結局クリス・フルームが逃げ切っての総合優勝となりましたね。
ツール・ド・フランスのルールを御存じない方には総合優勝とかステージ優勝とかって何?みたいなところがあるかも知れません。
まあ3週間以上かけて約4000km近い距離を走るレースですから・・・
当然毎日200km前後の距離を走る訳ですよ。
そのコースのスタートやゴール、或いはコースの通過点に採用される町や村にとってみたら、お祭り騒ぎになるくらいの大きなイベントなんです。(色々とお金もかかるけど・・・)
当然フランス人選手であれば、自分の生まれ育った村がゴールとか、通過ポイントだったりするだけで、命を懸けてでも勝ちに行きたいと思えるものだったり・・・
まずもって参加できるチームは世界の頂点に君臨するプロチームで、しかもそのチーム内でも特に仕上がりの良い9名しか参加できない最高峰のレースだけに、1日1日のレースを戦うだけでもハードなのに、そこで勝つということはヨーロッパの自転車レース史にその名を刻むという事なので、選手たちにとっては非常に名誉なことなのであります。
そしてそんな毎日のレースで先頭より大きな遅れをとらず、毎日を堅実にそして速く走った選手だけが(全日程の合計タイムが一番若い選手)個人総合優勝を獲得できる。
その他レース活性化の一環として山岳賞やスプリント賞といったカテゴリーも存在しており、レース中の見せ場を盛り上げる役割を担っています。
また昨今この日本においては、自転車レースを個人競技と勘違いしておられる方が時折見受けられますが、ツールをはじめとする自転車のプロロードレースにおいてはチームプレーが基本。
例えば1チーム9人制で走り、個人総合狙いのチームはエース1人に対してアシスト8人、またはエースとサブエースに対してアシスト7人体制で望み、平地の得意な選手や山岳の得意な選手など、選手によって違う脚質を上手く織り交ぜて、最悪個人総合優勝を狙えなくても、ステージ優勝の数を稼いだり、ポイント賞ジャージを狙いにいったり、チーム総合タイムで上位を目指したり・・・
チームによっても選手によっても様々な思惑が渦巻いています。
だからこそロードレースは、様々な奇跡やドラマが生まれるスポーツなんですよね!
特にヨーロッパではエースよりも、エースを勝たせる為に献身的に風除けになったり、パンクしたエースの為に自分の自転車を犠牲にしたり、落車したエースを集団に戻す為に必死にペースを上げて引っ張ったり、補給物資を運んだりするアシスト選手の方が人気だったりします。
特に献身的なアシストほど尊敬されます。
またそんなタイミングでアタックしても逃げ切れるはずが無い!とか、とにかく無謀とも思えるような大逃げを決める選手もヨーロッパでは人気です。
例えその逃げが成功しても失敗しても、その勇気ある行動がファンの心にも火をつけるのです。
何しろ情熱的で、レースを果敢に戦う選手とその為に尽くす選手こそが評価される・・・それが本場ヨーロッパのロードレースです。
しかし・・・
正直言うと僕は今年のツール・ド・フランスにはガッカリしています。
勿論個人総合で優勝したフルームが強かったのは間違いないですし、素晴らしいのですが・・・
その他のファボリート(優勝候補)たちが不甲斐なさ過ぎて、盛り上がらなかったのは否めないな~というのが、サイクルレースファンの1人として感じた僕の感想です。
ラルプデュエズのレースでは、やはり読みどおり1回目のラルプデュエズでアタックを決めた勇者たちだけが2回目のラルプデュエズの上りで優勝争いをする展開となり、マイヨジョーヌを守るだけのフルームはアタックをする必要さえなく・・・
だからと言ってそのグループで一緒に走っていたコンタドールにガッカリしたのは言うまでもない。
1回目の上りが終わった直後の下りで、チームメイトと共にアタック・・・
正直「そのタイミングでないとアタックできないなんて、調子が悪いと言ってるようなもんやん!」と呆れてしまう。
案の定2回目の上りに入るまでに集団に吸収され、さらにはフルームのカウンターアタックに遅れを喫した始末。
結果論ではありますが、フルームはカウンターアタックを決めた直後にハンガーノック。
きっと連日の走りで疲労が蓄積していたのでしょう。
つまり、コンタドールが1回目のラルプデュエズでアタックを決めていれば、反応せざるを得ないフルームは1回目の上りでハンガーノックに陥り、例え調子の悪いコンタドールでも、少なくとも2~3分のタイムは巻き返せたはず!
