逆に体重の軽いO様2号は風が苦手。
回転数でカバーしても重たいギアは踏めないので、スピードは時速35kmくらいで頭打ち。
しかも回転数も90回転前後をキープしてるので、心肺への負担は僕やI藤さんより大きい。
結果ペースは気持ち遅いのに、なぜか疲労度は大きいという事態になっている。
そういう意味ではH川様は最近トルクが上ってきているので、より心肺への負担を少なく走る事に長けていて、後半戦では完全にO様2号をリードしていました。
まあ街中しか走らないような人だと、ストップ&ゴーで疲れた身体で時速40kmキープなんて、まず考えられないって言う人が多いかも知れませんが、そういう方にこそ是非長閑な田舎道を満喫して頂きたい。
鉾島から間も無く、国見の集落を抜けると『弁慶の洗濯岩』です。
なかなか不思議な地形でしょ?
そういえばこの付近はパナウェーブ研究所があって、白装束の人たちが電磁波を調べるのに専用の車を走らせていたはずなんですけど・・・
まだ活動しているんでしょうかね?
遠くにこれから目指す越前岬が見えてきました。
あそこに僕の秘密の坂道があるのですが、O様2号にそれを教えたら・・・
「あんなところまで走って、まだ上るんですか?」って感じで溜息をついていました(笑)
しかしねぇ~。実際のところ僕もI藤さんもそろそろ限界でして・・・。
というのも、やはり三国バーガーと岩ガキだけではエネルギー不足!!
一番燃費の良いH川様を除いて3人とも「腹減って死にそう・・・。」って状態だったのです。
ここからはしばらく「腹が減ったよ~!」って叫びながら走ってましたね。
途中『カフェ・ニック』や『カフェ・マーレ』といった、お洒落なカフェなんかができていて、つい立ち寄りたくなったものの、俗に言うバイカーズカフェみたいで、オートバイのツーリストで既に一杯だったのと・・・
やはり塩気のあるものを食べたかったので、海鮮料理のお店に行きたくてパスしました。
そして大味町を過ぎて、『水仙の里公園』に行くまでに見つけたのが・・・
『魚屋の喰い処まつ田』です。
時間がもう15時過ぎだったので、さすがに食事は無理かな~って感じだったんですよ。
でも聞いてみたらOKして下さったので、他の3名には「ここに入りますよ!」って半ば強引に付き合っていただく事にしました。
こんなロケーションで海の幸を頂くなんて最高でしょ?
H川様はそれほどお腹が空いてなかったそうなので、海産物屋さんに関係ない心太を注文していました。
実際小腹を満たす程度で考えると、ここのメニューはどれも高級過ぎたのですが・・・
「ああ、これいい!これにしよう!」って僕が注文したのがイカの塩焼き!
続いてI藤様とO様2号もイカを注文。
すいません!空腹感に負けて2切れ食べてから「ああ!写真を撮り忘れてた!」ってなり、慌てて撮影しました・・・
イカの塩焼き1杯で800円也。
しょうゆマヨで食べるとこのうえなく絶品でした。
半ば強引に付き合わされた皆さんも、「ああっ!美味い!これは注文して良かった~!」
後に振り返った時に「あそこでイカ焼きを食べてなかったら、間違いなくハンガーノックになっていたかも。」ってI藤様とO様2号がしみじみと言っていたくらい・・・
本当に美味しかった上に助けられました。
その後出発して間も無く水仙の里公園を通過。
その際左手のドライブイン『越の本陣』に目が行った。
「うわっ!ひでぇなこれは・・・。」
2年前に廃業したとは聞いていたけど、廃墟のまま放置されていて。
今だから言える話なんですけど、僕が旅行会社にいた当時、関西の旅行客を誘致するにあたって、越前海岸のツアーってかなりリスキーだったんですよ。
最寄の高速道路インターチェンジからの距離とか・・・
実質観光バスのドライバーの疲労や燃料代を考えると、当時既に業界において日帰りバスツアーは全行程での走行距離を500km以内で企画するルールでした。
それ以上になる場合はドライバー2名制にするなどが必要となっていて・・・
しかしドライバー2名になったら、単純にそれだけでバス代が2~3万円も加算される訳で・・・
