重太郎橋から1時間5分もかかってしまいました。
ここを渡った霧の向こうは最後の難関『白出沢』です!
残す標高差は約800m。残り1.6km程の距離でその標高差を一気に登らないといけません。
しかも台風や強い風が吹く度に落石で不安定な浮き石が発生するため、日々ルートが書き換えられてしまうという超難関のガレ場なのです。
ここで一度荷物を降ろし、攣りそうになった脚をストレッチ。
更に落石対策でヘルメットを着用・・・すると!?
気配を感じたので後ろを振り向いたら『あいつ』がいたのです。
『あいつ』とはクマの事です。
思わず指をさして「お前、何でそこにおんねん!」と突っ込みを入れてしまった。
とりあえずクマはこっちを見たまま動かないので撮影しようとカメラを構える。
そしてファインダーを覗き込む間もなくクマは霧の向こうへ逃げて行きましたが、距離はどのくらいだろう?
当時は30mくらい離れていた感じはあったのですが、もう少し近かったかも知れません。
僕が突っ込みを入れたのが問題なのか、カメラを構えたのが問題なのかは判りませんが、クマは慌てて逃げるようにガラガラガチャーン!と大きな落石を発生させながら去って行ったのです。
落石の大きさからもそこそこ大きなクマだったんじゃないかと思われます。
荷継沢では過去にもクマの目撃談があったので、それほど驚かなかったのですが、さすがに周りに誰もいないタイミングで出て来られたら、ちょっと焦りますよね。
一応ここからクマに対して背を向けて進むことになるので、いつ追いかけられて襲われてもいいように、臨戦態勢で歩くことにしました。
昨年に比べて少し遅い穂高の紅葉が始まったみたいです。
涸沢カールの方はどのくらい色付いているだろうか?
穂高岳山荘のテラスから見下ろす景色が今から楽しみである。
白出沢は基本的に左岸(涸沢岳寄り)を基準で登ることが鉄則である。
しかし涸沢岳側の断崖絶壁はジャンダルム側よりも落差があるので、落石があっても気付かないし、落差のある分重力加速度がつくので・・・
落石に当たったら即死です。
できるだけ沢の真ん中と左岸をジグザグに登っていく事がベストだと思っている。
右岸はジャンダルムやロバの耳を歩いている、登山者の踏み落とす石が原因の落石率が高いのと、浮き石が多くてガレ場そのものがまともに歩けないので、歩くのに2~3倍疲れます。
しばらくはお花畑で低木もあったりするので・・・
時々後ろを振り返ってクマが追ってこないかを確認する。
障害物が多いうちは接近に気付かない可能性もあるので、こまめに気配を探る。
カメラを構えただけで逃げるようなクマなので大丈夫だと思いたいけど、もしも僕のことをエサ場を荒らした張本人だと認識していたら、その場合のクマはしつこいので油断できない。
やはり3000m級の稜線は青空のようだ!
ここからはまだジャンダルムの姿は確認できない。
これなんですかね?
ベリー系のような実がなっています。
絶滅危惧種のミヤマイチゴではなさそうですが・・・
ようやくお花畑を抜けて見渡しの良いガレ場に出てきました。
ガレ場は徐々に傾斜がきつくなっていきます。
ルートはあの霧の向こうで左方向へドッグレッグします。
左へ巻きながら傾斜のきつくなっているのが確認できますか?
