毎日放送で放送されている『明石家電視台』の新企画として『人生の選択』というコーナーを設ける事になったとかで、僕の『過去6回クマと遭遇した経験』を題材として採用させて下さい!とのお話を9月頃に頂きまして・・・。
自転車とは直接関わりは無いのですが・・・
初めて僕が生でクマと遭遇したのは1996~1998年の8~9月頃だったと記憶しています。
逆瀬川から六甲山頂を目指してロードバイクでチームトレーニングをしていた時。
西宮カントリー倶楽部の1番ホールのフェアウェイを悠々と歩いているクマがいるのを横目で見て、思わず3度見くらいしました。
ゴルフ客のおじさん方は怖がって全員カートにしがみつくように乗り、クマの動向を確認していました。
僕はチームの仲間と4~5人で走っていたのですが、三田から猪名川町を抜けて、北摂の山々を走った後、川西から戻って来て最後に東六甲から一軒茶屋まで上り、西六甲ドライブウェイ~有馬街道経由で兵庫区の自宅まで帰るコースを走行中でした。
当時は神戸近郊でクマに出会うなんて事は想像すらできていなかったので、目を疑いました。
実際に一緒に見た仲間たちとも「あれホンマにクマなん?何かの見間違いやんな?」「でもそうやとしたら、あれは何と説明する?ゴルファーのおっさん達はマジで怯えている感じやで?」「確かに・・・。」「俺ら夢でも見てんのかなぁ~」「いや、それは無いやろうけど冷静に考えよう?今俺らとは、金網一枚隔てた向こうにあんなでかいクマがいるんやで?あいつはどこから場内に入ったと思う?」「可能性としたらこの先の川が怪しい!」「そうなると自転車で走り去る俺らにもしも奴の狩猟本能が刺激された場合、早く逃げないとこの距離は十分な射程距離やぞ!」「できるだけ視界に入らないように急げ!」
そう言い合って必死で逃げた記憶。
甲寿橋交差点から苦楽園方面に逃げよう!って意見もあったけど、それだとクマとの距離が稼げないし、万が一住宅街まで追って来られたら住民の方々に迷惑が掛かって申し訳ない!
こういう時は敢えて激坂を上って逃げた方が、クマもバテて諦めるに違いない!
それで予定通り東六甲を必死で上った。
ちゃんと区間タイムを計測していなかったけど、甲寿橋から一軒茶屋までのタイムは余裕で30分を切っていたと思う。
盤滝トンネルと東六甲の分岐点まで時速40kmで必死に駆け上り、何度も後ろを振り向いて、モンスターに追われている絶体絶命の気持ちで逃げたのだから。
家に帰って同じマンションに住んでいた祖母にその話を報告しに行ったら、「え~っ、そんな~!宝塚にクマが出たなんて聞いた事もないよ~。」と言われたが、ちょうどそのタイミングでテレビのニュースでその話題が報道されて、「ほら!これよ!これ!」ってなった。
次は2000年8月末。
乗鞍のヒルクライムに出場する為に長野県松本市の乗鞍高原に来ていた。
前夜の土曜日だったが、宿泊していた美鈴荘から湯けむり館まで、外湯巡りしよう!って、後輩(塾の元教え子)と二人でメインの車道ではなく、街灯もない真っ暗けの林道を月明りを頼りに歩いて向かっている時に出会ったのが2度目。
何か暗闇の向こうから気配を感じるなぁ~とは思いつつ歩いていたら、「う~っ!」って重低音の唸り声。
思わず後輩と「この唸り声って犬だとしたら相当でかい番犬やと思うねんけど・・・どこに犬小屋がある?そもそも民家の灯かりすらないねんけど?お前見えるか?」「僕より先生の方が夜間視力強いでしょ?」「そうやねんけど見当たらんのよ。それよりこの獣臭ヤバくないか?」
そう言いながら林道を迷わず歩いていたら、ただでさえ暗闇だったのに、ひと際暗くなって月明りすら感じなくなった。
本能的にヤバいと思ったので後輩の腕をつかんで「ストップ!そのまま前を向いたまま!口を開くな!鼻で静かに呼吸しろ!」と引き留める。
ゆっくり目の前の風景を見上げてみた。空には星が光っていて、森の木々のシルエットはハッキリ見えている。
なぜそれなのに暗く感じたのか?
