最近中国人の大学生風のお客様が持ち込みで組み立て及び防犯登録や、その他の自転車の安全整備でご来店頂いたのですが・・・。
非常に日本語も良く勉強されている方々で、単純に持ち込みの場合の組み立て工賃が高い事も理解したうえで、料金や作業内容の交渉ができたので、非常に好印象だったのです。
なので僕個人として可能な限り料金的な問題も歩み寄れるように努力をしたのですが・・・
問題はこのMTBのような自転車の安全整備でした。
購入してから少し乗ったようですが、安心して乗れる状態じゃないとおっしゃるので、お預かりしてあれこれ点検していたのです。
するとM籏君が、「店長、このグリップがすぐに抜けちゃうんです・・・。」って、僕に確認を取ったのです。
そこからが「どうしたらいいんだろう?」の始まりでした。
シフトレバーの台座のチープさもさながら、ハンドルのパイプの肉薄加減にビックリ!
携帯電話のカメラでピントがずれているのが申し訳ないのですが、左が通常の肉厚のハンドル。
パイプの肉厚が半分以下で、もしもこの自転車をMTBとして認識して乗ったとしたならば・・・
シングルトラック(山道)で岩場とかをジャンプした時には、両手に全体重がかかって、このハンドルじゃ間違いなくポッキリと折れるだろうな~っていうのが、容易に想像できるのであります。
なのでコストが少しかかりますが、せめてハンドルくらいはまともなものに交換を・・・
ステムもちゃちな作りでしたが、ハンドルのそれよりはまだマシなレベルでしたのでそのまま。
そしてブレーキレバー本体が固定ボルトをいくら締めてもクルクル回るというので、薄いゴムスペーサーを噛ませて固定。
このレバーも安いプラスチックでできているので、強度や耐久性は幼児用自転車と変わらないレベルです。
っていうか、このブレーキラインの角度はなんだ?
明らかにアウターケーブルの変形による、インナーケーブルの摩擦を考慮に入れていない作り。
無駄に太いヘッドチューブが剛性感を醸し出しているかと思いきや・・・
何?この痩せ細ったフォーククラウンは?
しかも左右のブレードって、通常はクラウンに差し込んでボルトで締め込んでいたりするものなのに、「えっ?ここを溶接でやっちゃうの?」って、ちょうどオフロードバイクに乗っているお客様も横で見ていて、「この溶接を信じて乗れって言うんかい?勇気がいるなぁ。」と驚いていました。
ここって応力に対する耐久性も、運動性も・・・左右均等である事を求められる箇所なので、本当にこれでいのか?って部分なんですよ。
そして横からみたらフォークの横開きを防止するアーチもペラペラで、形だけ真似たサスペンションなのが痛いほど判る。
クランクもママチャリクランクにチェーンリングを3枚付けただけ・・・かと思ったら・・・
「ワーオ!なんて薄っぺらいんだ?」
ママチャリクランクの半分近い厚みの、非常にしなりのあるソフトなクランクでした。
そしてよく見たらフロントディレーラーは・・・『シメン』?何それ?
これか?ネット販売のガラクタに『シマノパーツ装備!』って書かないと売れない原因を作ったのは?
ずっと「シマノパーツをつけてるだけで偉いんか?普通やろ。そもそもシマノパーツもピンキリって事を知らない人が多過ぎる。」とか思っていたけど、こういった粗悪なコピー品が存在しているのも一つの要因になっているんですね。
リアディレーラーも形とかカラーリングを、見様見真似で近付けた感じがすごい。
まあオブジェとするなら努力賞ってレベルでしょうか。
そして僕が何よりもビビッたのが、この『ディスクブレーキのような物』です。
パッと見・・・良く頑張って真似たなぁ~と思うのですが、ディスクローターの傷とかバリが気になりませんか?
ローターは一切研磨の処理をしていないですし、それどころかキャリパーの中にはブレーキパッドが入っていません!
ピストンだけで挟んでいます。
なのでフロントタイヤに至ってはブレーキが効きません!
全力で握っても前に進みます!
何てワイルドな構造なんでしょう!
それだけでは終わりません!!
ブレーキローターは6点止め・・・
ボルトの頭が舐めているのが気になります。
「アーレンキー(六角)タイプのボルトを使えよ!トルクが十分にかけれないだろ!」等と突っ込みを入れて終わりかと思ったら・・・
ハブボディ(本体)に6点止め・・・ではなく、台座は独立式なのであります。
このアルミの台座・・・ハブに対してねじ式で締め込まれています。
つまり6点止めの意味が全く無くなっているというか・・・
確かにねじ式のローターも存在するけど、その場合最後にロックリングを締めて、ローターが緩まないようにできているのですが、当然このディスクブレーキのような物にはそんなセーフティ機能は付いておらず・・・
前後のブレーキをロックした状態で車体を後ろにバックさせると、ローターのねじが緩んで止まらなくなるのです。
つまり激坂を上っている途中でブレーキを掛けたら、体重で車体の後ろに荷重がかかり・・・
ローターが緩んで、どんどんバックしたまま加速してしまうという、超危険な代物なんです。
ロゴのステッカーなども気泡が入りまくりで、もっと綺麗に貼れよ!って言いたくなる、このGIANTのパチもの自転車ですが・・・
車体にQRコードが付いていたので調べてみたんですね。
何と価格が2180元!
日本円にして3万5000円程です。
中国の方の平均収入で考えてみたらかなりの高額自転車ですよ?
この自転車を生産しているメーカーって酷くないですか?
最後にシートポストも上げて脚の長さに合わせて差し上げようとしたら「スポッ!」ってすぐに抜けて、他の中国人のお客様も含めて、全員で「うわっ!短!」って大笑い。
なので持ち主の方も、僕の「坂道は押して歩いて下さい!」とか、「絶対にスピードを出さないで下さい!」といった意見にちゃんと納得して帰られました。
とても好印象の若者たちでしたので、是非怪我や事故の無い事を祈りつつ、安いからといって粗悪品に手を出す日本の方々にも注意喚起と言ったところです。
皆様お気をつけ下さいませ!
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