ここは進めば進むほど絶望感を感じる地獄の道です。
後ろから迫ってくる影がありました。
ストックを突いているので登山者です。
もうクマの心配はなさそうでよかったです。
しばらくゆっくり歩いてこの方と合流しました。
実はこの方も先ほどのクマが発生させた落石の音を聞いて、しばらく怖くて進めなかったそうです。
僕が落石を発生させた主の話をすると驚いていました。
白出沢を登るのは初めてだそうです。
僕はまた脚が攣りそうになっていたので、左岸寄りを歩くようにアドバイスして、先に行ってもらいました。
そしてまたガスが晴れて青空が・・・
先に道を譲った方の向こうから下山する人の影が見えます。
3人組の下山者ですね。
父親と中高生くらいの息子が2人の3人組。
もうすぐジャンダルムの見えるポイントです。
これまた不愛想な親子でして、散々ガチャガチャと浮き石を踏み崩して、時々バランスを崩しながら下って行きました。
挨拶を返してくれたのは最後に歩いていた男の子だけ。
実は白出沢だけでも30人近い下山者とすれ違ったのですが、挨拶を返さない人が6割以上。
返しても仏頂面で不機嫌そうな人も何人かいて、とても気分が悪い。
何よりもここのガレ場を落石でメチャクチャにしながら下る人が半数くらいいてビックリしました。
常にガチャガチャ音がして、時々ガラガラと岩の崩れる音がして、その度に気が気じゃないというか・・・
できるだけ落石があってもすぐに回避したり、避難できる場所を意識しながら登らなくてはならなくて、ものすごく無駄なストレスでした。
やはりろくな知識もなく、体力任せで来ている登山者が増えてるって噂はまんざらでもないのかな?
よくもまあ浮き石をガチャガチャと歩けるものだと・・・
僕が昨年下山した際は、ルート上の浮き石を修正して安定させながら下ったくらい、後続の安全を意識して歩いていたのに・・・ありえん。
これまた「落~っ!」って叫びながら石を投げてやりたくなる。(苦笑)
ゴルフとかでも前のグループが余りにもマナーが悪かったり、のんびりプレーをしていたら、わざと「ファーっ!」って叫んでやる!っていう人いますよね?
気持ち・・・メッチャ解ります。
まだ白出沢のガレ場は半分弱しか登っていませんが、既にこの傾斜です。
ここで荷継沢から1時間10分経過。
この調子なら残り1時間20分~30分程度で登れそうかな?
そうなると新穂高~穂高岳山荘間を6時間10分(休憩時間抜き)で登れた事になるので、昨年の7時間弱の記録を更新できる。
時々谷の方からガスを含んだ冷たい突風が吹き上げてくる。
半袖Tシャツの上にユニクロフリース1枚でも暑いくらいなのに、この突風が吹くと途端に凍えそうな寒さになる。
その急激な冷えから、肩こりと片頭痛が酷くなってきた。
これは再び高山病の予感。
そして岩壁の裂け目からジャンダルムのピークが見えるポイントを通過。
明日はあそこに立つことができるのだろうか?
しかし気分が悪くなってきた。
半分の地点を過ぎれば白出のコル(穂高岳山荘)がこのようにハッキリと見える。
建物は見えにくいけど建物の基礎は見えている。
昨年の登りではガスで一向に見えなかった山荘が、今回は良く見えるのでコンディションとしては最高のはず。
下りだと穂高岳山荘からここまで50分もかからなかった。
なので、少なくともあと1時間10分~1時間20分もあれば登れるかな?
って思っていたのですが、ここから完全に高山病が発症。
気分が悪くて歩けない・・・進めない。
誰かが浮き石をガチャガチャ踏んでいても、しんどくて素早く反応できない。
そんな時にすれ違った女性の下山者。
昨年の僕と同じくらいの早朝からスタートして、既に奥穂高岳山頂に登ってからの下山。
女の人でも単独でこのルートを日帰りピストンだなんて・・・かなりの手練れです。
しかも彼女はガレ場の歩きも丁寧で、この日すれ違った下山者の中でも特にリスペクトできる方でした。
この日下から登っているのは、僕とさっき先にお譲りした人しかいないものだと思っていたので、この方が今朝一番でここを登ったと知って、少しパワーを頂きました。
ところが谷から吹き上げる冷たい突風は徐々に頻度を増してくる。
その度に凍えて死を意識するようになる。
リュックに防寒用のウインドブレーカーを入れてはいるけど、ここで荷物を降ろしたら動けなくなるんじゃないかと思い始めている。
それにリュックの中からウインドブレーカーを探し出し、荷物を詰め直して着用する気力がもう湧き上がってこない。
突然発症した高山病。
高山病の恐ろしさは人の判断能力や気力すら奪ってしまうところにある。
1歩進むのにすら必死になる・・・そんな経験ってみなさんはございますか?