なので旅行会社はコストアップを避ける為に距離を短くするか、バス会社と交渉して規定の逃げ道を最大限に駆使して600kmまでのコースを騙し騙し走ってもらうなどしていた訳。
今やっていたら間違いなく槍玉に挙げられてしまうような話です。
僕は会社の出費を最小限にする使命と、お客様に価値あるツアーを楽しんでいただく使命の2つを担っていましたので、バス会社の方々には随分無理をお願いしたと思います。
そんなご時勢で誰もが大変な時期に、僕は『越の本陣』へ団体昼食の商談に行った事があるのですが、ただでさえアクセスが悪い場所なのに、頑として料金を崩す気はないと断られた覚えがあります。
お客様に恥ずかしい料理を出したくないってポリシーを貫くのはいいのですが、それと料金設定を下げるのは別問題です。
その時僕が越前に送ろうとしていたお客様は毎日1~4台のバスを10日間の間毎日送り込み、少なくとも1000名規模の団体だったのですが・・・
それだけのスケールメリットがあれば仕入れを安くできるので、料金を下げても利益は十分残せるんです。
しかし残念ながら断られ・・・
その後は一切僕からアプローチを掛ける事はしなかったのですが、一度向こうから提案の話を頂いたんですね。
それでも相変わらず内容以上に高い値段を提示されたので、今度は僕からお断りしたんですよ。
以来ずっと気にはなっていたんですが、相当売上が激減していたみたいで・・・
バスツアーの景気が良かった時代を忘れ切れなかったんでしょうね。
経営難に悩んだ結果が自作自演の火事騒動で・・・
だから酷い状態のまま廃墟として残っているわけ。
そういうのを見ると辛いですね。
越前海岸をはじめとする日本海の景勝地はどこも情緒があって、しかも思いの他美しい海と夕日に、きっとどんな方も癒されるはずなんですが・・・
結局当時、『越の本陣』にふられた僕を救ってくれたのが『越前正太楼』さんで、敦賀からまだアクセスしやすかったのと、呼鳥門の近くとあって立地も良く、すごく頑張っていただいたのでツアーも好評だったんですが・・・
もともと『東尋坊正太楼』とののれん分けだったところから、いよいよ完全独立を・・・ってところで色々あって先代社長が突然引退し、次期社長が屋号を『越前屋』に変更してリニューアルしたとたん、消防法の関係か何かで、元々の建築に設備上の欠陥があった事が判明し、やむを得ず廃業したという悲しい思い出もあります。
昭和の観光ブームで華やいだ景勝地の多くは、越前海岸のように寂れている所が多いのは事実ですが、僕は改めて見直しを図る価値があるとも思っています。
これ以上観光地に廃墟を増やさない為にも、どんどん多くの方に観光で訪れて頂き、各地方の良さを知ってもらいたいものです。
その為に自転車を絡めてできる事があるなら、僕はどんな知恵でも貸すし手伝いもしますよ!
ちなみにこれから走る僕の秘密のプチヒルクライムのコースは、元々は旅行のパンフレットに使う水仙の写真を撮る際に越前正太楼の社長が案内して下さった道で・・・
ようするに僕が旅行会社時代に強烈なノルマを課せられ、悩みに悩んでいた時に協力してくれた方々との思い出の地なんです。
彼らとはビジネスを通し、年齢を超え友情で繋がった仲なので、今も僕にとって越前海岸は・・・
福井県は特別な地なんですよ。
迷いがあって辛い時にここへ来れば、当時のもっと辛かった時の事を思い出して自分をリセットできるんです。
今回もH川様やI藤様、O様2号と一緒に走れて本当に良かった。
今は彼らのような素晴らしいお客様が増えてくれたので、気持ちの上で色々と支えられています。
さて・・・言っているうちに秘密の道の入口を通り越し、呼鳥門まで来ました!!
ここで一旦トイレ休憩をとって、いよいよプチヒルクライムを楽しみたいと思います。
ん?カメラマンのI藤さ~ん!肝心な呼鳥門が写っていないじゃないですか~!
そして呼鳥門のトイレといえば・・・
この庭園みたいなトイレですよね。
鶯が鳴いてました。
さあいよいよ越前サイクリングもクライマックス!
次回は梨子ヶ平の上りが全員の体力を吸い尽くします。
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