これも現在の当店においては取り扱いのないブランドです。
しかしなぜこうも立て続けに、自分の店に無いブランドを宣伝するような真似をするのか。
これはもう僕のこだわりですよ。
ビアンキにしてもデローザにしても、僕にとってロードレーサーに乗って間もない頃に憧れ、いつかその自転車にまたがってみたいという夢があったからです。
とにかくロードバイクを熱く語るに関して、このデローザだけは外すわけにはいきません!
ほとばしる情熱!銘工の創り上げたコンマ数ミリの妥協すらない造形美!イタリアンバイクの頂点に輝く、ロードバイク界の象徴ともいえるブランド・・・
それがデローザです。
日本全国でようやく海外ブランドの自転車が広く流通しだした当初、デローザやコルナゴ、ビアンキやファウストコッピの醸し出していた崇高なオーラは半端なかった。
とても一般人が手を出して乗りこなすには、頭が高いくらいの格式というか・・・
最近ではやたらビアンキやデローザに乗った人を見かけますが・・・
なんというか・・・
「最近はお金さえあったら誰でもフェラーリに乗れる(簡単に乗りこなせる)時代!」
まさに自転車もそれなりのお金さえあれば、簡単に高級ブランドが買える時代なんですよね。
自転車屋としてはありがたい話なのかも知れません。
でも苦学生の頃から、レースに勝つための一台を作るのにさえ、必死だった頃の自分を思い返すと、最近の風潮はいささか頂けない!
「なんであんな奴がデローザやねん!デローザをなめんな!ロードバイクをなめんな!」
心の奥では悔しくて仕方が無いんです。
お金があるからって誰にでも乗って欲しくないんです。
自分が貧乏して乗れない悔しさよりも、デローザのブランドカラーを汚されたような気がしてなりません!
またデローザは本来、乗り手を選ぶ自転車でなければ、それはデローザじゃないっていうくらいの硬派なブランドで、トレードマークのハートからは想像出来ないくらいのピュアレーシングバイクを作り出してきたブランドなんです。
それがスチールとチタンさえ作っていればいいものを、アルミ~カーボンと時代の流れに流されて、気がつけば台湾でOEMフレームを作る始末。
R838なんてモデルができた時は、デローザというブランドにまで裏切られた気分になりました。
世界最高のフレームビルダーといっても過言ではない、ウーゴ・デ・ローザとその家族によって作られてきた伝統は、時代の流れに左右されるような軽いものだったのか?
一人のロードバイクファンとして、僕はその事が心から許せなかった。
自転車レース史上最強といわれた選手、エディ・メルクスと築きあげた伝説はなんだったのか?
(ちなみにメルクスは選手引退後、ウーゴの師事のもとフレームビルダーの修行をし、自らのブランドを立ち上げます。)
1993年メカイル・バラン~1994年ゲビス・バランという、当時イタリア最強のチームにフレームを供給した際は、エフゲニー・ベルツィンやビャルヌ・リース、ピョートル・ウグルモフ、モレノ・アルジェンティーンといったスター選手の活躍を支えてきた。
その当時のネオプリマートやチタニオは、そこらのホビーレーサーなんかに気安くうんちくたれてもらいたくないくらいの、孤高のレーシングスピリッツをまとったフレームなのだ。
それだけにデローザには、そのスピリッツの持つ美学を理解できるライダーや、乗りこなすセンス、レースに勝つセンスに溢れるライダーにこそ乗ってもらいたいのです。
ちなみに余談ですが、日本サイクリング協会の会長理事にして、自民党総裁の谷垣氏もデローザをこよなく愛する一人だそうです。
ところで僕もこれまで数多くの自転車にまたがってきましたが、どんなに速く走れる自転車よりも、一番欲しい自転車はデローザ・チタニオです。
それも重量は重くても当時のままでいい、今の最新型のチタニオではなくて、1994年のジロ・デ・イタリア優勝モデルが最高に欲しい!
僕が事業に成功したと実感できるようになって、自転車をたくさんコレクションできるような身分になったなら、最後の仕上げはデローザの94年チタニオです。
僕にとっては、フェラーリF40を所有したい気持ちと同じくらい欲しい自転車なんです。
どちらも最高の作品だからです。
F40はエンツォ・フェラーリの遺作にして、彼の情熱と思想が全て詰まった最強にして最もフェラーリらしいフェラーリです。
誰にも扱いきれない暴れ馬といえばF40と288GTOっていわれるくらいです。
当時のデローザ・チタニオはウーゴがロシアの金狼エフゲニー・ベルツィンに大器の片鱗を見出し、まさに第二のエディ・メルクス誕生を夢見て、彼をスターにする為に自ら腕を振るったとされる最高の作品なんです。
1994年のジロ・デ・イタリアでは、3連覇を狙うミゲール・インデュラインが、下馬評では圧倒的に有利でした。
しかしそこに彗星の如く飛び出したルーキーが2人いました。
それがエフゲニー・ベルツィンとマルコ・パンターニだったのです。
インデュラインの身長188cm、体重80kgに対して・・・
ベルツィンは身長173cm、体重63kgだが、パーシュート(追い抜き競技)出身のTTスペシャリスト
パンターニは身長170cm、体重58kgで、生粋のヒルクライマー
欧州のスポーツ選手と考えたら、当時では明らかに小柄な2人。
その2人が絶対的王者を打ち破った瞬間、新しい時代が幕を開けたのです。
事実94~95年付近から、自転車フレームやウェア、ヘルメットなどの技術も飛躍的に進化していったといえるでしょう。
マルコ・パンターニと、その師匠的存在にあたるクラウディオ・キアプッチは、当時日本でも非常に人気の高い選手だったので、カレラ・ニバクロムとアルテックは、デザインも綺麗で値段も比較的安く、当時は珍しかったプロスペックということもありよく売れてました。