その気になれば一気に5~6歩は進めますが、その場合しばらく立ち止まって呼吸を整え集中力を回復させないと、次の1歩が億劫で前に進めなくなる。
とにかくゲップが絶え間なく出てくる症状で、時々嗚咽になったりで、徐々にそれが苦痛で歩くのが辛くなるのである。
なので歩を進める前に、向かうルートを見上げて確認し、それが正しいルートなのか浮き石の有無も確認してからでないと、もう集中力が残っていないので歩きながらの判断ができなくなっているのである。
「やっぱ白出沢はどこまでいっても白出沢やなぁ~。あかん!今回ばかりは脚も攣って余計に進まない。」
今日のゴールはもう見えているのに、このあと少しがどうにもならない。
いくら進んでも白出のコルは近付いた気がしない。
本当に近付いているのか?
すれ違う人も相変わらず3人に2人はガレ場の歩き方が解っていない人だったりするので、巻き込まれないかと恐怖しか感じない。
右手を見上げると、ちょうどロバの耳から馬の背にかけての稜線が見える。
ちょうど今奥穂高岳の直下って事なんでしょう。
確実に倍ぐらいの時間がかかっています。
ここから穂高岳山荘まで本来なら45分少々で着くはずなのに・・・
あの尖った岩の下から35分歩いてまだこんな所。
更にここから40分登って・・・
やっとここまで登ってきた。
あり得ないくらいスピードが落ちている。
平衡感覚さえなかった昨年ほど症状は重い訳でもなく、ただ寒くて凍えそうなのと、ひたすら気分が悪いだけ。
もう穂高岳山荘の風力発電用のプロペラまでハッキリと見える位置まで来たのに、本当にもう動けなくなる。
下山すべきか?と悩むようになるが、冷静に考えて、谷の方はガスって余計に体温を奪われる危険性がある。
荷継沢まで下ったとして、そこで症状が軽くなっても・・・
回復させている間に体温を奪われてしまったら、身体のパフォーマンスが更に低下して滑落の危険性が増す。
それにそんな状況で先ほどのクマと再会したら、戦う気力も残っているかどうか・・・
絶体絶命のピンチだと思った。
何しろ動きたくても動けないのだから。
それでも下山者の姿を見る度に「ここで引き返したらダサいだろ!」って自分に言い聞かせながら1歩1歩ゆっくりだけど進む。
見立てでは15分で登れる距離だから倍と考えて30分。
「あと30分・・・遅くても1時間かかる事はないだろう。それなら暗くならないうちに登れるし・・・頑張って登るか。」
とうとう山荘直下まで登ってきた。
ここまで近くにいながら、ここから山荘まで16分もかかった。
15:15・・・やっと穂高岳山荘(標高2983m)到着!
道中10分休憩2回と、5分休憩1回(これは動けなくなっただけですが)で何とか無事にゴールです。
しかし昨年同様ゾンビ状態。
もう真っ直ぐ歩くこともできない。(笑)
登ったところで立っている人は、先ほど道を譲った登山者の人。
僕の事を心配して様子を見に何度も覗き込んでくれていたのです。
こんな親切な人がいてくれて、今日は気持ちの上では随分と救われました。
ところで荷継沢からこの穂高岳山荘まで実に4時間10分もかかってしまいました。
新穂高から穂高岳山荘までのトータルタイムで標準コースタイムよりも10分早いだけ。
最後の最後で時間の貯金をすべて食い潰してしまいました。
でも最後まで登れてよかった。
本当に途中で動けなくなった時「このまま誰かが気付いて救助隊を呼んでくれたとして、きっと助けが来る前に俺は凍え死ぬんじゃないか?」と半ば覚悟していました。
9月にM籏君が歩いた常念岳や蝶ヶ岳も一望できます。
涸沢~上高地方面は朝から快晴だったらしい。
やはり槍穂高連峰の壁を境界線にして天候が変わるっていうのは、実際にあり得る事なんですね。
涸沢の紅葉は白出沢に比べたら進んでいます。
前穂高岳の山頂付近だけ少しガスっています。
穂高岳山荘まで登ったら太陽の光が当たって、先ほどまでの寒さが吹っ飛びました。
太陽のありがたみ・・・本当に感謝です。
10月 4日(金)に穂高岳山荘に電話してTシャツの在庫を聞いていたのですが、「今年はもうほとんど売り切れです。」って話の中・・・
「あっ!でもジャンダルムの長袖TシャツだったらLサイズがあと1着残っています!」
そんな話だったのです。
ライムグリーンってカラーは不人気色とはいえ、果たして僕が行くまでに残っているだろうか?