それ以前に鼻を突くような獣臭が至近距離だと言っている。
さっきよりも怯えたような声だが低く唸り声が目の前からしてきた。
木々のシルエットからゆっくり視線を下げてみた。
明らかに耳の形といい、後ろ足で立ち上がっているそのシルエットはクマだった。
恐らくあと一歩踏み込んでいたら、我々は一撃のもとに頭を攻撃されて致命傷を受けていただろう。
「おい、既に目が合っているからそのまま目を逸らさず、慌てないようにゆっくり後ずさりするぞ。俺から離れるなよ。」って、後輩の腕を引っ張りながら後退。
動物は人間がビビったり焦ったりしていたらすぐにそれを感知する。
クマに対しては「寛いでいるところを邪魔して悪かったな!」って、むしろ謙虚な気持ちで冷静に呼吸を整えながら後退することで恐怖感は緩和できました。
幸いクマも風下から迷う事無く接近してきた我々に戸惑っていたみたいでジッとしたまま動かなかった。ざっと50m以上は距離を取れただろうか?
ちょうど右後ろに建物があってその向こうをメインの車道が走っているのが確認できた。
この距離ならクマに追いつかれるよりも先に車道へ逃げ切る事ができる!
そう確信したところで「おい、全力で走るから遅れるなよ!」そう言って車道まで猛ダッシュ!
宿に帰ってみんなに話をしたけど誰も立ち上がって190~200センチもあるようなツキノワグマなんている訳ないやろ!って信じてくれなかった。
一瞬ヒグマか?って思うくらいでかかったのにだ!
後輩さえも暗くてハッキリ大きさが判らなかったし、本当にクマがいたのか?そんな経験自体が初めてだからまだ信じられないという心境だと。
ただ唸り声から推測してかなり大きい何かがいた事と、獣臭かったことは間違いないと・・・
いやいや、九死に一生を得ておきながらそんなものなのかよ?(笑)
一般的にクマの大きさは体長で表す事が多い。
体長150センチはかなり大きい方のツキノワグマだが、体長=身長と解釈している人の多い事。
体長とは四つん這いになった時の鼻先からお尻までの長さである。
二本足で立ち上がった時は概ねその体長に後ろ足の長さをプラスしないとならないって事を誰も解っていないのだ。
ツキノワグマの中には時々体長160センチを超える怪物がいる。
あの時僕が見上げて確認したシルエットはかなりの大きさだった。
それ以降しばらくはそんな経験から離れていましたが、2016年以降本格的に北アルプスを中心に登山活動をするようになって、またクマと遭遇する機会が増えてしまった。
乗鞍の時はセオリー通りの逃げ方を実践して成功したけど、登山で出会うようになってからはセオリー通りの事は一切していない。
専門家に言わせたら僕の行為はクレイジーだと言われるかも知れない。
まずクマ鈴は持っていても使わない!鳴らさない!
できるだけ夜間もヘッドランプを多用しない。
ラジオすら鳴らさない。
もしも風下にクマがいたら10km離れていても人の臭いを嗅ぎ分けてしまう。
ヘッドランプで位置もバレバレ!
人を襲い慣れている個体だったらどうする?
だから僕は使わない。
いざという時はやられる前にやるくらいの気持ちではある。
その覚悟で単独登山をしている。
そんな僕がどうやって何度もクマと遭遇して、これまで無事でいられたのか?
それがクイズの問題になっているんじゃないかな?
2022年9月末。
スタッフの美里と一緒に奥穂高岳に登ったその帰り、岳沢カールから上高地までの林道でもクマに遭遇したのだが、疲れ切っていた美里は僕のとっさの行動にビックリしてパニックになり、クマに驚くどころではなく、逃げ去るクマにすら気付いていなかった。
その話を編集で変なオチをつけられている可能性もあるけれど、楽しみにしていたので是非皆さんにも観て頂けたらと思います!
見逃した場合もティーバーで1週間は観る事ができるそうなのでご覧になって下さい!
余談ですが番組ディレクターの方が長田区出身とかで、長田区のどこですか?って聞いたら僕の赤ん坊の頃暮らしていた住所と同じ長田天神町で驚きました。
何かしら縁というものを感じました。
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