そうすれば翌日のグランドン峠やマドレーヌ峠で無理せず集団で走っていても、第20ステージの最終の山頂ゴールで総合タイムを逆転する可能性は十分にあったはず!
「総合優勝経験者のくせにレースの駆け引きも知らんのか!」とつい腐してしまいたい心境に・・・
下りなんていうのは、ある程度のライディングテクニックがある選手であれば、ラインを誤ったら確実に事故って死ぬくらい全力で下ったとしても、リラックスして下るのと比べて精々1~2分しかタイムが縮まらない・・・そんなもんです。
だったらたった2人でライン取りにヒヤヒヤしながら、そのストレスと戦いつつ走るよりも、集団やグループで走って、下りの速い選手のライン取りを見ながら走る方が、数倍楽で速い事もあります。
例えば最初の上りでアタックを決めて3分くらい開きを作って、下りは脚を休めつつ走って2分追いつかれたとしても、追う側は既に余計なエネルギーを使っているので、2回目の上りでは再び差を広げる事が可能なんです。
単純に理屈を話すとそんな感じで、アタックには必ず必勝のタイミングというものがあるのです。
後は勝利を掴むまでペースを崩さない精神力さえあれば何とかなるのです。
2006年以降ツールを観ていて思うことは、奇跡の逆転劇あったと思ったらドーピングスキャンダル。
はたまたヌル~イ内容のつまらないレース展開である率が高いな~と感じてなりません。
ランス・アームストロングの7連覇時代はともかくとして・・・
僕は80年代後期から90年代のロードレースを観て育ち、ロードレースに目覚めた人間なので、当時の記録も凄いが、記憶に残る名選手ばかりの黄金期が懐かしくて仕方ない。
今となってはその時代にもドーピング等の不正行為は頻繁にあったものだと思われますが、少なくとも一人一人が確実にレースをしていました。
出る杭を打たれるのが怖くて前に出ない選手なんていませんでした。
常に積極果敢!
ハラハラドキドキするようなレースがたくさんありました。
優勝者のフルームは素晴らしい選手だと思いますが、僕はその走りにオーラを感じません。
フルームだと知らずに見たらただの速いホビーレーサーだと感じるかも知れません。
大変失礼な言い方ではありますが、全盛期のコンタドールにはオーラがありました。
それでも90年代の選手に比べたら・・・
恐らくフルームはライディングフォームが独特過ぎて、プロっぽく見えないからだとは思いますが、最近は本当にオーラを持った選手が少ないですね。
そんな中でも今回のツールでは、山岳賞を獲得したナイロ・クインターナはとても輝いていました。
コロンビア人選手は昔から独特なフォームの選手が多く、それは決して美しいフォームではありませんが、メリハリのある走りにプロらしさを感じました。
ちなみに最近のツールでは2009年の最終日、シャンゼリゼ周回コースのラスト1周まで逃げた別府史之の走りには感動した・・・というより、僕は興奮して武者震いが止まらなかったですね。
僕も勝負師だったので、過去に何度もアタックして失敗した経験がありますが、鈴鹿ロードのラスト周回に入った瞬間にアタックを決めて一人で逃げた時は、一人なので苦しい逃げでしたけど最高に興奮しましたし、これがレースを走るって事なんや!って満足感がありました。
結局最終コーナーで集団に追いつかれ、スプリントを戦う脚も残ってなかったので、ハンドルを叩きながら「チクショ~!」って、集団の真ん中くらいでゴールして悔し泣きしたのを覚えています。
それでも満足できるレースでしたね。
やはりレースを走るからには勝ちに行くのが当たり前!
ゴールまで集団内で走り、一度も先頭を引かずに脚を温存して、最後のスプリントで初めて前に行くなんて姑息な走り方をする選手も多いですが、レーサーとして僕はそんなくだらないレースはしたくなかった。
例え一緒に逃げる選手がいなくても、例え向かい風が強くても、今がチャンスだと思ったその瞬間が勝負を仕掛ける瞬間で、後は気力!根性!
僕は残念ながらそのチャンスを活かし切れなかった例ではございますが、レースの醍醐味はたくさん味わってきました。
それだけに今後のプロロードレースに対して思うことは、これからの若手にリスペクトされる走りをして欲しい!
多くの人に夢や希望、勇気を与えて欲しい!
もっと選手それぞれが個性を発揮して欲しい!
何となくそう思えた2013年100回記念大会でした。
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