そんな心配もあったのですが、無事に在庫・・・残っていました!
奥穂高岳ではなくジャンダルムのTシャツっていうのが、未だ登ってもいないだけに心に引っかかりはするものの・・・
左胸にライチョウのイラストと標高が書いています。
チェックインついでにTシャツも購入。
これで最初のミッションはクリア!
消費税が上がった兼ね合いで宿泊料金はやや値上がりしていました。
ちなみにチェックインの際順番を割り込んで先にチェックインしたオッサンと、人がチェックインしている時に言葉を挟んできて手続きが進まず「気分が悪いから早くして欲しいのに邪魔だなぁ。」と感じるオッサンがいまして・・・
「この2人とだけは同じ部屋になりたくないなぁ~。」って思っていたのですが・・・
今回は立山という2階の一番奥の部屋になったのですが、見事にその2人のオッサンに挟まれる形になりました。(涙)
ついてない!
今回は荷物を置くスペースもないくらい詰め詰めの大部屋だったので、窓の上のフックにリュックサックを掛けて、とりあえずひと眠り・・・と思ったら突然嗚咽が!
走らないように急いでトイレまで向かう。
そしてすぐに吐いたものを流せるように手洗い場の蛇口をひねったのですが・・・
水がチョロチョロとしか出ない!
またしてもピンチ!
苦しいのを堪えて吐きそうだったものを全部飲み込みました。
それからテラスに出て、しばらく深呼吸をして・・・
少し落ち着いたところで山荘内にてコーヒーを頂く。
これで何とか今回の高山病は治まりました。
これは鍋平の駐車場から新穂高のビジターセンターまでのルートを記したMAPです。
矢印の場所が僕の車を停めている駐車場です。
そして〇印がビジターセンターで、S印が登山口です。
これは白出沢出合の手前から穂高岳山荘までのルートを示しています。
×印がクマのいた場所です。
更に大きくしたMAPです。
これは鉱石沢からのルートが記されています。
白出沢の凄まじさはこのMAPからも想像がつきますよね?
さあ今後無事に残りのミッションをコンプリート出来るだろうか?
次回お楽しみに!
当時は30mくらい離れていた感じはあったのですが、もう少し近かったかも知れません。
僕が突っ込みを入れたのが問題なのか、カメラを構えたのが問題なのかは判りませんが、クマは慌てて逃げるようにガラガラガチャーン!と大きな落石を発生させながら去って行ったのです。
落石の大きさからもそこそこ大きなクマだったんじゃないかと思われます。
荷継沢では過去にもクマの目撃談があったので、それほど驚かなかったのですが、さすがに周りに誰もいないタイミングで出て来られたら、ちょっと焦りますよね。
一応ここからクマに対して背を向けて進むことになるので、いつ追いかけられて襲われてもいいように、臨戦態勢で歩くことにしました。
昨年に比べて少し遅い穂高の紅葉が始まったみたいです。
涸沢カールの方はどのくらい色付いているだろうか?