またカレラ・タッソーニチームのジャージはデニムのデザインがお洒落で、チームジャージ人気にも拍車をかけました。
またGiroのヘルメットが人気になったのも、この当時のフラッグシップだったバントゥからです。
その反面、ベルツィンが乗っていたチタニオはフレームだけでも価格が45万円(現在でいうところの60万円以上の価値)もし、またデローザといえばカンパニョーロのパーツじゃないと似合わないってイメージが定着している為か、当時で既に完成車価格90万円以上という高値の華で、欲しくてもなかなか手が出るものではなかった。
しかしゲビス・バランチームのジャージはカレラチームに負けないくらいの人気があり、どちらのジャージも20年近くなった現在において、未だ見劣りしないデザインのジャージです。
シューズもSIDIとガエルネの人気が高かったです。
そういう自転車界にも、トレンドというものが誕生した時代の逸品の一つが、チタニオでありネオプリマートなのです。
ネオプリマートはスチールフレームとしては、やはり当時から高価な部類に入っていたので、チタニオやネオプリに手が届かないデローザファンは、SLXやジロデイタリア(コロンバスEL)という、98000~150000円くらいで手に入るフレームに、カンパニョーロ・ミラージュで組み上げて総額20~25万円って手段を選んでいましたね(笑)
それでも当時は腐っても鯛じゃないけど、やはりデローザはどこまでいってもデローザだったので、その走りには一点の曇りもなかったのです。
とにかくデローザの卓越したバネの強い乗り味を支えたのが、コロンバスのニバクロムチューブ。
ニバクロムとはニッケル&バナジウム&クロームの合金の意味です。
近年コロンバスのニバクロムチューブを採用するフレームをほとんどお見かけしませんが、ナチュラルな加速感とバネ感を作り出すのには最高の素材だと思います。
特に僕が愛して止まないのがコロンバス・ジーニアスというチューブ。
10年以上前に廃盤になったパイプですが、これがニバクロム史上最高の逸品だったと言っても決して過言ではないと、僕は言い切れます。
ちなみに加工の行程や強度の問題で、ウーゴ・デ・ローザ自身はコロンバスチューブではSLXの方がいいって言っていたそうですが・・・。
1994年モデルから2000年前後のネオプリマートまではジーニアスチューブ製でした。
またネオプリマートは年式によって細かく作りが変更されています。
ラグドフレーム(ラグ溶接)である事が基本ですが、フォークだけユニクラウン(ラグレスでなで肩)だったり、カーボンの時もあったり・・・
だからコレクターの間では、何年式のどのカラーのネオプリマートが価値があるだとか、精度が高いだとか、そういった感じで語られるほど。
これはエディ・メルクスが使用した当時のモルテニチームのデローザ。
これはモルテニカラーレプリカのネオプリマート・・・人気色です。
僕の好みは上記の通り、断然94~98年モデルのネオプリマートです!
ジーニアスチューブとユニクラウンフォークの組み合わせが、最もやんちゃでレーシーなデローザらしい乗り味に仕上がっているからです。
最近のラグドフォークのネオプリもかっこいいけど、そこは絶対譲れません(笑)
チェーンステーをひし形に潰し、独特の反応性を作った味付け・・・
とにかくスチールフレームなのに、上りもよく進むフレームでした!
まあここまで話せば僕がいかに今のカーボンフレームが好きになれないかがご理解いただけるかと思います。
正直デローザがカーボンフレームなんて作る必要が無いのです!(笑)
もうそこまで言わせて!って感じです。
キングもアイドルも悪くありません!
最近のスーパーキング(台湾製キング)も、デローザと考えればコストパフォーマンスが高い!
アルミからカーボンに変更した当時のメラクもいいフレームでした。
そりゃ旅行会社に勤務していた当時の僕は、ロードレースに復帰するならデローザのキングか、インターマックスのX-LIGHTか、エヴァディオのヴィーナスで新しい自転車を組んでレースに臨みたい!とか考えていましたよ・・・
でもジタン・マッハ3001への愛情もあったので、なかなか新しい自転車を作る事ができず、気がついたらキャバクラでオネエちゃんと戯れて遊ぶ日々に大金を費やしてました(笑)
まあデローザのカーボンフレームは十分過ぎるほど性能はいいけど、金額に対しての乗り味とか性能に、そこまで購買意欲が湧かないというか・・・
乗ってそこまで楽しくないんですよね。
「あ~っ!いいわ~!さすがデローザやなぁ~!」とは思うんだけど・・・
でも本来のデローザにあるべき、乗った時の高揚感は湧いてこないんですよね。
いずれ当店もデローザを取り扱いできるようなショップに成長したいと思いますが、是非その時には僕が熱く語れる、本来のデローザであってもらいたいと心から願います。
最新のセッサンタシリーズは実際に素晴らしい作品です。
しかし廉価モデルもOEMに頼らず、メイドインイタリーの匠の心を、広く伝えるような作品作りに励んでもらいたいものです。
どうですかこのTTバイク!
1997年・・・牙をもがれ、低迷していたエフゲニー・ベルツィンの復活をかけて、ウーゴ自らが本気で作ったチタン製TTバイクです。
アワーレコードにもチャレンジさせて、ウーゴも同行したといわれます。
そう・・・ウーゴ・デ・ローザが求める自転車は、チャンピオンを生み出す究極のレーシングバイク!
ひたむきに究極の自転車を目指してきたブランドなのです!!
今後のデローザに期待しています!