穂高岳山荘のテラスから見下ろす景色が今から楽しみである。
白出沢は基本的に左岸(涸沢岳寄り)を基準で登ることが鉄則である。
しかし涸沢岳側の断崖絶壁はジャンダルム側よりも落差があるので、落石があっても気付かないし、落差のある分重力加速度がつくので・・・
落石に当たったら即死です。
できるだけ沢の真ん中と左岸をジグザグに登っていく事がベストだと思っている。
右岸はジャンダルムやロバの耳を歩いている、登山者の踏み落とす石が原因の落石率が高いのと、浮き石が多くてガレ場そのものがまともに歩けないので、歩くのに2~3倍疲れます。
しばらくはお花畑で低木もあったりするので・・・
障害物が多いうちは接近に気付かない可能性もあるので、こまめに気配を探る。
カメラを構えただけで逃げるようなクマなので大丈夫だと思いたいけど、もしも僕のことをエサ場を荒らした張本人だと認識していたら、その場合のクマはしつこいので油断できない。
やはり3000m級の稜線は青空のようだ!
ここからはまだジャンダルムの姿は確認できない。
これなんですかね?
ベリー系のような実がなっています。
絶滅危惧種のミヤマイチゴではなさそうですが・・・
ようやくお花畑を抜けて見渡しの良いガレ場に出てきました。
ガレ場は徐々に傾斜がきつくなっていきます。
ルートはあの霧の向こうで左方向へドッグレッグします。
ここは進めば進むほど絶望感を感じる地獄の道です。
後ろから迫ってくる影がありました。
ストックを突いているので登山者です。
もうクマの心配はなさそうでよかったです。
しばらくゆっくり歩いてこの方と合流しました。
実はこの方も先ほどのクマが発生させた落石の音を聞いて、しばらく怖くて進めなかったそうです。
僕が落石を発生させた主の話をすると驚いていました。
白出沢を登るのは初めてだそうです。
僕はまた脚が攣りそうになっていたので、左岸寄りを歩くようにアドバイスして、先に行ってもらいました。
そしてまたガスが晴れて青空が・・・
先に道を譲った方の向こうから下山する人の影が見えます。
父親と中高生くらいの息子が2人の3人組。
もうすぐジャンダルムの見えるポイントです。
これまた不愛想な親子でして、散々ガチャガチャと浮き石を踏み崩して、時々バランスを崩しながら下って行きました。
挨拶を返してくれたのは最後に歩いていた男の子だけ。
実は白出沢だけでも30人近い下山者とすれ違ったのですが、挨拶を返さない人が6割以上。
返しても仏頂面で不機嫌そうな人も何人かいて、とても気分が悪い。
何よりもここのガレ場を落石でメチャクチャにしながら下る人が半数くらいいてビックリしました。
常にガチャガチャ音がして、時々ガラガラと岩の崩れる音がして、その度に気が気じゃないというか・・・
できるだけ落石があってもすぐに回避したり、避難できる場所を意識しながら登らなくてはならなくて、ものすごく無駄なストレスでした。
やはりろくな知識もなく、体力任せで来ている登山者が増えてるって噂はまんざらでもないのかな?
よくもまあ浮き石をガチャガチャと歩けるものだと・・・
僕が昨年下山した際は、ルート上の浮き石を修正して安定させながら下ったくらい、後続の安全を意識して歩いていたのに・・・ありえん。
これまた「落~っ!」って叫びながら石を投げてやりたくなる。(苦笑)
ゴルフとかでも前のグループが余りにもマナーが悪かったり、のんびりプレーをしていたら、わざと「ファーっ!」って叫んでやる!っていう人いますよね?
気持ち・・・メッチャ解ります。
まだ白出沢のガレ場は半分弱しか登っていませんが、既にこの傾斜です。
ここで荷継沢から1時間10分経過。
この調子なら残り1時間20分~30分程度で登れそうかな?
そうなると新穂高~穂高岳山荘間を6時間10分(休憩時間抜き)で登れた事になるので、昨年の7時間弱の記録を更新できる。
時々谷の方からガスを含んだ冷たい突風が吹き上げてくる。
半袖Tシャツの上にユニクロフリース1枚でも暑いくらいなのに、この突風が吹くと途端に凍えそうな寒さになる。
その急激な冷えから、肩こりと片頭痛が酷くなってきた。
これは再び高山病の予感。
明日はあそこに立つことができるのだろうか?
しかし気分が悪くなってきた。
建物は見えにくいけど建物の基礎は見えている。
昨年の登りではガスで一向に見えなかった山荘が、今回は良く見えるのでコンディションとしては最高のはず。
下りだと穂高岳山荘からここまで50分もかからなかった。
なので、少なくともあと1時間10分~1時間20分もあれば登れるかな?
って思っていたのですが、ここから完全に高山病が発症。
気分が悪くて歩けない・・・進めない。
誰かが浮き石をガチャガチャ踏んでいても、しんどくて素早く反応できない。
そんな時にすれ違った女性の下山者。
昨年の僕と同じくらいの早朝からスタートして、既に奥穂高岳山頂に登ってからの下山。
女の人でも単独でこのルートを日帰りピストンだなんて・・・かなりの手練れです。
しかも彼女はガレ場の歩きも丁寧で、この日すれ違った下山者の中でも特にリスペクトできる方でした。
この日下から登っているのは、僕とさっき先にお譲りした人しかいないものだと思っていたので、この方が今朝一番でここを登ったと知って、少しパワーを頂きました。
ところが谷から吹き上げる冷たい突風は徐々に頻度を増してくる。
その度に凍えて死を意識するようになる。
リュックに防寒用のウインドブレーカーを入れてはいるけど、ここで荷物を降ろしたら動けなくなるんじゃないかと思い始めている。
それにリュックの中からウインドブレーカーを探し出し、荷物を詰め直して着用する気力がもう湧き上がってこない。
突然発症した高山病。
高山病の恐ろしさは人の判断能力や気力すら奪ってしまうところにある。
1歩進むのにすら必死になる・・・そんな経験ってみなさんはございますか?
その気になれば一気に5~6歩は進めますが、その場合しばらく立ち止まって呼吸を整え集中力を回復させないと、次の1歩が億劫で前に進めなくなる。
とにかくゲップが絶え間なく出てくる症状で、時々嗚咽になったりで、徐々にそれが苦痛で歩くのが辛くなるのである。
なので歩を進める前に、向かうルートを見上げて確認し、それが正しいルートなのか浮き石の有無も確認してからでないと、もう集中力が残っていないので歩きながらの判断ができなくなっているのである。
「やっぱ白出沢はどこまでいっても白出沢やなぁ~。あかん!今回ばかりは脚も攣って余計に進まない。」
今日のゴールはもう見えているのに、このあと少しがどうにもならない。
いくら進んでも白出のコルは近付いた気がしない。
本当に近付いているのか?
すれ違う人も相変わらず3人に2人はガレ場の歩き方が解っていない人だったりするので、巻き込まれないかと恐怖しか感じない。
ちょうど今奥穂高岳の直下って事なんでしょう。
確実に倍ぐらいの時間がかかっています。
ここから穂高岳山荘まで本来なら45分少々で着くはずなのに・・・
更にここから40分登って・・・
やっとここまで登ってきた。
あり得ないくらいスピードが落ちている。
平衡感覚さえなかった昨年ほど症状は重い訳でもなく、ただ寒くて凍えそうなのと、ひたすら気分が悪いだけ。
もう穂高岳山荘の風力発電用のプロペラまでハッキリと見える位置まで来たのに、本当にもう動けなくなる。
下山すべきか?と悩むようになるが、冷静に考えて、谷の方はガスって余計に体温を奪われる危険性がある。
荷継沢まで下ったとして、そこで症状が軽くなっても・・・
回復させている間に体温を奪われてしまったら、身体のパフォーマンスが更に低下して滑落の危険性が増す。
それにそんな状況で先ほどのクマと再会したら、戦う気力も残っているかどうか・・・
絶体絶命のピンチだと思った。
何しろ動きたくても動けないのだから。
それでも下山者の姿を見る度に「ここで引き返したらダサいだろ!」って自分に言い聞かせながら1歩1歩ゆっくりだけど進む。
見立てでは15分で登れる距離だから倍と考えて30分。
「あと30分・・・遅くても1時間かかる事はないだろう。それなら暗くならないうちに登れるし・・・頑張って登るか。」
とうとう山荘直下まで登ってきた。
ここまで近くにいながら、ここから山荘まで16分もかかった。
15:15・・・やっと穂高岳山荘(標高2983m)到着!
道中10分休憩2回と、5分休憩1回(これは動けなくなっただけですが)で何とか無事にゴールです。
しかし昨年同様ゾンビ状態。
もう真っ直ぐ歩くこともできない。(笑)
登ったところで立っている人は、先ほど道を譲った登山者の人。
僕の事を心配して様子を見に何度も覗き込んでくれていたのです。
こんな親切な人がいてくれて、今日は気持ちの上では随分と救われました。
ところで荷継沢からこの穂高岳山荘まで実に4時間10分もかかってしまいました。
新穂高から穂高岳山荘までのトータルタイムで標準コースタイムよりも10分早いだけ。
最後の最後で時間の貯金をすべて食い潰してしまいました。
でも最後まで登れてよかった。
本当に途中で動けなくなった時「このまま誰かが気付いて救助隊を呼んでくれたとして、きっと助けが来る前に俺は凍え死ぬんじゃないか?」と半ば覚悟していました。
9月にM籏君が歩いた常念岳や蝶ヶ岳も一望できます。
涸沢~上高地方面は朝から快晴だったらしい。
やはり槍穂高連峰の壁を境界線にして天候が変わるっていうのは、実際にあり得る事なんですね。
涸沢の紅葉は白出沢に比べたら進んでいます。
太陽のありがたみ・・・本当に感謝です。
「あっ!でもジャンダルムの長袖TシャツだったらLサイズがあと1着残っています!」
そんな話だったのです。
ライムグリーンってカラーは不人気色とはいえ、果たして僕が行くまでに残っているだろうか?
そんな心配もあったのですが、無事に在庫・・・残っていました!
奥穂高岳ではなくジャンダルムのTシャツっていうのが、未だ登ってもいないだけに心に引っかかりはするものの・・・
左胸にライチョウのイラストと標高が書いています。
チェックインついでにTシャツも購入。
これで最初のミッションはクリア!
消費税が上がった兼ね合いで宿泊料金はやや値上がりしていました。
ちなみにチェックインの際順番を割り込んで先にチェックインしたオッサンと、人がチェックインしている時に言葉を挟んできて手続きが進まず「気分が悪いから早くして欲しいのに邪魔だなぁ。」と感じるオッサンがいまして・・・
「この2人とだけは同じ部屋になりたくないなぁ~。」って思っていたのですが・・・
今回は立山という2階の一番奥の部屋になったのですが、見事にその2人のオッサンに挟まれる形になりました。(涙)
ついてない!
今回は荷物を置くスペースもないくらい詰め詰めの大部屋だったので、窓の上のフックにリュックサックを掛けて、とりあえずひと眠り・・・と思ったら突然嗚咽が!
走らないように急いでトイレまで向かう。
そしてすぐに吐いたものを流せるように手洗い場の蛇口をひねったのですが・・・
水がチョロチョロとしか出ない!
またしてもピンチ!
苦しいのを堪えて吐きそうだったものを全部飲み込みました。
それからテラスに出て、しばらく深呼吸をして・・・
少し落ち着いたところで山荘内にてコーヒーを頂く。
これで何とか今回の高山病は治まりました。
矢印の場所が僕の車を停めている駐車場です。
そして〇印がビジターセンターで、S印が登山口です。
×印がクマのいた場所です。
これは鉱石沢からのルートが記されています。
白出沢の凄まじさはこのMAPからも想像がつきますよね?
さあ今後無事に残りのミッションをコンプリート出来るだろうか?
次回お楽しみに!
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